睡眠と肥満の関係

実感として、睡眠をきちんと取ると、夜間に痩せていくような感覚があります。気になったので、少し文献やWebで調べてみました。

まず、平均睡眠時間とBMIの関係においては、睡眠時間が7~8時間の場合が最も肥満が少なく、それより短くても長くても肥満が増えるという(論文1)。

早稲田大学の内田直名誉教授への取材記事(記事1)によれば、

・3日間の3.5時間睡眠+1日のリカバリー睡眠(7時間)
・3日間の7時間睡眠+1日のリカバリー睡眠(7時間)

という2つの生活パターンで比較したとき、3.5時間睡眠の翌日は、日中(朝から夕方)の深部体温が低くなった。つまり代謝が低い状態となった。また、3.5時間睡眠の翌日は空腹感が強い傾向にあり、特に寝る前が顕著となった。3.5時間睡眠後は、PYYという食欲抑制ホルモンの分泌量が減ったという。

まとめると、

・短時間睡眠が続くと、活動時間が増えても代謝が落ちるため、総エネルギー消費は通常睡眠と変わらない。
・食欲抑制ホルモンの分泌が減るなど食欲が増すため、睡眠不足は体重を増やす方向に働く。

一方、筑波大学のグループによると、睡眠中のエネルギー消費量、炭水化物酸化量は、「入眠直後に急激に減少」し、「目覚めの直前に増加」するという(発表1)。最も飢餓状態にある明け方に代謝が活発になるという現象はこの2017年の実験における新発見であったようだ。

しかも、脂質酸化量は睡眠の前半で増加し、後半になるにつれて減少しているという。この結果も驚きで、通常の代謝理論とは反対だ。下記の発表資料にも「概念的には、優先順位の高い基質は炭水化物であるが、体内炭水化物が不足すると脂質が基質として利用される」と書いてあるが、実験の結果は逆さまだ。

さて、この「筑波大学 国際統合睡眠医科学研究機構」というところはいろいろな面白い研究結果をリリースしている。学術成果をきちんとWebで広報して世の中にフィードバックしているのは素晴らしいことだ。

別の記事(発表2)によれば、マウスの実験によって、レム睡眠が不足状態にあるとき、ショ糖を多く含む食べ物を摂取したくなる欲求が脳(前頭前皮質)によって直接的に制御されている可能性があるとしている。レム睡眠は加齢とともに減少することが知られており、レム睡眠量の減少は肥満につながる可能性があるとする。

レム睡眠は睡眠時間の後半に多く見られる。他の実験と併せて考えても、睡眠不足によって太りやすくなるというエビデンスには、複数のものがあるようだ。

(参考文献)

論文1:Short Sleep Duration Is Associated with Reduced Leptin, Elevated Ghrelin, and Increased Body Mass Index

記事1:短時間睡眠はなぜ「太りやすい」のか?:メタボ・肥満解消に効果!「代謝アップ」大作戦:日経Gooday(グッデイ)

発表1:プレスリリース 2017.6.21|国立大学法人 筑波大学 国際統合睡眠医科学研究機構(WPI-IIIS) 睡眠と代謝の密接な関係

発表2:プレスリリース2017.1.10|国立大学法人 筑波大学 国際統合睡眠医科学研究機構(WPI-IIIS)寝不足はダイエットの敵

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