次のオフ会(TOKYO #3)が迫ってまいりまして、そろそろプレゼン内容を作っていかなければなりません。それでちょっと気になったことがありまして。
オフ会では来年から「ホテルメンバーシップ研究会」という帯の活動をしていこうと思っているんですが、その構想をブログで発表するときに「シェアリングエコノミー」という言葉を使いました。自分がメインフィールドとしているリゾート会員権は「タイムシェア」が基本の概念ですし、その延長線上でシェアリングエコノミーという言葉を自然に、ごく何気なく使ってしまったのですが、ここに深い闇があることに気づきました。
ちょっと長くなるかもしれませんが、軽く書いてみたいと思います。
まず、政府はこの概念を推し進めようと、内閣官房内に「シェアリングエコノミー促進室」というものを置いています。そこでいろいろな議論が重ねられていますが、骨格となっているのは、以下の業界団体の活動です。
一般社団法人シェアリングエコノミー協会 | Sharing Economy Association, Japan
事情はよく知りませんが、この協会の定義が政府としての定義でもあり、双方が持ちつ持たれつ活動を行っているように見えます。
その結果、政府としてのシェアリングエコノミーの定義は、以下のようになっています。これは総務省の情報通信白書からの引用です。
内閣官房シェアリングエコノミー促進室においては、「個人等が保有する活用可能な資産等(スキルや時間等の無形のものを含む。)を、インターネット上のマッチングプラットフォームを介して他の個人等も利用可能とする経済活性化活動」と説明している。
おかしいとは思いませんか? 個人と個人の間で、プラットフォーマーが提供するサービスを使って、アセットをマッチングするものだ、と定義付けているのです。
その結果、上記協会の守備範囲は、以下のようになっています。
- 空間
- 移動
- モノ
- スキル
- お金
これらの分野で、C2C(個人間)で取引されるものがシェアリングエコノミーであるとされています。
例えば、自分が関心のある「空間のシェア」においては、事業者が提供するホテルやシェアオフィスなどはシェアリングエコノミーではなく、また、カーシェアや自転車シェアも同様に除外されています。
その結果、以下のようなおかしなことになっています。
空間:いわゆる民泊が中心となりますが、この分野はエアビーが既に覇権を握っています。
移動:同じく、UberやDiDiなどのグローバルなユニコーン企業に対抗するのは困難です。
モノ:事業者提供のものは除外されているので、ここは単なる販売(オークションやフリマ)です。シェアとは違うのではないでしょうか。
お金:クラウドファンディングのことですが、ここは規制が厳しいのでプラットフォーマーは限られるはずです。それに、「金融」ってズバリ「お金のシェア」じゃないですか。
スキル:従って、ここが主戦場となるしかなく、上記のマップでもその通りになっています。
しかし、スキルのシェアとは何でしょうか? 一体、何を「シェア」するのでしょうか。
おかしいとは思いませんか。ここを推進したいために、他の「決着している」サービスをくっつけて取り繕うことで、ふわっとした「共有社会」というものを描き出したいのでしょうか。政府の思惑は何なのでしょう。もう少し考えてみます。
自分には、スキルのシェアと呼ばれているものは、要するに「雇用」の問題のように見えます。実際にランサーズなどのクラウドソーシングを使っている人に話を聞くと、そのサービスレベルと費用のギャップに驚きます。
つまり、こうしたプラットフォーマーによって起こっていることは、従来よりも「低価格で何かを実現することができる」ということであって、既存の企業にとっては収益の悪化につながり、ひいては従業員の低賃金化や解雇につながります。
なぜなら、収入のある個人が副業としてプロとしてのスキルを提供するのなら、それは企業活動における水準では不可能な価格で「買い叩かれ」たり「叩き売り」したりすることになるからです。そのように、水を低きに流して利用者への魅力を増大させるのが、プラットフォーマーの仕事です。
ではそのプラットフォーマーについて見てみましょうか。シェアリングサービスとは、イコール、プラットフォームビジネスですから、必然的にそのサービスの提供者と利用者の双方の規模が大きければ大きいほど、お互いのメリットが増すという性質があります。つまり、プラットフォーマーは寡占化せざるを得ません。
これらを併せて考えると、政府が推し進めようとしているシェアリングエコノミーとは、プラットフォーマーとしての大企業による寡占(多くは外資が覇権)と、従業員の低賃金化や解雇といった、いずれも望ましくないものに必然的に向かうもののように、自分には見えます。
さらに言えば、地方経済に対しても打撃を与えます。それはプラットフォームビジネスの必然で、提供者と利用者の双方の規模が大きくないと事業として成り立ちにくいからです。ですから、利用者の多い都市部に労働者が移動することを促進する性質があるでしょう。
このように、上記の業界団体とともに政府が進めようとしているシェアリングエコノミーの普及(≒スキルのシェア)とは、かなり理由のわからない活動のように、自分には思われるのです。
普及すれば、低コストでの雇用の置き換えにつながって労働者にダメージを与え、地方からの労働者の人口流出を引き起こし、さらには大規模プラットフォーマーの金儲けに資する結果になる。格差を拡大し、社会の分断がいっそう進みかねない。
いったい彼らは、何がやりたいんですかね?
スキルのシェアリングって確かに気になりますね
終身雇用の崩壊→派遣労働の拡大→労働シェアリングの拡大
っていうのが労働市場の流れになっていくのでしょうか?
もはや正社員(しかも大企業)というものは聖域になりつつあるのでしょうね