有馬離宮からUGCとホテルの互助性について考える

前回は思い立ってフォートラベルについて書いてみました。フォートラベルは旅行産業においてのUGC(User Generated Content、企業ではなくユーザーによって作られたコンテンツ)の主要サイトの1つです。もっと大きなものとしてはトリップアドバイザーがあり、また僕のブログそのものもUGCの一角と言っていいでしょう。

このUGCについては「ホテル利用学」でも基盤となるものとして話題にしていて、例えば以下の講演録ではトリップアドバイザーについて解説しています。

(関連)OTAの主要プレイヤーと口コミの力(ホテル利用学 6) | resortboy’s blog – リゾートホテルとホテル会員制度の研究

このUGCは現代の産業において欠くべからざるものになっていて、例えば、いま僕はひんぱんにGo To Eatキャンペーンに乗ってレストランの予約をしていますが、使っているのは「食べログ」という飲食業のUGCサイトです。これは完全な主客逆転というか、UGCの上に産業(の一部)が乗っかってしまっているひとつの事例です。政府がUGCサイトを使って産業支援を行っています。

ホテル産業でもそれは同じなのですが、飲食業と比較するとかなり事情が異なります。それは、ホテル産業においては公式サイトでの直接予約が推奨され、ロイヤルティプログラムと結びついたユーザー囲い込みが強力に働いているからです。

そのためホテル業界においては、飲食業と違ってUGCに「依存」するのではなくて、「公式には認められないけれど、なくては困る」という、互助的な存在として、産業とUGCが対峙することとなります。

具体例を挙げましょう。先日僕は、銀座にある夜景の素晴らしいホテルを利用しました。はじめて行くホテルですからお部屋のアサインについてはおまかせです。結果、よい眺望のお部屋になったのですが、街中のホテルですから、反対側のお部屋だったらビルの陰になってしまったでしょう。このように利用タイミングによって「当たり外れ」が避けられないのがホテル利用の常です。

Photo by resortboy

ホテル側としては眺望について「課金」してお部屋グレードを区別する方法がありますが(この銀座のホテルではそうしていました。コロナ禍で空いていたのでアップグレードされたのでしょう)、それができるほど明確な差異がないケースの方が現実には多いですから、ハワイにおける「オーシャンビュー」、湾岸ホテルにおける「ベイビュー」のようなはっきりした例を除いては採用できないことが多いでしょう。

ホテルとしてはよい眺望をアピールしたいところですが、ゲストに「ハズレの部屋だった」とがっかりされるのは避けなければなりません。ですから、公式でない情報として「当たりの部屋」を広報する方法として、UGCが重要になってくるわけです。ここにUGCとホテルの「互助性」が存在します。

この互助性の嚆矢としての事例が、21世紀初頭のリゾート会員権に関するコミュニティにあったことを、以下の記事で「リゾート会員権というのは最先端のホテル活用法だった」と指摘したことがありました。

(参考)リゾート会員権が必要な理由(ホテル利用学 – 3) | resortboy’s blog – リゾートホテルとホテル会員制度の研究

いったいこの先進性は何によってもたらされたのかということを当事者として語るならば、重要な要素を締めていたのは「ホテルの図面」ではないかと思います。

話は僕の専門であるリゾート会員権に入っていくわけですが、当時のリゾート会員権は「お部屋単位のシェアリング」によって成立していました。この話は長くなるので省きますけれど、その後、「フロアシェア」「一棟シェア」のようにだんだんと区分所有権の意識が希薄になるように(リゾートトラストの話ですが)、運営が変化してきました。

20世紀から21世紀への端境期に生まれたネット上でのリゾート会員権の売買業者(仲介業者)は、売買対象が「お部屋(の一部)」そのものであったことから、見込み客への情報提供としてそのホテルの図面やフロアマップを公開することがありました。そこにリゾート会員権(エクシブと言い切ってしまっても意味はほとんど変わりません)のUGCの対象としての先進性がありました。

結果、「お部屋番号を指定した予約リクエスト」という、今現在においても先進的な概念が20年近く前から存在していました。おそらく今後、UGCとしての旅行サイトの発展によって、多くのホテルの個別の部屋の情報というものが可視化され、近い未来にはこの概念は一般的になっていくでしょう。

既に、ヒルトンなど大手のホテルチェーンにおいては、アプリを使ったデジタルチェックインという形でホテル到着前にユーザーがお部屋を指定できるようになっています(国内ではアパが限定的ながら同じようなことをしています)。アプリを使ったデジタルキーによるチェックインレスの社会的な要望と組み合わさって、発展型のUGCとホテルの互助性というものは、今後ますます深まっていくに違いありません。

Photo by resortboy

さて、表題の有馬離宮についてです。このホテルはフロアシェアによって分譲されているので、お部屋の当たり外れがもっとも激しいタイプのホテルと言えます。建物を横向きにスライスして、下から上にグレードが上がっていくわけですが、上にいったからいいお部屋になるわけではありません。

僕のブログの長い読者の方はお気付きと思いますが、ここまでは(壮大な)前フリです。今日話したかったことは、エクシブ有馬離宮の209号というお部屋についてなんです。話が長くなったので、お部屋の話は次回にしたいと思いますが、位置関係だけ。

これはGoogle Mapの3D機能で描画したエクシブ有馬離宮の空撮画像です。こちらから見た奥側が中庭で、右下に見えるひさしが大浴場です。このホテルはエクシブの歴史の中でも最高と評される「高級旅館ホテル」としての一つの到達点です。その象徴となるのがこの「ザ・スパ」となるわけですが、そのスパとほぼ同じ向きに存在する「最下層」のお部屋が、フロアシェアという特性から存在するわけです。

次回はそのお部屋について紹介しましょう。このお部屋がサンメンバーズですら利用可能性があるというところに面白さがあり、またそれは決して公式サイトでは公表されない、ホテルとUGCとの互助性を表現する、最高のサンプルになっていると思います。

(続きます)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です