ホテル利用のスタンダードはコンタクトレスへ

ウイズコロナ時代のホテル運営の様子を、ヒルトン東京お台場を例にレポートする第3回目は、同社が推進する感染防止対策「Hilton CleanStay」プログラムが実際にどのように運用されているのかを見ていきます。これによって、ステイの快適さに影響はあるでしょうか。

ホテルに到着すると目につくのがこの消毒ステーション。様々な商業施設と同様に、エントランスや館内の要所要所にこのようなものが設置されています。

Photo by resortboy

続いてチェックインです。当然のように、レセプションのカウンターにはシールド用の透明パネルが設けられていました(冒頭の写真。パネルが完全に透き通っていてよくわかりませんが)。僕はエグゼクティブラウンジでチェックインをしたので、ラウンジに入る際に体温のチェックを受けました。

また、お台場ヒルトンでは実施されていませんが、レセプションでの人との接触を避けるために、世界的にはスマホを使った「デジタルキー」が推進されつつあります。

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写真はヒルトン名古屋での様子です。ヒルトンのアプリと連携して、Bluetoothによる通信で解錠するというものですが、日本のヒルトンでは、旅館業法の規定を直接お部屋に入ることはNGだと解釈していて、必ずフロントなどでチェックイン手続きをする必要があります。

お部屋に入りましょう。まず気づくのは、ブルーの「Hilton CleanStay」シール です。客室のドアはシールで封印されており、客室の清掃・消毒後には入室者がいないことが示されています。これで安心して室内に入れる、という具合です。

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逆に言うと、このシールをはがした後は、その部屋のゲスト以外は誰もお部屋の中に入らない、ということを意味しています。ハウスキーピングは依頼したときだけ行われ、リネン類やアメニティの追加も希望した場合のみ、パッキングされて客室ドアの外に届けられます。

このCleanStayプログラムでは、利用者が頻繁に触れる10のエリアについて、医療用の洗浄剤で「徹底した消毒」が行われていると言います。これがその10のポイントです。

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(画像出典:Hilton Worldwide 報道発表資料)

1)照明スイッチ、電子制御装置
2)ドアハンドル、ドアノブ
3)バスルームの主な表面
4)温度調節パネル
5)テレビのリモコン、電話、時計
6)ベッド、寝具類
7)バスルームのアメニティ
8)テーブル、デスク、ナイトテーブル
9)アイロン、金庫
10)フード&ドリンクのアメニティ

消毒というのは目には見えないものなので、見た目には変化がないように思われますが、実際に利用してみるとそうではありません。要するに「消毒できないもの」は撤去されているのです。

例えば、紙のアメニティです。通常、ベッドサイドにある電話機の横にはボールペンやメモがありますが、現在はありません(この写真で紙のように見えるのは電話の料金表です)。

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紙のディレクトリ(ホテルの館内ガイド)も、デジタルに移行して廃止される見通しです(ヒルトン東京お台場では7月現在はまだ紙でした)。

もっとも驚いたのは有料ミニバーの廃止です。ご覧の通り、冷蔵庫はビジネスホテルのそれのようにからっぽです(正確に言うとコーヒーフレッシュだけが入っています)。

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従来は洋酒や缶ビール、チューハイにソフトドリンク、ちょっとしたスナックなどもあり、利用したものは自己申告でチェックアウト時に清算する仕組みでしたが、なんとこれらが全部なくなっていました。

しかし、有料ミニバーの廃止によって、チェックアウト時に清算する必要性がなくなったのです。僕はチェックアウト時にヒルトン・プレミアムクラブ・ジャパンの更新手続きをしたので利用していませんが、キーをドロップインするだけでチェックアウトが済むようになっていました。これももちろん、スタッフとの接触をできるだけ少なくするための施策です。

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からっぽの冷蔵庫に、キー返却だけのチェックアウト。まったくビジネスホテルのスタイルそのものですが、これがウイズコロナ時代の(ひとつの)スタンダードだということがよくわかります。

ビジネスホテルでは「自動精算機」がスタンダードですが、ヒルトンは一応「高級」ホテルなので、そのような無粋なものはありません。しかし、今はアプリで領収書が発行されるので、ヒルトンのようなホテルでも書類のためにレセプションに寄る必要はないのです。

念のために付け加えますが、お部屋にあるコーヒーマシン(エグゼクティブルームの場合)や、各種のティーバッグ類などのアメニティは、従来どおりに存在します。

お部屋の外についても見てみましょう。他の記事で触れたように、エグゼクティブラウンジやブッフェレストランは激変しています。

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部分的に残っているセルフサービスはドリンク類くらいですが、ラウンジにしてもブッフェにしても、手指の消毒をしたり手袋をするなどしてそのエリアに入り、「一方通行」で粛々とセルフサーブを行うスタイルに統一されています。

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フィットネスセンター(ジム)は意外にも、ルールは厳しいものの、完全な無人で営業を再開していました。入り口には注意書きが置かれ、まるで登山口を通過するように、入場前には記名した利用票をポストに入れてからジムに入ります。運動するときにもマスク着用が義務付けられており、当然のように利用者はそれに従っていました。

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内部は常にお客さんがいたので写真はありませんが、機材に変更はありません。ただ、トレッドミルなどは隣り合って利用できないように、使える機械が限定されていました。また、器具を利用した後は必ず消毒用アルコールで拭き上げることがルールになっていました。アクアゾーン(プール・屋外ジェットバス)については利用していないので状況がわかりませんが、利用者数の制限が行われていたようです。

こうして見てみると、キーワードは「コンタクトレス」であり、「消毒」そして「安心」であると言えます。もっと言えば「人との接触がないことが安心」という価値観です。ゲストとスタッフとの触れ合い、といった従来のウェットな世界観からは、はるかに遠ざかりました。

こうしてウィズコロナの時代には、ホテル利用にあたって、施設側の誰とも何も話をしないのがスタンダードになりました。

シティホテルではこれでいいでしょう。でも、会員制のリゾートではどうでしょうね。ここでうたわれているようなもてなしが、ウイズコロナの時代にどうなっていくのか、これから確認していきます。

2 comments

  1. 《Hilton Q2 Result: $432M In Red & 250 Hotels Still Closed》

    ヒルトンの第2四半期(4月5月6月)の決算が今朝の「Loyalty Lobby」に載っていました。現在の為替レート1ドル106円換算で460億円程度の赤字です。コロナ感染がこのまま続くとすると、この赤字は縮小しないので年間1840億円相当の赤字になります。ヒルトンは全世界で展開していますので、この赤字規模は大きいのか小さいのか私にはよく分かりません。でも、苦境にあることは確かです。

    Occupancy is especially ugly in Europe and the Americas (excluding the US). The average daily rates are down by 30% to 40% across all regions.

    私の興味を引いたのは客室稼働率です。ヨーロッパは壊滅状態(7.1%)でアジア地区(28.8%)は頑張っていますね。全世界で客室料金が30%~40%下がっています。全世界のヒルトンで、毎日フラッシュレートのようになっています。よって、ヒルトンプレミアクラブジャパン(HPCJ)予約はかなり有効です。

    ADRやRevPARも各地区ごとに公表されています。頑張っているアジア地区でもADRは74.09ドル、RevPARは21.31ドルでした。ヨーロッパのRevPARは5.98ドルでした。これでは赤字垂れ流しでとてもではないですがヒルトンの未来はないでしょう。ヒルトン決算の詳しい分析は今や専門家になったresortboyさんにおまかせします。

    詳しくは以下のLoyalty Lobbyの記事をご覧下さい。英文読解の練習にいいです。
    https://loyaltylobby.com/2020/08/06/hilton-q2-result-432m-in-red-250-hotels-still-closed/?omhide=true

  2. funasan、こんにちは。僕も昨晩、その記事を見ていました。いろいろ思うところはあるのですが、分析しだすと長くなるので、また別の記事で取り上げようかと思います。トップラインのコンラッドのADRの下げ方が大きくて、先日の勉強会で指摘した日本の高級ホテルとは真逆の戦略で驚きました(むしろ日本のビジホに近い考え方)。

    それで、コメント欄で大事なことを言うという芸風を活かして、大事なことを言います。ヒルトンは6月から世界的にDream Awayというキャンペーン価格を打ち出していて、実は日本でもやっています。

    (参考ブログ)Hilton Honors Dream Away-Sale For Stays Through July 31, 2020 | LoyaltyLobby
    (ヒルトン名古屋公式)【公式】【最大30%OFF】 安心がうれしい ヒルトン・サマーセール ご予約は9月25日まで | 名古屋のホテルなら【ヒルトン名古屋】

    で、この枠組みを使って日本では「ヒルトン・サマーセール」と銘打ったセールをやっています。Go Toトラベルに合わせた7月22日からはじまったことになっていますが、海外経由で予約をしている自分には、もっと前からこのレートが出ていました(記録がないのではっきりしません)。ともあれ、世界的なキャンペーンをサマーセールと看板をかけかえてやっている感じです。

    一例として、いま検索した8月16日(日)のヒルトン名古屋のヒルトンルームのレートを掲示します。HPCJのルームオンリー価格も入れてみました。

    基本となるベストアベイラブルレートが14,000円++で、HPCJだと25%オフで10,500円++です。しかし、Dream Awayのレートだと30%オフなので9,800円++になります。

    というわけで、実は今はHPCJより一般のキャンペーン価格の方が安い、という事態が起きています。Dream Awayはフラッシュセールとは違いますから、前日までキャンセルが可能、アーリー・チェックイン、レイト・チェックアウト、無料のアーリー・デパーチャー(宿泊日数の変更)の権利があります。

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