ワーケーション普及のための僕のアイデア

早いもので11月も後半。Go Toイートも華々しく予算を使い切って終息し、ようやく気持ちがふるさと納税に向きました(僕だけ?)。最近、いくつかの自治体にふるさと納税をしたので、確定申告で使う証明書が届きはじめました。それを見て「これはホテル利用の活性化にも応用できるな」と思ったので、アイデアメモをまとめておきます。

リゾート地などで休暇を楽しみながら就業する「ワーケーション」というアイデアは、コロナ禍の前から存在しますし、そんな言葉のないころからIT従事者である僕は幾度となくそのような体験をしてきました。その経験から思うことは、話はそう単純ではなく、しっかりとした制度の後押しがなければ「結局大した仕事はできなかった」ということになりがちだということです。

だいたい、リゾートホテルは仕事をする前提でできていませんから、パソコンや資料を持ち込んでも、リラックスして終わってしまうことが多いのです。

ワーケーションというものを普及させようとしたら、3つの視点で総合的に制度設計をしなければなりません。すなわち、労働者目線、提供者目線、そして最も重要なのは経営者目線です。これらが噛み合っていなければ、誰かが「がっかり」して続かないものになるでしょう。

1. 労働者目線
労働者目線については、過去にこのブログでも取り上げましたが、労働時間という概念をどうとらえるのかというテーマのもと、労災などの労働者保護の問題も整備されなければならないでしょう。これらについては、テレワークというもっと大きな括りで制度の標準化が進んでいて、厚生労働省も立派なガイドラインを作って配布しています。

(PDF書類への直リン)テレワークにおける適切な労務管理のためのガイドライン

2. 提供者目線
次に提供者目線。Go Toトラベルに話を脱線させますが、行ってみたかった場所に行ってはみたものの、観光地の疲弊が進んでいて思ったようには楽しめなかった、というような話を聞きます。おそらく、都会から地方に行くとサービスレベルに対するコンセンサスにずれがあるでしょうし、それは、あくまで仕事であるワーケーションであれば、なおさらシビアな視点で評価されてしまうでしょう。

ですから、ワーケーションを標榜してサービスを提供するのであれば、適切なガイドラインに準じた執務環境の用意が必要になるでしょう。

冒頭の写真は今年オープンした横浜にある某ホテルのコワーキングスペースです。この手の仕掛けは最近とてもよく見かけるもので、ホテルに滞在しながら仕事もできるという切り口のスペースですが、実際には大きな窓が背後にあって座る向きによってはPCの画面がちゃんと見えないとか、ブースがないのでWeb会議をするのははばかられる、などの問題を感じました。

スターバックス的に大きな机と電源をカフェっぽく提供すればそこでワーケーションができるという単純なものではなく、例えば以下で指摘されているようなWiFiに関する安全性なども含めて、仕事場としてまっとうな執務環境であるように整備されているのが望ましいと思います。

FBIが「ホテルのWi-Fiリスク」について注意喚起:サイバー攻撃のリスクに用心 – @IT

つまりはホテル側にもきっちりとした投資が必要で、それをもってようやくワーケーションに足るのであるように思います。昔の作家が名湯に長逗留して作品を仕上げた、みたいな牧歌的なものの延長にこの話題はないと思います。

3. 経営者目線
最後に経営者目線の話です。ようやく「ふるさと納税」との関係性が出てきました。ここまでは、ある意味で当たり前な前フリですみません。

ふるさと納税では納税の証明書をもって確定申告で税額控除が受けられます。この仕組みがワーケーションでも使えれば、企業としてワーケーションを社員に実践させるインセンティブとなります。

例えば、1(労働者目線)の労働条件を整備して(会社の制度を整備して)、企業がワーケーションを認めることとします。ただし、自己申告ベースではぐだぐだになるでしょうから、2(提供者目線)で述べたワーケーションに適した施設に限ることとすればよいと思います。Go Toトラベルで簡易的な認定制度がありますが、それと同様でどこか公的な機関がワーケーションに足る要件を指定するようにすればよいでしょう。

そして3(経営者目線)の話題になるわけですが、ワーケーションを行った企業に税務面でのメリットがあればよいと思います。

企業の場合、国(税務署)に納める法人税の他に、都税事務所などが管轄になっている地方税があります。その中には事業所の所在に応じて支払う税(法人住民税)がありますが、ふるさと納税と同じ考え方で、それをワーケーションによって分散させることができるでしょう。

4. 具体策
具体的には、社員がワーケーションを行った際に宿泊施設が何らかの証明書を出します(ふるさと納税の証明書と同様)。そしてそれを法人が納税する際に集計することで、ふるさと納税と同様に法人住民税が控除されるようにします。何しろ、れっきとした仕事場(=事業所)として各方面から制度を整えてホテルで仕事をするわけですから、この考え方には一定の整合性があります。

ふるさと納税には返礼品がありますが、その返礼品に相当する経済価値は宿泊施設での何らかの値引きとして実現し、法人が福利厚生として活用できるようにすればよいでしょう。ホテル側は投資を行って差別化を図ることができますし、Go Toトラベル事業のように宿泊施設が潤えばその投資回収も容易になります。しかもこの施策はGo Toトラベルと違ってサステイナブルです。

この三位一体の施策で、法人としても一定のきっちりした環境でリゾート地で仕事をしてもらうというフレームワークが提供されることになりますから、いわゆる「働き方改革」の実現手法として現実的です。

問題なのは、一般人の僕のような人がここでこんなことを書いても、提言としてはほとんど機能しないことです(あれれ)。現状では自分が楽しければいいので、お気に召しましたらばぜひコメントをお寄せください。

5 comments

  1. 今日のホテレスオンラインの記事です。

    森トラスト スモールオフィス「Cozy Works」を リゾート地のマリオットホテルに展開 | ホテル・レストラン・ウエディング業界ニュース | 週刊ホテルレストラン HOTERESONLINE

    森トラストが、都心で展開しているスモールオフィス「Cozy Works」を、リゾート地のマリオットホテルでもサービス展開するというものです。既に軽井沢マリオットホテル、琵琶湖マリオットホテル、南紀白浜マリオットホテルでオープン済みとのこと。

    まさに記事の「2」で指摘した内容で驚きました。都会でのノウハウをそのままリゾート地に持ち込むというのは、構図としては理想的ですね。現場に行かれた方、ぜひ様子を教えてください。

  2. 琵琶湖マリオットの写真を見る限り、これは従来のエグゼクティブラウンジをスモールオフィスに衣替えした感じですね。上級会員のメリット減少でラウンジ変革の波が来そうです。

  3. funasan、コメントありがとうございます。

    なるほど、ブッフェやアルコール提供を伴うエグゼラウンジから、オフィススペースへの変化、ということですか。国際的なロイヤルティ集客から、サードプレイス的なオフィス集客への変化と考えると、コロナ禍で減少した部分を別の層の顧客で埋めようという、とてもまっとうな考えにも思えます。

    でも写真を見る限り、けっこうそのまんま、という感じですよね。看板だけ掛けかえてもだめなので、何をもってオフィス利用を標榜するのか、というところを実際に見てみたいです。

  4. 《白馬リゾートテレワーク終了》
    先日、コートヤード・バイ・マリオット白馬から帰宅しました。

    私は若い時、登山、スキーに熱中していましたので、白馬は青春の思い出の地です。
    そんな白馬にロングステイできてテレワークする。このアイデアに飛びついて実践してきました。詳細は別にしますが、結果的に10連泊を7月、9月、10月、11月と4回もして、合計宿泊日数は40泊にもなりました。もう別荘並みですね。

    もともとが6月のホテル業界絶不調の時に格安価格で予約(総額8400円程度)したので、ロングステイしてもそれほど懐は痛んでいません。ここに9月から政府の援助(go to )が来ましたので大助かり、激安で長期滞在できました。
    ただし、本当にテレワークするためには課題も多いです。
    この課題については別途レポートしたいと思います。

  5. funasan、テレワーク修行、お疲れさまでした。

    別荘を持っている人よりも、ずっと多くの日数を利用していますね。一般的な別荘の利用率などについて調査した統計データはどこかにあるのかな? そういうものがあれば、リゾート会員権などのホテル利用を後押し(正当化?)するものになりそう。

    それはともかく、テレワーク課題メモ、楽しみにお待ちしております。

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