リゾート会員権論 2「預託金制と共有制」

2020年12月に東京で開催した勉強会の講演録の2回目です。前回の導入に引き続いて、今回はリゾート会員権の歴史に入っていきます。現在のリゾート会員権は区分所有権を基礎とする「共有制」が主体ですが、リゾート会員権が生まれた当初はそうではありませんでした。

ここまでの記事はこちらです。よろしければ最初から順にお読みください。

(第1回)リゾート会員権論 1「はじめに・基本的性質」

resortboy:さて、日本で一番最初の会員制リゾートクラブ、リゾート会員権を売り出したのは、藤田観光という、ワシントンホテルや椿山荘を運営しているホテル会社です。箱根小涌園など多くのメジャー施設を手掛けている会社ですが、コロナ禍で大赤字となって、大規模なリストラが報じられています。

(参考)名門「椿山荘」の藤田観光が従業員700名削減の大リストラへ – M&A Online

その藤田観光が「フジタグリーンメンバーズ」という、同社のホテルに安く泊まれる「預託金制」の会員権を1965年に発売したのが、日本のリゾートクラブの誕生であると言われています。

(公式)CLUB FUJITA|藤田観光の会員制リゾート施設のご案内

この背景には、1960年代後半に急速に高速道路ができるなど(東名高速道路の全線開通が1969年)、マイカーによる家族旅行がブーム化したことに代表される「レジャーの大衆化」がありました。これに続いてボーリングブームが起きるなど、レジャーが急速な広がりを見せた時代にリゾート会員権というものも生まれました。

現在主流であるリゾート会員権とは違って、豪華なホテルを図面売りして分譲するということではなく、ある程度のお金を預けることでホテルに安く泊まれる、というものからスタートしています。当時、同様の仕組みで多くのリゾートクラブが誕生したのですが、それらはオイルショック後に多くが破綻してしまいます。

こうした初期のリゾート会員権は預託金制と呼ばれる仕組みを採っていました。後ほど詳しく触れますが、リゾート会員権には、「預託金制」と「共有制」の2種類の仕組みがあります。

初期のリゾート会員権は、一定のお金を預けて権利を得るというものでした。それを「預託金制」と呼びます。ですが、お金を集めてリゾート事業をするのはいいけれど、オイルショック時のように経営がうまく行かなくなった時、会員が預託金証券を持ってきて「退会しますのでお金を返してください」と言われた場合、満期が来ていれば返金をしなければなりません。

そうなると事業が続かなくなってしまうし、会員権企業が破綻すればその預託金も大方なくなってしまいます。その反省から、クラブが破綻しても不動産という財産が残り、預託金の返還義務もない「共有制」という、区分所有権を基礎とした仕組みにだんだんと置き換わっていきます。

では、今日取り上げているリゾートトラストと東急不動産が、どういうタイミングでこの市場に参入したのかを紹介します。当時、宝塚エンタープライズという社名でしたが、リゾートトラストは1974年に「サンメンバーズひるがの」というホテルを作って、「サンメンバーズ」という会員権を売り出します。これは当時、預託金制でした。

今日いらしている方で、サンメンバーズをお持ちの方は?(数名挙手) おそらくは中古で買われたと思いますが、預かり保証金のある預託金制ですか、それとも不動産登記の付いた共有制の会員権ですか? どっちだったっけな、という感じでしょうか。

サンメンバーズは、最初は預託金制で始まりましたが、途中から保証金に加えて不動産登記が付くようになっているんです。そういったところにも、リゾート会員権の変化の歴史が色濃く出ています。

(来場者との対話:省略)

僕も以前、「サンメンバーズ・ホリデークラブ」という、リゾートトラストが一番最初に売り出した会員権を持っていました。その会員権は売ってもよかったのですが、実際にはシンプルに「退会」しました。預かり保証金の証券を返却して、保証金を返してもらいました。

(注:すっかり話し忘れましたが、共有制は不動産という「足かせ」があるので、シンプルな預託金制会員権と違って簡単に退会できません。不動産は登記した以上、滅失するまで権利者に各種の責任が付帯するという特質があります。これは実は大問題で、別稿にて考察する必要性を感じています。つまりは、誰かにその不動産を伴う会員権を所有してもらわないと退会できないわけで、共有制のリゾート会員権は、最後はババ抜きになるのです)

1974年の事業参入ですから、オイルショックで他の多くのリゾートクラブが破綻するを見ながらこの業界に参入したというのが、リゾートトラストのスタートになります。

そして、熱海、箱根のリゾーピア施設を経て、今も同社の中心的なブランドになっているエクシブが生まれます。1987年にエクシブ鳥羽が開業し、そしてほぼ同時、1988年に東急ハーヴェストクラブ蓼科で東急不動産がリゾート会員権に参入します。

この2つのホテルは、今見ても結構、豪華施設なんですよね。そして今も第一線の2社から、この2つの「気合いの入ったホテル」が同時に出てきたことには、時代的な背景があります。

1987年にいわゆる「リゾート法」と呼ばれている「総合保養地域整備法」というのができまして、国策として全国にリゾート施設を作ろうというムーブメントが起きます。この法律の第一号認定となったことでも有名なのが、宮崎のシーガイアです。全国にこのような巨大なプロジェクトが同時に立ち上がる「リゾートバブル」が起きていたわけです。

時代はバブルで、非常にお金が余っていた。そういった時代の受け皿として、それまでのリゾート会員権にはない豪華ホテル、まあ当時としてということですが、こうしたものが出てきたんです。

話を先に進める前に、ここで、先ほど話題に出た、預託金制と共有制というの違いについて、もう少し具体的に見てみます。

これは、東急ハーヴェストクラブの「山中湖マウント富士」という、現在も仲介で販売されている会員権のデータです。昨日、東急リゾートのホームページからキャプチャしてきたものです。

Photo by resortboy

この会員権は400万円で、そのうち330万円が預託金なんです。山中湖マウント富士というのは、会員制だけではない普通の一般ホテルです。山中湖畔のちょっと小高い丘の上に建っていて、立地は抜群です。

要するに「普通のリゾートホテル」を会員として安く利用するための、言わば古いタイプの会員権です。現在主流の「分譲」するタイプ(共有制)ではありません。

ですから、ここに「330万円は退会時に返してもらえる」とちゃんと書かれています。東急の場合は、このように有効期限がある会員権がかなりあります。この会員権は2029年7月16日に終了で、あと8年半ぐらいしかない。

ですから、差額の70万円が入会金ということです。資産として見たら、1年10万円くらいを償却していくイメージです。考えようによっては、こうしたものを東急から直接買えるので、お手頃でいいんじゃないかと思います。

このような預託金制の会員権は今もありますが、エクシブやベイコートはすべて共有制で、東急ハーヴェストクラブもほとんどは不動産を区分所有する共有制です。

リゾート会員権というものの価値というものは、言わば非常にバーチャルなものなんですが、何がその価値を裏付けているのかというのは、お金を預けていることから来る預託金制というものと、不動産(区分所有権)がそれを支えているという共有制の、2つの考え方があるということです。

さて、歴史の話に戻ります。

(続き)リゾート会員権論 3「リゾートブーム・会員権利用の2つの軸」

3 comments

  1. なるほどね!各ホテルは1号店だったのですね。
    「サンメンバーズひるがの」が好きでサンメンバーズ・ワールドホリデイの会員権を購入し、「エクシブ鳥羽」のロケーションと豪華な施設に魅了されてエクシブ鳥羽アネックスの会員権を買い、「東急ハーヴェスト蓼科」も大好きになり、会員権を買う直前までいったのですが、高くて買えず、代案にセラヴィリゾート泉郷の購入になりました。
    これらのホテルは古くはなってきてはいますが、今でも本格的リゾートホテルとして存在感がありますね。当時の日本人の意気の高さ、構想力、そして資本力の凄さに感動です。resortboyさん、続編を楽しみにしています。ご苦労様でした。

  2. 「サンメンバーズひるがの」は、一番古いサンメンのホテルですが、一番新しいサンメンのホテルでもあります。というのも、現在の建物は2000年に建て直されたものだからです。

    前年の1999年開業のエクシブ蓼科と並んで、リゾートトラストの高原リゾート作品の傑作として「プチエクシブ」なる呼び方をされることもありますね。

    エクシブだけでなく、1980~1990年代の日本の高級ホテルは素晴らしいものが多いと思います。お台場の2ホテルもそうですし、funasanご利用のところでは恵比寿のウエスティンが1994年開業で、今では考えられないような重厚な作りが魅力ですね。

  3. resotboyさん、第2回も楽しく読ませていただきました。ありがとうございます。

    鳥羽はロケーションがいいですし、何よりもフィットネスジムから眺める鳥羽湾の眺望がこの上ない贅沢なのかと感じています。
    軽井沢も客室へ向かう途中にある休憩スペースのソファ、誰がこんなとこで座るねんと思いますが、こういったところに非日常であったり豪華さを感じます。
    これらのエクシブはだんだん老朽化してきましたが、訪れると「あぁ、帰ってきたな〜」という気分になります。
    リゾートトラスト社も当時のホテル作りに対する意気込みを再認識して欲しいと思います。

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