リゾート会員権論 5「バブルの破綻物件がビジネスを変えた」

2020年12月に東京で開催した勉強会の講演録の5回目です。リゾートトラストと東急不動産によるリゾート会員権ビジネスの歴史を振り返りながら、現代のこの産業の特色である「豪華さ」を執拗に求める方向性がどのように生まれてきたのかを分析・解説します。別荘文化が衰退したにも関わらず、会員権ビジネスが発展し続けているその源流には、30年前のバブルの破綻がありました。

ここまでの記事はこちらです。よろしければ最初から順にお読みください。

(第1回)リゾート会員権論 1「はじめに・基本的性質」
(第2回)リゾート会員権論 2「預託金制と共有制」
(第3回)リゾート会員権論 3「リゾートブーム・会員権利用の2つの軸」
(第4回)リゾート会員権論 4「エクシブが起こした革命」

resortboy:対する東急ハーヴェストクラブはどういう活動を当時していたかと言うと、比べてみると面白いのですが、80年代・90年代の東急は今と比べると、すごい勢いで会員制ホテルを作っているんですね。

ここには書かれていない、現在は契約を終了した預託金制の会員権もありました(提携ホテルに設定されていた)。例えば(日本のリゾートホテルの嚆矢に数えられる)万平ホテルの別館は、かつてハーヴェストクラブでしたし、鹿島建設の「プレジデントリゾートホテル軽井沢」にも「トラスト軽井沢高原」と呼ばれていた会員権が設定されていました。

Photo by resortboy

(写真は当時の万平ホテルの看板。ハーヴェストクラブの銘板に小さく「TRUST」とあり、期限付きの預託金制会員権であることを示している)

一覧として見てみると、やはり高原の別荘地が多いのですが、シーサイドも多くあります。やはり過去においては、今よりシーサイドリゾートの需要と言うのは大きかったんですね。僕も以前は家族と海水浴によく行っていましたが、最近の若いファミリーの皆さんはどうなんでしょうか。

それ以外には、有名な温泉地、鬼怒川であるとか伊東であるとか、そういったところも挟んでいるし、斑尾や勝山といったスキーリゾートも入っているし、80年代・90年代のハーヴェストクラブはバラエティの面でも勢いがありました。

(当時のオールド)エクシブと違って、ハーヴェストのホテルは、観光地として不便な…といった所はないんですね。言ってみれば普通のところです。典型的なのは蓼科や勝浦、箱根の明神平などの、東急の別荘地の中にあるというパターンです。ただし、エクシブと比べると建物の規模は小さくて、大雑把に言ってエクシブの半分くらいの規模のものが多いです。

東急に勢いのあったこの時代までは、リゾート会員権業界においてリゾートトラストがダントツ、というわけでもなかったのですが、これが21世紀になってだんだん変わってきます。それはさっき申し上げた、バブルの破綻物件をリゾートトラストがどんどん吸収していったことが転機になっています。

Photo by resortboy

先ほど取り上げたエクシブ初島クラブ(2000年開業)は、長銀破綻がらみのバブル継承物件なわけですが、ここは買収したホテルを建て替えたりせずにほぼそのまま分譲しています。ただ、この時に「クルーザークラブ」という別の会員権を作って、ホテル会員権と合体させて「グランド」と称するようになりました。今のエクシブには「グランドエクシブ」と呼ばれているものがいくつもあるんですが、これは2000年の初島クラブからはじまったんですね。

次のエクシブ鳴門(2001年開業)は、破綻をした木津信用金庫が手掛けていた瀬戸内カントリークラブをリゾートトラストが買収して、その中にエクシブを新築しました(注:既存のホテルは壊さずに「ザ・ロッジ」としてサンメンバーズ施設扱いで運営)。そしてゴルフ会員権を併設して販売しました。

それからエクシブ那須白河(2003年ゴルフクラブ開業、2005年ホテル開業)は、ここはThe Greenbrierというアメリカの名門ゴルフクラブとの契約のもとに建てられた「ザ・グリーンブライヤー」が破綻したのを買収した物件です。言わば認定そっくりホテルなのですけれど、その独特なホテルに客室を増築して、エクシブとして分譲されました(注:既存部分は鳴門同様にザ・ロッジとして運営)。

(参考)The Greenbrier – The Greenbrier – America’s Resort since 1778.

(注:本記事冒頭の写真がエクシブ那須白河で、画面右半分がザ・グリーンブライヤー時代からの建物で、左半分はリゾートトラストが増築したエクシブ部分)

えー、こういうトリビアな話は面白いのですが、この調子で話すといくら時間があっても足りませんね。

那須白河はゴルフ場そのものですからやはりグランドを名乗るのですが、同時にホテルからクルマで小1時間もかかるスキー場(旧羽鳥湖スキー場、現グランディ羽鳥湖スキーリゾート)を買収して、「併設」であるとしました。

(注:羽鳥湖スキー場はさまざまな付帯施設もひっくるめて総額1億円(税込)という安値だった)

最後にエクシブ浜名湖(2004年開業)ですが、これは開発段階で頓挫したゴルフ事業を引き取った案件で、そこにホテルを作って、ゴルフ会員権とともにグランドエクシブとして売り出されたものです。

こうやって、従来よりもスケールアップした「グランドエクシブ」というラインが、2000年から2004、5年というごく短い間に形成されます。スライドには「バーゲンで、バブル遺産を買ったらこうなった」と書きましたが、バブルの遺産を引き受けて物件をほぼそのまま売ったり、ホテルを足したりして会員権として売ったものが、短い間にドドドっと出てくるわけですね。

(資料:図表は2005年7月31日の日本経済新聞に掲載されたリゾート会員権に関する記事から。当時、リゾートトラストが販売していた新規会員権は、4拠点すべて、破綻プロジェクトを再生したもの)

これは、リゾート会員権という産業の歴史の中では、非常に画期的な出来事だったんですね。

一方で、2000ゼロ年代になると、東急ハーヴェストクラブの開発ペースは落ちていきます。それは今振り返ると、リゾートトラストがバブル物件を引き受けて豪華さを加速させる一方で、トラディショナルな考え方、それは「別荘との対立軸」ということですが、従来の考え方ではなかなかビジネスにならなくなっていったんだと思います。

Photo by resortboy

開発地もかなり保守的になっていて、東急は非常に苦しんだと思います。重い腰を上げてエクシブのような豪華路線に舵を切ったのが、「東急ハーヴェストクラブVIALA箱根翡翠」というホテルです。これ、僕もできたときは非常に気に入ってしまって頻繁に利用していました。箱根の一番奥、仙石原にある素晴らしいホテルです。

Photo by resortboy

ハーヴェストにはそれまでなかったような、スイートルームなども備えた豪華版の会員制ホテルとして、一般のハーヴェストクラブの上位会員権として設計して、言わばエクシブをパクったようなスタイルのものが、2000年代の後半に登場します(2008年開業)。

そして同じ頃、リゾートトラストは先ほど説明したようなバブル物件を吸収しながら体力を付けて、さらなる展開を見せます。それが現在の主力ラインと言える、離宮シリーズとベイコート倶楽部です。

(続き)リゾート会員権論 6「現代のリゾート会員権ビジネス」

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