リゾート会員権論 8「高収益ビジネスの中身」

2020年12月に東京で開催した勉強会の講演録の8回目です。パート2「権利」では、リゾート会員権のビジネスモデルの解明を進めています。今回は、会員権の価格の中身を精査した上で、会員の利用動向を稼働率に注目して分析し、なぜ高価なリゾート会員権が飛ぶように売れるのか、その秘密に迫ります。

(第1回)リゾート会員権論 1「はじめに・基本的性質」
(第2回)リゾート会員権論 2「預託金制と共有制」
(第3回)リゾート会員権論 3「リゾートブーム・会員権利用の2つの軸」
(第4回)リゾート会員権論 4「エクシブが起こした革命」
(第5回)リゾート会員権論 5「バブルの破綻物件がビジネスを変えた」
(第6回)リゾート会員権論 6「現代のリゾート会員権ビジネス」
(第7回)リゾート会員権論 7「独特なビジネスモデルとその特色」

resortboy:ビジネスモデルの特徴の最後は、リゾート会員権にはマーケティング機能が内在している、という話です。実は、理論的にはそうなんですけれど、現実はそうなっていません。

これは2018年と2019年の上半期において、リゾートトラストの会員の利用実績を比較したグラフです。

(画像出典:リゾートトラスト決算説明資料)

(注:日本のリゾートホテルは一般に、ゴールデンウィークと夏休みが含まれる4~9月期に稼働率が上振れする傾向があるため、この時期で比較する方が、利用実態をよくとらえることができます)

これを見ると、エクシブ会員は半年に3泊ほどしかしていなくて、ベイコート会員でも4泊ぐらいです。ここに現れているように、リゾート会員権には「意外と使われない」「稼働率が実は低い」という(大きな)問題点があります。

この「稼働率」というのがここからの話のキーワードになるのですが、この後で再度クローズアップすることにして、話を進めます。このパートのテーマ、「権利」を得るために会員が支払っている価格の中身について、見ていきたいと思います。

これがリゾートトラストの最新会員権の価格の一例です。横浜ベイコート倶楽部「ロイヤルスイート」という、一番グレードの高い会員権で、すでに完売しています。

(画像出典:横浜ベイコート倶楽部販売Webサイト)

会員権価格はおよそ4000万円です。この4000万円を分解して、中身は何なのかという話をしていきます。

ベイコート倶楽部には24泊タイプと12泊タイプがあるのですが、ここで見ているのは24泊タイプです。「年間に24泊できる権利」が割り当てられたもので、1部屋を、365日を24日で割った15口に分割して販売しているものです(注:横浜ベイコート倶楽部では、グレードごとに客室全体が区分所有権の対象となっています。初期のエクシブでは個別の客室ごとでした)。

ですから、口数の15に4000万を掛けるとですね、1部屋当たり6億円で販売しているということです。

横浜ベイコート倶楽部はみなとみらいの端っこにあります。行った方はわかると思うんですが、すぐ後ろに普通のマンションがいくつも建っていて、この辺(会場である東京都港区芝浦)とかなり似たような、「タワマンの立地」です(冒頭の写真を参照)。

ですから、部屋の価値をマンションで置き換えたなら、適正価格がいくらかというのはすぐにわかります。ともあれ、最新のリゾート会員権は、1部屋を6億円で売っているということですから、不動産販売として見るなら驚くべき高収益ビジネスとなっています。

次のスライドは、リゾートトラストの決算発表資料に毎回登場する説明画像です。同社の会員権の中身は、このように3つの要素で成り立っています。

Photo by resortboy

(画像出典:リゾートトラスト決算説明資料)

まず、半分(50%)が不動産代金、つまり物件の区分所有権の対価です。

次に「登録料」と言って、メンバーになるために払うお金が価格の4割です。これを支払うことでメンバーになれると解釈されるのですが、実際に何の対価なのかは、かなりあいまいです。そして残りの10%が預り保証金で、30年に渡って償却されて同社の収入となります。

これらの対価を同社がどのように会計処理しているかをこの図は示しているのですが、この点については今日は端折ります(注:ポイントだけ述べると、コロナ禍の中で同社が増収増益で市場にサプライズを与えたのは、この図にあるように繰り延べられていた不動産代金が2020年の横浜ベイコート倶楽部開業で一度に売上計上されたためです)。

では、リゾートトラストのこの説明に従って、さきほどの4000万円の会員権の中身を按分してみましょう(注:同社の投資家への発表資料を元に独自に計算したものであり、実際の販売価格とは異なります)。

このグレード(ロイヤルスイート)は1室当たり平均106平米あるので、15口で割るとおよそ7平米しかないんです。4000万円の半分が正味の不動産価格ですから、およそ2000万円で7平米の区分所有権を買っていることになります。このような金額のものがホテル開業前に完売する勢いで売れているのが、「現代のリゾート会員権ビジネス」であるわけです。

では、こうしたものがなぜ売れるのか。その点を突き止めるために、会員の利用実態がどうなっているのかを、さきほどキーワードだと話した「稼働率」に注目して分析してみたいと思います。

パート1で説明した「歴史」を頭に入れながら、このスライドを見ていただきたいのですが、この左右の軸は「開業順」です。右側が新しいホテルです。

横浜ベイコート倶楽部のデータはまだないので、2019年開業のラグーナベイコート倶楽部が1番新しくなっています。そして、1番古い鳥羽が1番右にプロットされています。つまり、右側が過去に開業したホテルで、左に行くほど新しくなるという、大雑把な時系列になっています。

黒い点がベイコート倶楽部で、青と緑がエクシブです。青いエクシブは単体の施設で、緑は複数のホテルがあるエクシブ、つまり開業後に施設の追加で改装などのテコ入れが行われた施設です。そして、赤いところが離宮シリーズです。

グラフの縦軸は、2019年度(2020年3月期)の稼働率です。一番上が8割の線で、有馬離宮は8割ぐらいの稼働率があって、年中ほぼ満室という状態です。箱根、八瀬(京都)、湯河原も健闘しています。

この赤丸のグループが会員制リゾートホテルとして今一番人気があるところで、さっき言っていた「高級旅館ホテル」というタイプのホテルです。

しかし、最近販売されているベイコート倶楽部、つまり埋立地に開発した最近の会員権は、あれほど激売れしているのに、稼働率はほぼ4割台。芦屋だと3割台と極めて低い数字で、オールドエクシブよりも稼働率がむしろ低い。

斜めの線はトレンドラインなんですが、やはり、ホテルが古くなればなるほどお客さんは離れていく(稼働率が低くなる)、という傾向は見て取れると思います。

ただ、緑のエクシブ、例えば軽井沢や山中湖がサンクチュアリ・ヴィラ(注:より高級な会員権としてエクシブブランドに追加された商品ライン)を追加したり、鳥羽が別邸を建てるなどして施設全体がテコ入れされた施設は、普通の単体エクシブよりは稼働率が上がるという傾向が見られます。

さて、これらをグルーピングして、よりホテル別の役割を明確にしてみましょう。

これを見ると、リゾートトラストの事業が明確にわかると思います。赤い「高級旅館ホテル」が大ヒットしたために、その魅力を利用して、ベイコート倶楽部という別の「上位会員権」を比較的開発しやすい埋立地に計画して販売しました。新規販売されたホテルよりむしろ、離宮シリーズに需要が流れていることが見て取れます。

(注:このことは、本記事上部のスライド「会員の利用頻度は?」でも実証されています。ベイコート倶楽部の会員の利用の半分はエクシブに流れています)

ベイコート倶楽部のホテルが他のエクシブと同じような魅力のある会員制ホテルなのであれば、新しいホテルなのだから、ベイコートのホテル群はこの辺(トレンドラインの上を指し示す)にプロットされないとおかしいわけです。

というわけで、ちょっとこのグラフからは非常にいろいろなことがわかるので、後のパートでも別の切り口から解説したいと思います。

(続き)リゾート会員権論 9「リゾート会員権の経済合理性」

4 comments

  1. 会員の利用頻度は?
     
    このデータはいけません(笑)
    会員権って、凄い無駄遣いだと言っているようなもの。
    私は年間3、4日です、全く利用しない年もありました。
    年会費15万以上…
    年会費だけで高級ホテルに2、3泊出来ます。
    でも何故か愛着があります。

  2. > 会員権って、凄い無駄遣いだと言っているようなもの。

    経済合理性という観点からは、そういった結論になるのは避けられないですね。しかし、そこを説明するために、コメントいただいた「愛着」というのがキーワードだと思いますね。

    ちょっと脱線します。

    東急ハーヴェストクラブは東急リゾートの流れで、悪い言い方をすれば別荘地の管理人的な文化があるように思われます。一方のリゾートトラストのスタッフは、一般のホテルキャリアとは別の独自の人材育成をしていて、普通のホテルとして考えたら、非常に素人くさいべたべたした感じの独特な接客になっています。そして、そこに深い愛着を持っておられる会員の方の声を多く伺います。

    そういったところに「会員制ビジネス」の知られざるコアなバリューがあるような気がしているんですが、定量的なデータがあるわけでもなく、また、自分はそういうベタベタなものは苦手なので、あまり感情移入できていません。

    研究者としては、こうしたなんともいえないテーマをもう少し理解したり、研究したりする必要性を感じているんですが、はてさて、どうしたらいいものか🤔

  3. 僕は、エクシブとベイコート両方持ちで、会社の福利厚生としてスタッフの利用も推奨しているので、権利消化は当然で、足りない位です。他の皆さんが、ー年に3~4回しか利用していないというデータは驚きです。年会費の負担は軽くなく、行けば行ったでそれなりの費用がかかるという状況で、時々 どうなんだろう と考えます。愛着というか、勝手知ったる我が家という感じで利用できるのが、強みになるのでしょう。

  4. 足立さん、いらっしゃいませ。コメントありがとうございます。

    おっしゃるとおりで、なかなかこのリゾート会員権という世界は経済合理性で説明するのが難しいところが多いです。

    愛着、というのはキーワードだと思います。人間というのは、自らのこだわりで身を滅ぼすようなところが誰にもあるようですし、旅というのは、特にこだわりの対象として感情移入しやすい分野のように思われます。

    僕はリゾート会員権の利用を推奨している立場なので、皆さんをミスリードしないように、きちんとカウンターカルチャーも含めて情報提供したいと思っている次第です。

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