東京での5回めの勉強会を開催しました – 2

7月18日に東京で行った5回目の勉強会の話題だけを簡単にご紹介するシリーズの2回目です。パート2は「ホテル市場で起きていること」と題して、新型コロナの影響で現状のホテル室料がどのように変化したのかを、各種統計を使って学びました。

まずはじめに、観光庁のデータを使って、ホテルのタイプごとに稼働率がどのように落ち込んでいるのかを紹介しました。

どのタイプも落ち込みが激しいのですが、中でもマシなのがビジネスホテルで、中でもヒドいのがリゾートホテルであることを示しました。

そして、いわゆる高級シティホテルの実際の市場価格や、ビジネスホテルの室料を具体的に見た後で、REIT(上場不動産投資信託)が開示しているデータを使って、値下がりするホテルと、値下げしないホテルの2つの経営手法があることについて、詳しく検討しました。

「値下がりするホテル」の例として、インヴィンシブル投資法人を取り上げました。ここは米国の投資会社「フォートレス・インベストメント・グループ」傘下で、このREITがホテルを所有し、同じフォートレス傘下のホテル運営会社「マイステイズ・ホテル・マネジメント」がマイステイズブランドでビジネスホテルを中心にホテルを営業する、というスタイルでビジネスを行っています。

このREITのポートフォリオは約半分がビジネスホテル(宿泊特化型)で、2割がリゾートホテル、3割がフルサービスのホテルです。インヴィンシブル投資法人全体の2020年の月次データをグラフ化したのがこちらです。

棒グラフが稼働率、赤い折れ線が室料(ADR:平均客室単価)です。1~2月の約8,000円から、5月は約5,000円まで値下げしていることがわかります。稼働率は3割に満たない状況ですが、インバウンドや出張が蒸発した中で、「新しい顧客」を開拓して部屋を埋めようとしていることが見て取れます。

一方、「値下がりしないホテル」の例としては、同じREITの「ジャパン・ホテル・リート投資法人」を取り上げました。このREITは外資系チェーンが半数以上を締め、いわゆる高級ホテルが主体のREITです。

同REITは高級ホテルが主体のため、データがすべて公開されているわけではありません。その中でもデータ開示が可能な主要銘柄的なものとして「HMJ10ホテル」というものがあり、そのホテル群のデータをグラフ化したのが以下になります。

インヴィンシブルとは対象的に、室料(ADR)を下げていないことがわかります。そして稼働率は壊滅的な下げを見せています。高級ホテルだから安売りはできないという事情が透けて見えます。

冒頭の写真は、赤坂にある「ホテルマイステイズプレミア赤坂」です。ここをどのような顧客層が利用しているのかを取材してきましたが、その中身はいつか書くことにしましょう。

注)HMJ10ホテルとは、以下のホテル群です。

神戸メリケンパークオリエンタルホテル
オリエンタルホテル 東京ベイ
ホテル日航アリビラ
オリエンタルホテル広島
オキナワ マリオット リゾート&スパ
アクティブインターシティ広島(シェラトングランドホテル広島)
ホリデイ・イン大阪難波
ヒルトン成田
インターナショナルガーデンホテル成田
ホテル日航奈良

4 comments

  1. resortboyさん、非常に興味深いレポート、ありがとうございました。
    日本の高級ホテルが都心・リゾート共に苦戦している様子がよく分かります。まさに壊滅状態ですね。
    6月・7月にヒルトン名古屋に3回泊まってきましたが、外国人・ビジネス客の穴はとてつもなく大きく、国内の一般客では埋めようがありません。よって、上記の高級ホテルの苦戦は当分続くでしょう。

    参考までに高級ホテル主体のREIT「ジャパン・ホテル・リート投資法人」の株価を見てみたら最高値(10万円近辺:2016年)から現在半値以下(4万円台)に暴落してますね。投資家は先を見て売り買いするので、株価は未来を映しています。

    さて、マリオットの内部事情に詳しいFBの友人からの情報ですが「オキナワ・マリオット」がマリオットから撤退するかもしれない、とのことです。あくまでも未確認情報ですが、十分あり得ることですね。マリオット傘下に入るメリットは全世界から観光客・ビジネス客を呼び込むことにあり、そのために高額なロイヤルティ―を払います。その最大のメリットがコロナで消滅してしまったので、マリオットの看板を掲げる意味はありません。

    高級ホテルを所有している巨大な投資ファンドが資金回収・収益性見込みなし等のため世界のホテルグループから傘下ホテルを撤退させる動きが加速しそうです。今朝、LoyaltyLobbyのNewsletterに関連記事が載っていました。インターコンチネンタルグループ(IHG)苦しそうです。風雲急を告げる世界の巨大ホテルグループ!
    https://loyaltylobby.com/2020/07/24/ihg-defaulting-on-payments-may-lose-103-hotels-in-north-america/?omhide=true

  2. オキナワマリオットの経営データです(6月実績入り最新)。お納めください(^^)

    コロナ禍の中では、リゾートホテルが宿泊施設の中で、もっとも厳しいというデータが出ています。オキナワマリオットは6月の戻りも鈍いです。

    ホテルの苦境を糧にして伸びてきたホテルグループがあります。バブル崩壊によるリゾート破綻、名門旅館の行き詰まり、自治体主体の開発案件の不調。どこだかおわかりの方は、7月オフ会の報告記事の続きをお楽しみに!

  3. 7月オフ会の続き気になります。
    2大会員制リゾートクラブのアフターコロナでの魅力的な新施設の誕生(関東圏の両社の人気ナンバーワン施設は不況後に生まれましたね)。
    外資系ホテルチェーンの合従連衡による巨大化によるメリット増大。なんかを妄想して過ごしております。

  4. もなあくさん、ちょっと他の話題を挟んでいて、この件については来週に続きを書こうと思っています。もうしばらくお待ちくださいませ。

    取り急ぎ、グランドエクシブが生まれた背景をたどると、1987年の「リゾート法(総合保養地域整備法)」に行き着く、という辺りの話から、続きをはじめようかと。

    総合保養地域整備法 – Wikipedia

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