僕、resortboyが提唱している「ホテル利用学」に関する講演録の6回目をお送りします。前回は、ホテル業界全体がインターネットの普及によって発展していった「情報革命」の概要について解説しました。今回は、顧客層の変化の要因となったインバウンド利用を支えているオンライン旅行代理店、いわゆるホテル予約サイトにどのような企業群があるのかをグループ別に整理し、そこで起きている顧客囲い込みのトレンドについて解説します。

ここまでの記事はこちらです。よろしければ最初から順にお読みください。

(第1回)ホテル利用学への招待 – 1
(第2回)ホテル利用学への招待 – 2
(第3回)リゾート会員権が必要な理由(ホテル利用学 – 3)
(第4回)リゾート会員権には問題が内在している(ホテル利用学 – 4)
(第5回)ホテル業界の情報革命とは(ホテル利用学 – 5)

resortboy(以下R):では、オンライン・トラベル・エージェント(OTA)にはどういう企業群があるのかを見ていきます。こちらはWikipediaに掲載されている数字で、原典のチェックをしていませんが、プレイヤーと傾向を知るには十分でしょう。

日本で代表的なのは、じゃらんと楽天トラベル。これがツートップです。続くのはJTBですが、今はるるぶトラベルと融合しつつあるので足し合わせると、それらがベスト3ということになりそうです。

今日は、インバウンドが大事だっていう話をしているので、右側にある海外のサイトについての話を中心にしたいと思います。

オンラインの旅行サービス企業のグループは、世界に大きなものが3つあって、それに足す1、だと思ってください。1つ目はブッキングドットコムのグループです。

(画像出典:Booking Holdings

傘下にKAYAK(カヤック)というメタサーチのサイト、それからAgoda(アゴダ)っていうホテル予約のサブブランドを持っています。Agodaはアジアに非常に強いホテル予約サイトです。

(参考)ブッキング・ホールディングス – Wikipedia

それに対抗する軸として、だいたい同じぐらいの規模で、エクスペディアというグループがあります。

(画像出典:Expedia Group

エクスペディアはサブブランドでホテルズドットコムを持っていて、ホテルのメタサーチとしてはトリバゴっていうのがあります。

(参考)エクスペディア – Wikipedia

3番目は中国勢。中国にはトリップドットコム・グループ(旧シートリップ)があります。

(画像出典:トリップドットコム報道発表資料)

スカイスキャナーっていう、航空券のメタサーチで昔から非常に人気があるサイトの株式は、ここが取得してグループ化しています。

最後に、これら3つのグループにプラスワン、と言ったのは、トリップアドバイザーです。口コミのプラットフォームを強みにメタサーチの要素を取り入れて、無視できない勢力になっています。

(参考)トリップアドバイザー – Wikipedia

さて、ここはちょっと軽く行きますが、これらのOTAにおける「囲い込み」について事例を紹介します。

こうした予約サイトでホテルを予約すると、その予約サイトの中でどんなホテルを使っても、そのサイトの中でのステイタスが上がっていく、という現象があります。結局のところ、OTAは同質なものにならざるをえないので、各予約サイトもまた、それぞれに顧客を囲い込む必要性があるということなんです。

例えば、ブッキングドットコムには「Genius」っていうプログラムがあります。レベルが1、2とふたつあるんですが、これらのステイタスはとても簡単に達成できます。具体的には、2年間に5回、ブッキングドットコムでホテルを利用すると、レベル2のGeniusになれます。するとGenius対象施設っていうところで朝食が無料になります。客室の無料アップグレード制度もあるということで、何かすごくいい話ですよね。

(公式)Booking.com | Geniusロイヤルティプログラム

そのGenius対象施設がどれだけあるのかっていうのはこれからの調査課題なんですが、ともあれ、こういう風にOTAの段階でお客を囲い込むという動きがあります。

同様のことはエクスペディアもやっていて、ブルー、シルバー、ゴールドと3段階のステイタスがあります。ここではそのゴールド会員を取り上げます。

ちょっと敷居が高いですが、年間に15泊か120万円使うと、VIP提携ホテルっていう世界3,500件の施設でアップグレードやレイトチェックアウト、アーリーチェックインができるということです。

(公式)エクスペディア会員プログラム

さて、ここからは中国の話をしたいんですが、こちらは訪日外国人旅行者の、国別の延べ宿泊者数です(2018年)。今、日本に来ている人の4分の1は中国から来ていて、中国語園で全体の半分ということが見て取れると思います。

(データ出典:観光白書 – 国土交通省

今、僕はお台場に住んでいて、そこは東京オリンピックの会場になっているので、それに向けたボランティアやおもてなしの講座みたいのがあってですね、英語のレッスンとかタダでやってくれるみたいなんです。でもこういうデータを見ると、中国語もやろうよっていう感じがしますね。

その中国のトップOTA、唯一のOTAであるところのトリップドットコムというのは、日本市場に対して非常に面白いことをしています。

(画像出典:トリップドットコム報道発表資料)

オークラニッコーについては先ほどご紹介しましたけれども、このオークラニッコーは、正式にトリップドットコムの中にお店を作っています。要するに、自社の囲い込みとOTAが合体してるっていうことです。

またこちらはJR東日本との提携の写真です。JR各グループもトリップドットコムと提携していて、きっぷの手配なんかを行えるようになっています。先ほどのグラフのように、お客さんがたくさんいる中国語圏をトリップドットコムはばーっと押さえていますから、日本市場への窓口としてめちゃめちゃ大事だということが言えます。

日本のOTAに関しては、今日は1つだけ紹介します。高級ホテルに強みを持つ「一休」というヤフーの子会社です。実は、Yahoo!トラベルも使ってみると中身は一休になっています。

(公式)一休.com会員ステージ

一休には4段階のステイタスがあって、ダイヤモンド会員というのが最上級です。これになるのは結構大変でなかなかなれないんですが、ダイヤモンド会員になると、お部屋のアップグレードとかレイトチェックアウト、それからウェルカムアメニティー、駐車場無料にディナーの時にお酒が付くとか、そういったサービスが受けられるようです。

最後に、トリップアドバイザーについて紹介して、このパートを締めくくります。

トリップアドバイザーってもう皆さん知っていますよね。特に、海外のホテルを予約する時には定番のサイトです。ここには世界中からめちゃめちゃたくさんの口コミが入っていて、ホテル選びには本当に参考になります。さっき言いましたが、OTAは同質なものにならざるをえないので、このトリップアドバイザーのユニークさは際立ってきているように思われます。

口コミのプラットフォームとして、もう事実上のデファクトスタンダードになっています。例えば、オークラニッコーのホテルを予約して利用すると、「トリップアドバイザーに書き込みをしてくださいね」っていう風に、サンキューメールが届いたりします。

この口コミというものは、ホテルの情報革命の隠れた主役のようにも思えます。ホテルとしては、こういうところによく書いてほしいので、頼まれもしないのにアップグレードするとかですね、一見さんなのにサービスする、みたいな傾向が、普通にあるという風に認識しています。

「釣った魚に餌はやらない」みたいなところがリゾート会員権にはありますが、その全く真逆のことが行われているわけです。一見さんのお客さんこそ良くしない手はないという感じで、一元さんにどんどんサービスをしてサプライズを起こして、口コミよく書いてね、という世界があることを実感しています。

(続きます)

PS. 冒頭の写真はマリオットのライフスタイルブランドとして人気のある「W」ホテルの「W Taipei」です。

1コメント

  1. いつも素晴らしい内容をありがとうございます。
    興味深く拝読させていただいております。
    また大変、勉強になります。
    以前、研究会にも参加させていただきましたが
    今後も是非、タイミングが合えば参加させて
    頂きたいと思っております。
    あるホテルグループの方からお聞きしました。
    中国系を筆頭として空室率が前代未聞の高さということです。
    稼働率10%のホテルもあるようでコロナウイルスの影響は
    ホテル業界では甚大なようです。
    中国だけでなく都内の真ん中にあるホテルも確かに
    フロアにあるカフェも土日も関わらず夜はガラガラでした。

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