淡島ホテル事件の記録

この9月、リゾート会員権をめぐって逮捕者が出る事件がありました。舞台は静岡県沼津市沖合いの無人島「淡島」にある「淡島ホテル」。この記事では、その事件の概要について、わかっていることをまとめます(長文注意)。

逮捕の容疑は、破綻した会員権を購入した債権者が不利益になるように、契約書を偽装した、というもの(詐欺破産罪)ですが、その背後には、連綿と連なる悪質なリゾート会員権ビジネスの闇が垣間見えていました。

まず冒頭の写真について。これはお台場にある「ラブライブ!スクールアイドルフェスティバルALL STARS公式コラボショップ」の店頭の様子です。事件が起きた淡島ホテルは、アニメ「ラブライブ!サンシャイン!!」に登場する「ホテルオハラ」のモデルであるため、ホテル実需とは違った意味で知名度があるホテルでした。

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(ホテル公式)「ラブライブ!サンシャイン!!」×「ホテルオハラ」コラボ企画!バスツアー&特製ランチ!

淡島ホテルの沿革

最初に、淡島ホテルとは何なのかについて記します。

淡島ホテルは、バブル末期の1991年に開業した、60室すべてがスイートルームという会員制ホテルでした。設立母体はかつて存在した東京相和銀行の経営者だった長田庄一氏(故人)のファミリー企業「淡島ホテル」です。

これから破綻と事件について触れていきますが、ホテル自体は2020年にウィンダムホテル&リゾーツと契約し、同年3月26日から「ウィンダムグランド淡島」に改称して、一般ホテルとして現在も引き続き営業中です。

(ホテル公式)ウィンダムグランド淡島(旧グッドリゾート淡島ホテル)

創業者の長田氏は、この淡島ホテルだけでなく、自らのファミリー企業で手掛けるゴルフ場やリゾート会員権を東京相和銀行の融資とともに同行で販売するという、問題のある経営者でした。バブル崩壊後に行き詰まり、最後は破綻回避目的の不正増資で逮捕され、有罪判決を受けました(2003年に東京地裁で懲役3年・執行猶予5年の有罪判決、2004年に控訴を取り下げて一審判決が確定)。

(参考文献)銀行の墓碑銘 | 有森 隆 | 本 | 通販 | Amazon

もともと会員制だったホテルがどのような経緯を経て一般ホテル化したのか、細かな経緯は今後の調査課題ですが、生き延びたファミリー企業の淡島ホテルは、2018年に長田一族の手から離れます。

買収したのは家賃保証を手掛ける名古屋の「オーロラ」で、同社は淡島ホテルの株式をわずか1株1円、計200円で購入したといいます。

一方、会員権の被害者らは「淡島ホテルグループの責任を追及する債権者の会」を組織して、淡島ホテルグループの責任を追及する活動を開始します。

(週刊新潮の報道)東京相和のドンが「仏大統領」を接待した「淡島ホテル」夢の跡の詐欺騒動 被害総額は約200億円 | デイリー新潮

(被害者団体公式)淡島ホテルグループの責任を追及する債権者の会

そして、こうした債権者の申立を受け、淡島ホテルは2019年に静岡地裁沼津支部から破産手続きの開始決定を受けます。

(倒産時の報道1)2019/12/23(月)株式会社AWH(旧:株式会社淡島ホテル)破産手続き開始決定受ける | 倒産速報 | 株式会社 帝国データバンク[TDB]

(倒産時の報道2)(株)AWH(旧:(株)淡島ホテル)~アニメ「ラブライブ!サンシャイン!!」で登場のホテルを運営~ : 東京商工リサーチ

被害者団体による経緯説明の要約

上記の被害者団体のページには、債権者の会設立の経緯が記載されています。以下ではそれを要約して紹介します。

(出典:被害者団体公式)当会について | 淡島ホテルグループの責任を追及する債権者の会

・沼津湾に浮かぶ淡島に、かつて会員制だった高級ホテル「淡島ホテル」がある。
・1999年に破綻した東京相和銀行の創業者である長田庄一氏らの長田一族が開発した。
・ホテル事業に加え「あわしまマリンパーク」などをグループで経営していた。
・これら企業はバブル崩壊後に破綻したが、ホテル会員である企業や個人から、出資や融資を受けながら事業が継続された。
・2015年に関連会社である長田事業が運営する「ホテル長泉ガーデン2号館」の建築資金として、会員などから数十億円を借り入れた。しかし完成前に事業は破綻し、負債も返済されなかった。
・2018年、オーロラが淡島ホテルの全株式を取得。2019年にはあわしまマリンパークの全株式も取得した。
・債権者は約2000人、総額400億円とみられる。
・債権者らは淡島ホテルなどに対し、数百件の訴訟を提起している。しかし返済は一切行われず、破綻の事実を隠して新たな会員権販売が行われている。

Photo by resortboy

(こちらの写真は、やはりお台場にある「THEキャラCAFÉ お台場デックス店×ラブライブ!スクールアイドルフェスティバルALL STARS」の外観)

運営を手掛けるグッドリゾートという会社

淡島ホテルはオーロラに買収された後、同社子会社の「グッドリゾート」が運営を手掛けています。その際、ホテル名称が「グッドリゾート淡島ホテル」と変更され、さらに上述のように現在は「ウィンダムグランド淡島」となりました。

このグッドリゾートという会社はもともと「岩井商事」という会社です。岩井商事は「ロイヤルリゾート」という名称のリゾート会員権(的なもの)を事業化して販売していました。

岩井商事がグッドリゾートとなった現在は、「グッドリゾート倶楽部」という名称で、同社の直営施設「ウィンダムグランド淡島」(60室)、「京都隠れ家」(1室)、「ウィンダムガーデン長泉」(135室)、「いずの庄」(6室)の4施設を対象とした会員権を販売しています。

ホームページに掲載の情報によれば、個人会員が入会金180万円、登録料20万円。年会費が98,000円で、上記ホテルに年間18泊できるという設定です。利用料金はパーソンチャージで1人1泊4,000円とされています(いずれも税別)。

(グッドリゾート公式)会員募集要項 – グッドリゾート株式会社

またこれとは別に、かつて岩井商事が販売していたロイヤルリゾートの会員に対する情報提供も、引き続き同社のサイトで行われています。

(グッドリゾート公式)会員の皆様 – グッドリゾート株式会社

ロイヤルリゾートでは、少数の直営施設に多数の提携施設を組み合わせて、あたかも全国に展開する大きなチェーンのように見せかける手法が取られていました。

他のリゾート会員権事件との関連

この手法はかつて見たことがあります。「パルアクティブ」という名前を知っている人は少なくないでしょう。

(しんぶん赤旗の報道)会員制リゾート破たん/200億円集め1万人被害/「パルアクティブ」

(週刊ダイヤモンドの報道)大手会員制リゾート破綻で発覚した仰天の経営実態 | inside | ダイヤモンド・オンライン

そう思って調査してみると、以下の文献に出くわしました。

(参考文献)記事: 2018年8月号: 謎の再建屋「オーロラグループ」 – 混迷の時代を読む総合情報誌月刊ベルダ

この記事から引用します。

こうしたなか、瀕死の淡島ホテルを子会社化、長泉ガーデンの買収も視野に入れているのが、名古屋に本拠を構えるオーロラグループ。オーナーの竹原虎太郎氏は“再建屋”と称して不振企業のM&Aを進め、金融・保証会社を相次いで買収。最近は関連会社のグッドリゾートでリゾート事業の買収に傾倒している。グッドリゾートは会員数約5000といわれる会員制リゾートクラブ「ロイヤルリゾート」を運営、「ロイヤルリゾート那須高原」や「シーサイドホテル九十九里」「隠れ家 京都」など全国で約40の施設を保有または契約、事業を急拡大している。

一方で、買収した上毛ローン上毛興信や信用保証センター、フィットネスジム運営のグリーンは経営破綻。さらに、竹原氏は16年9月に経営するホテルの従業員とのトラブルから監禁・傷害容疑で福岡県警に逮捕(その後、不起訴)された過去があり、「役員にはリゾート会員権ビジネスで破綻した企業の関係者が名を連ねているらしい」(ホテル業界関係者)などコンプラリスクも見逃せない。

この記事に書かれている、かつてリゾート会員権で破綻した企業の関係者、とは、具体的には以下の人物のようです。

旧岩井商事で社長を努めていた齊藤日出興氏は、破綻したリゾート会員権企業、パルアクティブの専務であり、パルアクティブの経営者(会長)であった斎藤幹夫氏の実兄であり、別のリゾート会員権破綻事件である「日本サン・ランド事件」の当事者でもあります。

(資料:旧岩井商事の記事体広告)【“別荘”をシェア ロイヤルリゾート】(3-1)- SankeiBiz(サンケイビズ)(3-2)(3-3)

(資料:旧パルアクティブの記事)特別インタビュ—(株)パルアクティブ専務取締役 斉藤日出興氏–予約成約率を重視したこれからの会員制リゾートクラブのあり方を提案 : 1997-03|書誌詳細|国立国会図書館サーチ

(資料:日本サン・ランド事件の訴状)アクシオンカレッジ(破綻会員権の権利者団体法人)が公開したPDF

(資料:日本サン・ランド事件の経緯)アクシオンカレッジ設立趣意書

オーロラ経営者の逮捕

最後に今年(2021年)9月に発生した淡島ホテルを舞台にした詐欺の疑いで、親会社であるオーロラの竹原虎太郎社長が逮捕された事件について触れます。

以下の静岡新聞の記事が、周辺の状況も交えてまとめられていますので、そこから要約します。

(出典:新聞報道)期日偽装契約書を作成か 沼津・淡島ホテル 詐欺破産の疑いで逮捕の社長ら5人|あなたの静岡新聞

・オーロラの社長ら5人が破産法違反(詐欺破産罪)の疑いで逮捕された。
・淡島ホテルの破産手続きに関し、借地権の移転日を偽装した契約書を作成し、同社の財産を債権者の不利益になるように処分した疑い。
・債権者から破産手続きの申し立てが行われた日付より前に、ホテルの借地権が別のグループ企業に移転していたように偽装したとみられる。

ホテルの建物から土地(借地権)を切り離し、建物と土地の権利者が異なるように見せかけることで、ホテルの買い手を付きにくくし、自らのホテル経営を続けようとしたのがオーロラの狙いでした。これがホテルの財産価値を下げて債権者の利益を害したとして、破産法違反の疑いで逮捕されたのがこの9月の事件です。

この記事以外にも静岡新聞では、この事件に関する特集ページ(まとめページ)を作成して、詳しく報道しています。10月2日に開催された被害者団体の集会も取材し報道しています。また、中日新聞の記事ではこの詐欺の疑いの流れを端的に図示していましたので、併せて紹介します。

(新聞報道)淡島ホテル破産 刑事事件に発展|あなたの静岡新聞|〈知っとこ〉記事まとめ

(新聞報道)淡島ホテル詐欺破産 民事、刑事両面で追及 債権者の会が集会|あなたの静岡新聞

(新聞報道)旧「淡島ホテル」経営者ら逮捕 破産法違反疑い:中日新聞しずおかWeb

今日のところは以上です。まさか令和の今になって、リゾート会員権を舞台に、バブルの残滓のような事件を見ることになるとは思いませんでした。

2 comments

  1. 大変ご無沙汰しております。
    淡島の母体となる某無尽銀行とは、長い取引でした。

    銀行からはしばしば淡島は誘われましたが、ついに行くことなく破綻に至りました。
    その後レクサスの会員誌で宿泊プランなどを見かけましたので
    経営はしていたんだなと見てはおりましたが、もうそろそろ立ち直れない
    水域に入り込んでいるようですね。

    島に渡る手段が船しかなく、それは初島も同様なのですが、初島規模のフェリーではなく
    確かクルーザーでの送迎だったように記憶しております。
    マネージメントもホテルに関しては素人の銀行OBが入っていましたし、
    開業動機もゴルフ会員権以外でももうかる別種の会員権商い、という感じでした。

  2. balthasarさん、コメントありがとうございます。

    この事件は、、当事者の方々には申し訳ない言い方になってしまいますが、それほどの経済規模でもないし、債権者の救済の余地も限定的なのにも関わらず、メディアでは相変わらず続報も交えて報道が続いていますね。やはりラブライブ効果なのか、それとも、もっと別な本丸があるのでしょうか。

    (FNNプライムオンライン)淡島ホテル事件 破産申し立て前にホテル譲渡を装ったか 役員ら3人再逮捕 静岡・沼津市

    こちらの記事では淡島ホテルの現況も空撮でよくわかりますね。

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