高校受験戦記2018

このブログを古くから読まれている方はおやっと思われたことでしょう。僕には3人の子どもがいて、3人とも中学受験をして私立の中高一貫校に入れました。それがどうして高校受験なのかと。

原因は我が家の家庭の事情にあるのですが、結果として娘(過去からの流れに沿って「自宅ちゃん」と呼びましょう)は中2いっぱいで私立中を辞めて、近所の公立中学に中3から転入する、という選択をしました。つまり、高校受験をしなければいけないことになったわけです。

なんてもったいないことを、とお思いの方もいらっしゃるでしょう。でも、高校受験の制度と中高一貫校の仕組みのズレから、決断するなら中2の終わりなんです。理由は機会があれば説明しますが、ここでは省略します(こじらすと大変なので、中高一貫で悩んでいる方はご一報いただければと…)。

自分は中学受験についてはなかなかの経験と見識を持っていると思いますが、子どもに高校受験をさせるのははじめてで、率直に言って、体験しないとわからないことだらけで驚きの連続でした。

まず、東京における高校受験は、中学受験とはまったく風景が違っていました。

多くの私立高校は中高一貫校になっていて、高校から入れる私立学校は中学受験と比較するとかなり限定されています。一方で、近年は都立高校が復活してきています。ブランド大の付属に入れるというチョイスを取らない場合、高校受験におけるメインの議論は、どの都立に入れるか、という点に集約されます。後はいくつかある国立高校です。

僕は某国立高校の出身なのですが、およそ30年ぶりに訪れる母校は1ミリも変わらない懐かしさをたたえていました。つまりボロいってことです。反対に都立高校に行ってみれば(2校しか見学していませんが)、いずれも驚くほどキレイで、これはむしろ私立より充実しているのではないか、と感じるところも多々ありました。

つまり、国立にはカネがなくて(資金を後援会に頼っている)、都立の上位校(進学指導重点校というのが7校あります)には政治的な意図を持ってカネが投じられています。上位校に限れば、都立人気は、今後ますます強まっていくだろうと思います。

次に塾や模試などの受験産業について。

中学受験においては、サピックス、日能研、四谷大塚、早稲田アカデミーなどが覇を競っており、模試においても、サピ、日能研、四谷の3大模試がそれぞれ質の高いサービスを提供していると思います。むしろ、これらの塾の基盤の上に私立中学が乗っかって、「中学受験界」があるという感じです。

これに対して高校受験においては、これらの塾にそれほどの力を感じません。サピックスの高校受験におけるシェアは中学受験と違って低いですし、日能研や四谷大塚は高校受験をやっていません。早稲アカの高校受験シェアは高いと思いますが、彼らに大規模な模試をやるスキルはありません。

高校受験の模試は、サピックスと駿台がやっています。我が家は自宅ちゃんで塾には行きませんから、模試が重要です。そこでこれらをメインに据えての学習計画を当初立てたのですが、結論から言うと、これらは我が家にとってはまったく役に立たない、不正確なものでした。

その理由は、私立受験と都立受験では、そのベースとなるルールがまったく違うからです。この調子で書いていると、いつまでたっても記事が終わらないので結論だけ書きますが、サピックスと駿台はあくまで私立型の受験(一部の上位校)に対して有効なもので、都立入試に必要なものではありません。

都立入試に必要だったのは、中学受験を経験した立場からすると「なんじゃこりゃ」的なキワモノに見られかねない、公立に特化した「Wもぎ」や「Vもぎ」でした。我が家はWもぎを使いました。新教育(Wもぎ)のスタッフの質の高さや予測データの正確さには舌を巻きました。彼らは本当のプロだと思いました。

最後にスケジュール感についてです。

我が家の場合、中1~中2でロクに勉強できていなかったので、まずはそこを埋める必要がありました。使ったのは家庭教師のトライが運営する映像授業「トライイット(TryIT)」(無料)と、リクルートの「スタディサプリ」(月額980円)です。これで不登校だろうがなんだろうが、タイミングさえ間違わなければちゃんと追いつけます。いい時代になったものです。

夏休みは香港、マカオ、台北と、アジア周遊旅行に行っていました。受験には「やらせすぎ」が一番毒です、と、勝てば官軍的に言っておきたいと思います。

2学期は過去問もやりながらですが、多くの時間は学校の宿題や提出課題に取り組んでいました。時間を作って内申書のスコアメイクをしなければ、都立トップ校は厳しくなってしまいます。塾に行っていると、逆に学校の勉強をする時間がなくなるのではないでしょうか。

中学受験以上に高校受験には塾はいらないと思います。なぜなら、公立中学は高校受験に対して協力的で、必要であれば都立高校の答案添削なども喜んで対応してくれるからです。ここが「勝手にやる」中学受験とは大きく違います。添削を頼めるような人間関係を教師と生徒が築くことも、内申書という制度がある以上、ベースとして必要なものなのかもしれません。

11月末に内申が確定してからが受験勉強本番です。この段階で家庭に毒ガスが流れていると落ちます。それほど短期決戦だし、そこを目指してあらゆる決断を先手先手で行わなければならないでしょう。中学受験は落ちれば公立に行けばいいし、大学受験は浪人すればいいのですが、高校受験はそうは行かない一発勝負ですから、親の緊張度合いは桁違いです。

この段になると、受験はいつも同じです。過去問をやって足りないところにパッチを当てる。その連続です。今年から進学指導重点校は自校作成が復活したので、自校作成時代の古い過去問を10年分買い込んで教材としました(古い過去問は高いけどね)。自校作成は記述が多いのですが、数学が本人が、英語は学院長(オレ)が、国語は学校の先生に添削してもらいました。

こんなふうにして、何とか高校受験を乗り切りました。一本道の中学受験とは違って、方向付けを間違えると努力に見合った結果が出ないのが高校受験の難しさだと思いました。長くなるので書きませんでしたが、「入試相談」とか「併願優遇」といった私立受験のサブキャラも含めて、「本当の情報」がメディアに出てこないのも問題だと思います。僕は自分で確認するタイプなので大丈夫でしたが…。

そんなわけで4月から自宅ちゃんは都心の学校に通います。シングルファーザーには持て余し気味の自宅を整理して、都会でコンパクトに暮らすのもいいかな、と、引越先を物色しはじめたところです。東京オリンピックも来るしね。でも、ドラムが叩けなくなるのは辛いかな~。

9 comments

  1. 戦記拝読しました。
    感動いたしました。
    我が家では下の子が受験期に差し掛かり、「自宅」というチョイスも
    選択しずらく そうかと言って妻が資料を取り寄せてる
    「ワセアカ」というのにも得心が行かず、
    どうしたものか思案中です。

  2. リゾート学院のブログも拝読しておりましたので少々驚きましたが、お嬢様の高校合格おめでとうございます。
    進学指導重点校で都心ということなので、我が母校と思われます(私は都立没落の時代でしたが)。
    部活動関係で現役生と話す機会がありますが、授業以外の講習も充実しているようでして、積極的に塾に行く必要はないほどの学習環境が整えられているそうです。
    とはいえ、学習以外の活動も盛んなのは昔ながらのようです。
    お嬢様の高校生活が実り多いものであることを祈っております。

  3. 昔、娘の高校のPTA会長をやってる時、私の県で全国高P連の大会が開かれ、日比谷高校の校長と話したことがあった。校長の話では、「加藤紘一さんが居た頃がピークだった」と話していた。その頃、漸く都立高が復権し始めた。そう言えば、その時 都のPTA連合会から携帯電話への対応をどうすべきかを聞かれて、「これだけ普及している以上、禁止することより適切な使い方を指導すべきだ」と答えたのを思い出した。

  4. 一言で言って、経験値が高すぎです。

    海外リゾートの香りの裏で、予想すらしない展開でしたが、合格何よりです。いい高校生活を送って欲しいですね。おめでとうございます。

  5. なんか鬼気迫るものがありますね。子を思う親の気持ちがひしひしと伝わってきました。お子様が高校生活を中学の分まで心からエンジョイされることを陰ながら応援させていただきます。
    ちなみに娘もこの春、無事に第一志望の中学に通えることになりました。学院長にいただいたアドバイスがとても役立ちました。この場を借りてお礼申し上げます。ありがとうございました。

  6. 皆さん、こんばんは。コメントありがとうございました。

    > 鬼気迫るもの

    そうですね。こういうイタい文章は、その瞬間にしか書けない、特別なものですね。そういう意味では、2015年に学院ライブを聞いていただいた方々には、ホントにレアなひとときをシェアしていただいて、いまさらながらありがとうございました。

    いま、引越でなかなか余裕がないのですが、2か月くらいで収束させて、学院ライブの内容を踏まえて、受験ネタを総括したコンテンツづくりをしたいと思っているのですが、どうかなぁ…。ワンオペ父さんとしては倒れないようにゆるゆるやるしかないので、期待しないで待っていてください。

  7. 学院ブログ、ゆるく書き下ろして、必要なら後で編集して行く感じでも待ってます!

    変な事言うかもしれませんが、LDLコレステロールに関する分析をみて、よりその気持ちが強くなりました。

  8. こんにちは、かなり前より読ませていただいております。それなので、自宅ちゃんが、
    そうでしたか、おめでとうございます!
    うちは都内公立中なので、高校受験の話、そうそう、ふむふむと読ませていただきました。
    本当に経験値が高くていらっしゃいます!!
    私立中→高校受験の方も密かに多いようですね、Resortboyさんの体験は参考になるのでは
    ないでしょうか。 お時間が許せば、受験総括の記事をお願いします。もちろん、お身体ご自愛くださいませ。

  9. > 私立中→高校受験

    そうなんですよ。自宅ちゃんの同級生には、O蔭やF葉から移ってきたお子さんもいて(JGからって話は聞かないです)、我が家がレアケースではないということに改めて驚かされています。

    受験の話は、自分にしか書けない有益なコンテンツがあると自覚していますので、期待しないでお待ちください。現在、引越とともに原状復帰工事中です(^_^;)

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