ビジホの無料朝食から考えるブッフェの本質

エクシブ伊豆の朝食ブッフェの記事を書いてちょっと思い出したことがあるので、とあるホテルの朝食について紹介します。例によって長めの前振りから入ります。まずはホテルの朝食の意味合いを、俯瞰的にとらえてみましょう。

ホテル朝食においては、「タダ」「無料」というのが普通に存在します。

無料の意味は2つあって、1つは上得意客へのベネフィットとして通常3,000~4,000円くらいするような豪華ブッフェを無料とするもの。ヒルトン・オナーズのゴールド会員以上に提供される無料の朝食が典型例で、スイート利用客やエリートVIP会員がラウンジアクセスを得てエグゼクティブラウンジで朝食を取る、といったケースもあります。

もう1はビジネスホテルなどで、大したものではないけれども全員無料、というタイプのもの。これはベネフィットというよりもオペレーションの都合から発生したものと思います。

誰が発明したのかわかりませんが、ビジネスホテルでオペレーションのボトルネックとなるチェックアウト時の清算をなくすために、チェックイン時に朝食も含めて均一料金で徴収しちゃえ、とやった。これは素晴らしい発想の転換であったなと思います。

脳内レンダリングしていただきたいのですが、縦軸に有料・無料(無料の方がよいので上)、横軸にクオリティ(左がプア、右がリッチ)という座標平面を描くと、第一象限には高級ホテルのベネフィットが該当し、これが最高です。今日ご紹介するのは無料で質はSo-soなので第二象限、という感じでしょうか。

この流れで言えば、第三象限は有料でプア(一番ダメだがよくある)、第四象限は有料でリッチ(質的な納得感による)、ということになります。

というわけでやってきました、冒頭の写真が本日のホテルです。ダリのゾウの彫刻(ホンモノ)がホテル前に鎮座していてなんとなく東南アジアな感じがしますが、ここは日本、セントレア(中部国際空港)。泊まったホテル名をカミングアウトすると「東横イン中部国際空港1」というホテルです。

(公式)ビジネスホテルの東横INN中部国際空港1

もうすぐ3月に隣に「東横イン中部国際空港2」というのができて、両館で合計2287室と日本最大級のホテルになる、ということらしいです。東横インの室数は現在約6万室ということで、日本を代表するホテルチェーンであることは間違いありません。無料朝食のひとつの到達点がここにある?のかもしれません。

こちらがフロントの様子なんですが、フロントの周りのフリースペース(けっこう広いです)が朝食会場になります。まぁなんというか、いきなり玄関でメシ食ってる感じですから、かなりロックンロールな印象です。

このホテルはフロントを中央にコの字の建物になっていて、フリースペースも左右にあり、片方が和食、片方が洋食になっています。座席も飲食も朝食時間帯はフリーですから、どちらもいただけます。全部は撮っていませんが、できる範囲で紹介します。

まずはパンです。このパンはホテルで毎朝焼いているということで、種類も多く、一番の売りになっているようでした。

ごく普通にボイルドソーセージやスクランブルエッグがあります。定番の安心感。

各種のサラダも用意されています。あまりフレッシュな感じはしませんが、限られたスペースなので仕方ありません。

組み合わせるとこんな感じになりました。割と普通です。

続いて和食に挑戦します。ご飯に味噌汁、納豆や漬物のほか、ちょっとしたおかずもいくつか用意されていましたが、残念ながら干物などはありませんでした。

炊き込みご飯をチョイスして、組み合わせたのがこんな感じです。

ホームページでは「パン・コーヒー おいしい朝食が無料サービス!!」としか書かれていませんでしたので、予想外のちゃんとした内容に驚きました。「無料サービス」としては満点です。言っちゃ悪いけど、あっちよりこっちの方がよっぽどブッフェだな、と。

ところで、こんな記事を書いてみたのは「ブッフェとは一体何か」ということを考えたからなんですね。そんな話をして締めたいと思います。

先日、「日本ブッフェ協会」なるものが設立され、僕もさっそく入会させてもらいました。そのホームページでは代表者がブッフェの本質について語っています。いわく、「通常の食事では決して体験することできない非日常感にこそ、ブッフェの本質が宿っています」。

さらに以下のようにブッフェの価値を語ります。

・一流の料理を定額で好きなだけ味わえること
・美しいプレゼンテーションや迫力ある実演によって五感で楽しめること
・自分らしく食べられ、自然体でいられること

(公式)日本ブッフェ協会について | 一般社団法人 日本ブッフェ協会
(参考)グルメジャーナリスト・東龍さんが教える、ブッフェを楽しみ尽くす極意とは?|テレ東プラス

これに沿って考えれば、バリエーションが少なければ「自分らしく」食べられないことになります。ああ、だからあれをブッフェとは呼べないんだな、と僕は感じました。これを機会に、単なるセルフサービスとブッフェとは、区別して考え、表現していきたいと思います。

4 comments

  1. 面白い切り口のテーマですね。
    朝食ビュッフェを世界的に俯瞰してみると、もっとビュッフェの本質が見えてきます。

    私はマレーシアの首都「クアラルンプール」の高級ホテル(マリオット系・ヒルトン系)滞在が多いですが、そこの朝食ビュッフェは多民族国家マレーシアを象徴しています。

    つまり、巨大な朝食レストランに「マレー料理」「中国料理」「インド料理」「西洋料理」の各ブースがあり、それぞれシェフが各国の料理を作っています。残念ながら日本料理は独立したブースがなく、どこかのコーナーに付録みたいに置いてあります。

    ここから見えてくる朝食ビュッフェの本質とは、「多様な人種・民族・嗜好の人々を可能な限り受け入れ満足してもらう」朝食形式だと思います。

    マレーシアはイスラム世界ですので当然ながらハラール認証(豚肉ダメ)OKであり、また、インド系はベジタリアンも多いです。この流れからいけば、最近、世界的に話題になっている「糖質制限食」の人々も満足させなければなりません。昨年、ヒルトンプラハに泊まった時、朝食ビュッフェで「グルテンフリーのパンコーナー」があったのには驚きました。相当進んでいます。逆に日本は相当遅れています。

    しかし、これらを準備するには相当なコストがかかり無駄も多いと思います。よって、高級ホテルの朝食ビュッフェは値段が高くなります。私はマリオットやヒルトンのエリートメンバーとして無料で頂くので、まさに第一象限(無料・リッチ)のサービスを受けています。さて、エクシブの朝食ビュッフェの評価は?

  2. なにからなにまで、恐ろしく奥の深い考察ブログですね(失礼、笑)。

    ブッフェ協会のご紹介およびリンクもありがとうございます。
    私も会員になりました。ご発展をお祈りしたいところです。

    バイキングが好きで(自分が大食い、家族構成が多様、近くにバイキングレストランが多い・・様々な理由が重なり、、)
    無数のバイキング食をこなしてきましたが、ブッフェとバイキングの違いや(大差ないことが多いが、、)、セルフサービスとの違い(無料だけでなく、学食や社員食堂のようにアラカルトで自分で好きなものを取り、その分を払うスタイル。いくらかまでのバウチャーが配布されることもある。近年、エアポートラウンジの混雑・飽和で締め出しが多くなった?プライオリティ・パスでも指定レストランで一定金額まで無料というサービスのある空港も多くなった。)を考えることはなく、その歴史など初めて知りましたし、その「本質」を、有料・無料、リッチ・プアのマトリックスで分析するという革新的手法・考察に脱帽です。
    朝食分析として歴史上初めてですかね、おそらく。まさにfunasanのおっしゃる「面白い切り口のテーマ」! 
    国際線フライトでの中長距離エコノミークラスの食事(餌みたいなものですが、笑、無料でついてくる)でも、「多様な人種・民族・嗜好の人々を可能な限り受け入れる・・」努力は進んだ航空会社では普通になりつつありますから、この視点からの考察も必要でしょう。一般受けしない話題かもしれませんが、私は応援しますので、さらに研究を深めて次なる発表をお待ちします。ブッフェ協会ならぬブッフェ学会ができた時にはぜひ参加させてください(爆)。

    あと、付け加えて考察するなら、日本の温泉旅館ホテルチェーン(大江戸・湯快にたいなやつ、朝食バイキングはもちろん、夕食バイキングも基本セット)は、対象になるんですかね?諸外国のカジノホテルやオールインクルーシブという有料リッチ系は違うものかなと思いますが。。

    エクシブ(RT)に関して言うと、夕食はブッフェとバイキングは言葉を使い分けている感じを受けます。レストラン(専用)で供するのをブッフェ、宴会場など特設会場で供するのをバイキングと呼んでいる?朝食についての使い分けはよくわかりません。理解して使い分けてるんですかね??

    今回ご紹介のセントレア東横インは、我が家近くの成田空港の直近(LCC第3ターミナルに一番便利、かって日航ウィングスだったので立派、新館もできた大型ホテル)にもあり、利用したことがありますが、無料朝食は、なかなか侮れません。ここもホームページに詳しい内容は載っていませんが、かなりの充実度です。なるほど、無料朝食として、分析のベンチマークになりますね、さすがの選択。

    長くなったのに脱線・余談ですが、マトリックス分析というと、学校を出て就職後、マーケティング企画部に所属となったことがあり、経営学にノーベル賞があるとすれば(ないので不遇)必ずや受賞しているはずの、アンゾフ氏の経営戦略論を徹底的に勉強させられました。ヒルトンやマリオットはこの定石は外してないと思います、朝食に限った話ではなく。。
    https://globis.jp/article/1586

  3. 朝食ビュッフェについて、再びマレーシアから考察してみます。
    注:今、マレーシア・インドネシア出稼ぎ(王様)ホテル修行中です。

    私のよく泊まるヒルトンペタリンジャヤの朝食レストランは、他民族国家マレーシアの高級ホテルとして当然のように、マレー料理、中国料理、インド料理、西洋料理がブースを構えて並んでいます。しかし、その品数や品質は決して高くはないです。私がいつも食べる西洋料理に限ればレベルは低いです。

    一方で、ホテル最上階にあるエグゼクティブラウンジの朝食は西洋料理中心で実に充実しています。朝からローストビーフ、ローストダック、スモークサーモン、スモークフィッシュ等が並んでいます。専属のシェフが常駐していて、卵料理を作ってもらえます。
    昨日は「サーモンエッグベネジクト」を作ってもらいました。
    お客は西欧人が多く、アジア系も半分くらいは混在しています。日本人らしき人も時々見かけます。皆さん、静かに朝食ビュッフェを楽しんでいて、実にいい雰囲気の朝食風景です。

    一方でグランド階にある一般の朝食レストランは団体客で大賑わいです。ヒルトンは中国資本と提携しているせいか、中国人の団体が毎日、大挙してやってきます。

    ここから見えてくる朝食ビュッフェとは「お客のニーズに合わせた区別と選択」にあるような気がします。低価格の団体客は一般レストランのビュッフェで、エグゼクティブレベルの人はラウンジで、明確にコンセプトを変えています。
    この流れから言えば、日本のビジネスホテルの無料朝食ビュッフェは日本料理を大衆に提供するという観点から言えば世界基準になる気がします。アジアの大衆層は大喜びで泊まりに来ると思います。

    さて、エクシブの朝食はどこに向かうのでしょうか?方向性として宴会場でビジネスホテル並みの無料朝食を出し、レストランでは有料の高品質なアメリカンブレックファースト、又は和朝食を出す。
    皆さん、いかがでしょうか?

  4. 無料朝食と聞くと東横インを思い浮かべます。最初支配人がおにぎりにぎってましたよね。
    以前の仕事でかなりの数の旅館ホテルの朝食・夕食をバイキングスタイルで食べましたが
    エクシブのビュッフェ・バイキングは、朝夕食ともいいものではないですね。満足感がないです。
    コーヒーなどもひどいものでラウンジのコーヒーと同じ豆なのかと聞いた事もあります。
    10段階で評価すると2か3くらいじゃないですか?価格に見合ってない気がします。
    せめて合歓の里クラスのものは出して欲しい。

    どこの大型旅館かは思い出せませんが、干物など炙りたてを食べさせてくれるところがありました。
    あぁ言うのは良いですね。 

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