コロナ影響下での営業や販売は?(リゾートトラスト決算 – 3)

リゾートトラストの2020年3月期決算発表についてレビューする記事の3回目。今日は、コロナ影響下での今期(2021年3月期)がどのような環境のもとにあるのかを、決算発表資料から読み解いてみます。

(第1回の記事はこちら)コロナは稼働率にどう影響したか(リゾートトラスト決算 – 1)
(前回の記事はこちら)主要3事業のバランスは?(リゾートトラスト決算 – 2)

会員権事業にコロナは影響するのか

今年6月の予定だった横浜ベイコート倶楽部の開業が延期になっていますが、これはもともと、日本で新型コロナウイルス感染症が流行する前の段階で、中国にある家具やアメニティ関係の工場が停止となり、製造に遅れが出たことから始まっていました。

前回の記事で取り上げたように、同社の利益のおよそ7割は、会員制リゾートホテルを中心とする会員権の販売によるものです。現在のようにコロナ禍で経済が停滞してしまって、「売り物がなくなってしまう」というようなことはないのでしょうか? 

その疑問に答えてくれるのがこちらのグラフです。

リゾートトラスト決算発表資料

(画像出典:リゾートトラスト決算発表資料。以下同じ)

このグラフは、同社の商品であるリゾート会員権の「在庫」を示したグラフです。現在、800億円を超える在庫があります。これは2020年3月期の売上水準を考えると、およそ2年分の在庫に当たります。ですから「海外から商品が入ってこないので売り物がない」というようなことには当面なりません。

またこの図で一番在庫が多いのは、当然のことながら未開業の横浜ベイコート倶楽部です(グラフのオレンジで195億)。横浜ベイコートは未開業ですが2017年から販売しています。このように、リゾートトラストは建物が未完成の段階から会員権を販売し(未完成物件の場合、不動産部分の代金は開業時まで繰延されます)、開業までにかなりの部分を売ってしまうというビジネスモデルを確立しています。

東日本大震災の時と似ている

グラフでわかるように、2年前が在庫のピークで、その後は順調に在庫が減少しています。ここでグラフの左側に目をやると、今はちょうど2011年に近い在庫状況だということがわかります。

2011年は東日本大震災があった年です。その時も数年に渡って新規の物件開発を行わずに在庫を減らしていき、2014年からは毎年の新規物件の攻勢をかけ、2019年3月期には過去最高益を記録します。

現状、同じような水準の在庫があることは、数年に渡ると予想されるコロナ禍への対応としては、ひとつの安心材料と言えるかもしれません。

販売中の会員権の売れ行き動向

では、現在販売している会員権の売上状況を見てみましょう。横浜ベイコート倶楽部は既に約7割を販売しており、非常に好調です。また、ラグーナベイコート倶楽部はほぼ完売。芦屋ベイコート倶楽部も計画通りに売れています。

リゾートトラスト決算発表資料

エクシブ六甲サンクチュアリ・ヴィラは関西のベイコートの影響を受けて販売が振るわず、2020年3月期においても計画の半分に満たない販売実績で、累計でも半分以上が在庫となっています。また関東では、エクシブ湯河原離宮が横浜ベイコートの好調さの裏返しで計画未達となっています。

このように「売り物がない」という状況にはならないので、問題は現在停滞している営業活動が、ポストコロナの時代にどうなるのか、という点です。決算発表資料には、以下のように「コロナ対策」について記載されています(一部抜粋)。上の枠が会員権事業、下の枠がホテル・レストラン事業に対するコロナ対策です。

リゾートトラスト決算発表資料

残念ながら会員権事業の営業活動については、特に具体的なことは書かれていません。下のホテル・レストラン事業の方では、やはり別記事で触れた「三密対策」に加えて、費用抑制について記載があります。

(参考)ポストコロナで変わるホテルの常識 | resortboy's blog – リゾートホテルとホテル会員制度の研究

ホテレス事業で50億規模の費用を削減

これによると、50億円規模で固定費を削減するとしていますが、その内容については触れられていません。また、ホテルの休業(一部集約と表現)についても取り上げられています。この2つが同じことを指しているとすると、不人気なホテルを閉めて費用を削減する、と読めてしまうのですが、実際にはどうなのでしょうか。

そのホテルの休業等についてまとめたスライドがこちらです。

リゾートトラスト決算発表資料

緊急事態宣言の解除を受けて、6月移行はオールドエクシブも一部を除いて営業が再開されます。ベイコート倶楽部、離宮エクシブ、六甲SVはすでに再開していて、6月いっぱいまで締めることになっているのが初島、伊豆、淡路島の3施設です。

実はこの3施設は、エクシブの中でも稼働率が低いものを下から3つ選んだ、という状態で、2019年3月期においては3施設とも年間の稼働率が3割台でした。いずれも海に近いエクシブですから、7月からの再オープンは予定通りなされるはずです。

施設閉鎖は会員権の本質に関わる

気になるのは、今年の秋冬に「第二波」が訪れた際の休業対応です。この3施設は休業発表当初より特別扱いで休業期間が長く取られており、自治体による休業要請とは別の理由で長期休業に入ったという批判が一部にあります。

エクシブの場合、不動産の区分所有に基づく占有日とその交換、という根本の考え方があります。ホテルがクローズになると、その根本がゆらぎかねません。また同社は施設の休業に関して関係する会員に一切の公式な連絡を行っていません。コロナ禍の影響で明言されたホテル運営の固定費削減ですが、会員権の本質が損なわれないように見守っていく必要があるでしょう。

というわけで、決算説明資料から、同社の今の状況について3回ほど記事を書いてみました。緊急事態宣言も今夜には全国的に解除される見通しです。ニューノーマルの下で、また楽しんでまいりましょう。

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