ベイコート倶楽部の稼働率はなぜ低いのか

僕がオフ会で催している勉強会で話題にしていることで、皆さんに注目してほしいと話していることの1つに、ベイコート倶楽部の稼働率、という問題があります。この点について興味深いデータが発表されたので、今日はそれをシェアして、皆さんと考えてみたいと思います。

さっそくそのデータを掲示します。出典はリゾートトラスト社2020年3月期第2四半期決算説明資料です。

これによると、ベイコート会員の半年間(4~9月)の平均利用泊数は、1口につきおよそ4日です。大雑把に言って、うち2泊をベイコート、2泊をエクシブで過ごしていることがわかります。

一方、エクシブ会員はほとんどベイコート倶楽部を利用していません。

ベイコートの場合、占有日(権利泊数)は年間に12日か24日のどちらかです。仮に全員が12日だとしましょう。そして占有日を消化して宿泊していると仮定しましょう。

このグラフの期間は半年ですから、6日の占有日(12日÷2)のうち、2日をベイコートに使い、2日はエクシブで使い、2日は使っていない。このような利用が平均的であることが、この仮定からは見えてきます。

しかしこの仮定だと、ベイコート倶楽部は3分の1しか稼働しないことになってしまいます。また、このグラフが示しているようにベイコート会員がベイコートとエクシブを半々で使うのなら、ベイコート倶楽部の稼働は最大で半分ということになってしまいます(ここでは占有日の利用を前提に話をしています。サンクスフェスティバルなどの占有日なしの宿泊の話をしだすと、なんでもありになってしまいます)。

このようにこのグラフには、ベイコート倶楽部の稼働率が低い理由がはっきり示されています。なお、公表されている室稼働率は、2019年3月期の有価証券報告書によれば、東京ベイコート倶楽部が52.7%、芦屋ベイコート倶楽部が41.8%でした(いずれも対象期間は2018年4月~2019年3月)。

有明の東京ベイコート倶楽部はすでに開業11年を経過しましたが(会員権は完売)、写真の芦屋ベイコート倶楽部は昨年開業(2019年9月末現在、8割以上を販売済み)、蒲郡のラグーナベイコート倶楽部は今年の開業(同、9割以上を販売済み)です。

これらの主力会員権が、開業後まだ日の浅い段階にも関わらず、契約施設そのものにおける利用が進まない理由のさらに根本原因については、ここでは書かずに勉強会・研究会の話題としたいと思います。研究会の募集についての詳細は、もうしばらくお待ちください。

(写真は芦屋ベイコート倶楽部)

8 comments

  1. ressortboyさん 大変ご無沙汰しております。

    私も昨日のRT社の決算を読みました。ホテル・レストラン部門は減益であるものの、強い営業力による会員権販売とメディカルで儲けを出していて株主としては安堵しています。リゾート会員としては台風等の影響もあるでしょうが、「オーナーメリット向上による、CSアップ」を具現化するための経費増大であればむしろ好ましいことだと思っています。

    このホテル・レストラン部門はリソースを維持できるレベルの収益にして、超過収益部分は会員に還元するというモデルになれば理想ですが、これは過去にみた夢だったのでしょうか。最近、レストランでの食事内容が改善されてきているような気がしていますが、如何でしょうか。

    決算資料で気になったのは、消費単価がべーコートは31,497円/人、エクシブは17,857円/人と大幅に違っていることです。確かに家族3,4名で都会のスイートルームは難しいのでべーコートの存在価値はありますが、二人だったら、ちょっと頭を使えば、高級ホテルのスイートに泊まれる値段ですね。クラブフロアで軽食やフリーフローを楽しめば、真面目にディナーを食べる気にはならず部屋でゆっくりしたくなります。

    そうするとベイコートってどういう時に利用するのでしょうか。確かに接待にはいいかもしれませんが、家族では意外と使いにくい感じがします。そもそも都心に行ってホテルに行って宿泊するのは、私にとっては、テンションが揚がることを楽しみに行くものなので、年に何度も行きたいとは思いません。やはり周囲の誰も気を張ってカッコつけているので、それに順応するのが疲れるのだと思います。

    一方、リゾート地にあるエクシブやハーヴェストは何度も行って、大体同じ部屋がアサインされるので、自分のもう一つの居場所に帰ってきた感があって、とても癒やされる気がします。やはり、まわりに緑の多さやフレンドリーなスタッフそして以外にも無邪気なゲスト達の存在によるものと思います。

    利用する側からすれば、都会のべーコートとリゾート地のエクシブではその緊張感に大きな差があり、それが稼働率の差がある理由の一つだと思いますが、如何でしょうか。

    長文、大変失礼致しました。

  2. chessmenさん、ご無沙汰しています。コメントありがとうございました。とてもいろいろな大事なご指摘をいただいたように感じました。

    特に、ベイコートとエクシブの客単価の違いが大きい、という点については、とても考えるべきテーマのように感じています。コスト感に関する記事を書いたこともありまして、リゾートトラスト会員という狭い枠組みではありますが(それが日本のリゾート会員権を代表しているものでもあるので)、これについての考察を、別途記事にしてみたいと思います。

    これほどまでにエクシブ会員がベイコートを使っていないというのは、長期的にはベイコート施設の維持を脅かす大きな問題となり得ます。それは稼働率が上がらないからで、ベイコート会員はエクシブを積極的に利用しているのに、逆はそうではない。この客単価の違いが大きな原因であるのは、初期投資をしてランニングコストを下げるという会員権の本質から考えて当然のことです。

    chessmenさんご指摘の「緊張感」というのも大きなテーマだと思いました。またそれは、客単価とも大きく関係しているように思います。後続の記事で考えを深めていこうと思います。

  3. ホテルメンバーシップ研究会の釣書をみて、ちょっとコメントしたくなってしまいました。需要の価格弾力性の観点からアプローチするのも面白そうな気がしてきました。参考になった、経済産業研究所の森川さんのレポートのリンクを貼っておきます。
    https://www.rieti.go.jp/jp/publications/dp/17j006.pdf

    研究会の対象である 1)会員制ホテル 2)ホテルロイヤルティプログラム 3)共有経済のネット基盤 のターゲット層は価格弾力性の観点からみると異質のセグメントであるよう思います。 1のターゲットは価格弾力性が低い=価格の変化にあまり敏感でない層(以下A群と称す)であり、2と3のターゲットは価格弾力性が高い=価格の変化に敏感な層(以下B群と称す)になります。

    従来、企業は市場のセグメンテーションを行い、A群には高価格で売り、B群には低価格で販売することで利益の極大化を追求していました。常識的はB群からA群への移行は僅少で、A群からB群へのシフトを抑えるのが有効でしょうから、RT社がA群のカラパゴス化を図る戦略は正しかったと思います。一方で、A群の利用者はゆったり家族や仲間と共にリゾートで過ごす習慣ができて、集団の結束を高めながら、所有するリゾートに愛着を感じることができて満足していたと考えます。この部分は金銭で測れないメリットで、B群の方は生涯経験することがないかもしれません。

    しかしながら、RT社はその顧客層の価格弾力性があまりに低過ぎるために、多少の価格メリットを与えても稼働率が上昇しにくいジレンマを抱えています。そこで、契約施設での平日夕食一人分無料化やディナーチョイスプラン等の魅力的な宿泊プランを出してきて、顧客の価格弾力性を少しでも向上させようと必死になっているようです。

    一方、B群については、正規に近い料金を払って部屋のグレードアップや食事の無償提供等を受けているロイヤルティプログラムの本来想定ターゲットである顧客は価格弾力性が高いとはいえないので除外し、修行等によってステイタスを維持することが最大の目的になっている層を念頭において記述します。

    この層はCPを追求して宿泊回数以外には金銭を費消することを避けるので、最小の費用で最大限のメリットを追求するという面で、確かに合理的で賢い消費者であることは間違いありません。但し、ステイタスが落ちることを恐れ、金銭を費消してアドレナリンを発散させることを嫌う傾向があるので、本当に快適なのかどうかはよくわからないところです。

    私としては、本来、おまけであったものを当然のように要求するようことはちょっとカッコ悪いかなと思います。自分で相応の金銭を費消しないと、ベルや食事等のサービスに対して評価できないし文句も言えないので、受けたサービスへの満足度が弱くなるのも非金銭的なデメリットかもしれません。

    またまた、長文の書き込みになってしまい、一方よがりの書き振りになってしまいました。1、2、3を上手に併用している方からみるとどのような最適Mix解がでてくるのかに大いに興味があります。

    投稿した内容が研究会の趣旨に外れていましたら、私の妄想ですから無視してください。

  4. chessmenさん、研究会を先取りしたような興味深いコメントをありがとうございます。ご紹介のレポートは読めていませんが、少しコメント返しをさせてください。

    リゾートトラストが成功した要因は、おっしゃる通り「リゾート会員権という本来コストコンシャスなアイテム」を「会員制でないと味わえない高付加価値な世界観」と読み替えて高級化に邁進したところにありますよね。現状では、他のホテル産業の世界と融合しておらず、独自に存在しているようなイメージがあります。どこまで(いつまで)それが通用するのか、興味があります。

    その最重要点である「愛着」などに起因する部分。「B群の方は生涯経験することがない」世界について世の中に情報を広めたいというのは、自分がまぁこんなサイトで年がら年中、無理矢理に時間を作って情報発信している、その本質のところかもしれないです。

    それからロイヤルティプログラムにはまっている顧客層、まぁ自分も半分そうかもしれませんが、感情移入すればエクシブと同じじゃねぇか、と思う一方で、「本当に快適なのかどうかはよくわからない」というご指摘もよくわかります。

    自分もまさに同様の問題意識があって、前回のオフ会では「修行なしで」という注釈付きでロイヤルティプログラムを使う方法について取り上げました。OTA(予約サイト)が独自に付与するステイタス的なものについても取り上げています。

    最終的にはGoogleなどが消費行動を本人以上に把握することによって、価格の弾力性という点での最適解を提示してくるようなメタな世界がすぐそこまで来ています(世間ではこれを安易にAIなどと呼びます)。

    ですから否応なしに、価格の弾力性がもたらすコスパ(そしてそのコスパを味わうことの快感)は最適化の一途をたどって、最終的には居住空間として自宅を持つのは馬鹿じゃね?的な層が現れるまでにコストやベネフィットが研ぎ澄まされていくでしょう。サイゼリヤと同じ料理を同じ値段で自宅では作れないように。

    考えもまとまっていないコメントでお恥ずかしい限りですが、研究会ではこうしたことを皆さんと書き散らかしながら、ホテル利用が開く新たなライフスタイルについての考察を深めていきたいですね。

    なんちゃって!

    研究会の趣旨なんていうものは、あるようでないのですよ。皆さんからお話をうかがって、それを共有してそれぞれの楽しみを見つけていく。そのためのお手伝いとして、僕が何か考えをまとめて、またそれをきっかけに皆さんが実践のヒントとする。みたいな活動を、淡々とできればうれしく思います。

  5. chessmenさん、鋭い分析レポート、興味深く読まさせて頂きました。
    昔からリゾートや高級ホテルが大好きだった私は典型的なB群のようですね。
    ひと昔前なら庶民のB群はA群のお仲間には入れてもらえませんでした。
    高額な会員権を正規料金ではとても買えません。

    インターネットが全ての序列を破壊しましたね。
    ネットで格安中古会員権を購入することによって、B群が高級リゾート(エクシブ)になだれ込んできました。
    庶民にとって夢のような高級リゾートがリーズナブルな値段で利用できる。
    コスパ優先のB群(私)は完全にエクシブにはまりました。

    時は流れ流れて10年20年、正規で入ったA群の紳士・淑女の方々が続々と定年退職し、年金世代になってきました。
    もらえる年金は驚くほど少なく「こんなはずではなかった」という老後の現実に直面します。
    体力も気力も資金力も少なくなり遠方のリゾート地にあるエクシブにはもう行きません。
    しかし、かっての素晴らしい想い出とプライドもあり、会員権の売却までには至りません。
    それに、たまに、若夫婦・孫連れで家族の結束の場として、利用価値はあります。

    ネットの普及によってB群のコスパ感覚はますます鋭くなり、遊びも多様化、短期化します。
    コスパ的にエクシブの高額化路線にはついていけません。
    B群はネットのお得情報に直ぐに飛びつき実行します。
    安く買った中古のリゾート会員権を売却するのに躊躇しません。
    次のターゲットは何か?
    そこに外資系高級ホテルがなだれ込んできました。

    老いも若きも日本人全体が(世界から見て)貧困化しつつある現在、
    A群の絶対数が限りなく減少していきます。
    ガラパゴス化したリゾートトラストはどうするのか?
    結局、アジアの富裕層を取り込まなければ展望はない気がします。

    来週からバンコクに行ってきます。今年最後の東南アジア(王様)修行の旅です。
    マリオット・プラチナ(50泊)かつ、ヒルトン・ダイヤ(30ステイ)の両方のステイタス達成です。
    世界のマリオット・ヒルトンが私の別荘になり、極めて快適な老後を送っています。
    では、行ってきます。(勝手なことを書きましたがお許し下さい)

  6. funasanさん コメントありがとうございます。

    A群も努力しているように感じています。私としては、数年後のリタイア後のリゾート会員権の利用は、1月あたり、別荘的使用として4泊/回、ホテル的使用として2泊/回程度が理想かなと考えています。年間72日で年間の1/5となります。funasanさんには遠く及ばないですが。

    エクシブの現行制度ですと、オーナーが夫婦で平日2泊とすると2泊目の室料無料なので、5000円の夕食で1泊目はディナーチョイスプランを利用するとして計算してみましょう。蓼科のラージルームを夫婦で2泊すると総額は 7232 x 2 + 5000 x 2 x 2 x 1.1 x 1.1 + 2000 x 2 x 1.1 x 1.1 = 43,504円となり、10,876円/泊・人です。更に蓼科が契約施設ならば夕食2食分が無料ですので7,851円/泊・人となります。

    更にセラヴィリゾート泉郷の来年度からの夕食5000円のプランでは通常、8500円/泊・人、オフ宿では7000円/泊・人です。東急ハーヴェストの素泊まりは3960円/泊・人です。エクシブの契約施設がどこかという問題はありますが、滞在先のmixを考えてお酒さえコントロールできれば、10,000円/泊・人以内に収まります。

    往復の交通費を10000円とすれば、2泊ベースで総額50000円、4泊ベースで総額90000円になります。先程の前提では年間156万円、15年続けるとして2340万円の資産が必要になりますが、実現可能な水準ではないかと思っています。

    「老いも若きも日本人全体が(世界から見て)貧困化しつつある」とはその通りですが、日本の貯蓄額の水準が世界有数であることも事実です。やはり、コスパは大切ですが、日本人はもっと消費する必要があると思います。そのためには、明るい未来が見通せることが重要なのですが、そこがネックなのかもしれないですね。

    優雅な修行の旅、とても羨ましいです。楽しいお話を楽しみにしています。いってらっしゃいませ。

  7. リゾート会員権と、ゴルフ会員権は、似てるところがあります。
    会員権は、イニシャルコストが高いので、会員権は、買わずに、ネット販売で泊まり続ける、ゴルフプレーをし続ける方がトータルコストは、断然低いという結論は出ています。
    しかし、将来その会員権を売却して、利益が出ると、それは逆転します。
    ただ、利益が出るか出ないかは、株と同じで誰にもわかりません。
    会員権を買って入会して、メンバーとして余裕を感じるなぁ、ステータスを感じるな、仲間も増えたなぁ、という意味では、価値観と将来含み益が出ている夢、を買うようなもんです。
    理想主義か、実利主義か、人それぞれあるような。
    少し、話から逸れてしまいしたが、差別化した空間を提供して、会員権を高く売ることに徹すれば、稼働率を云々を超えた、収益期待ができるのでは。

  8. ヒデさん、いらっしゃいませ。とても示唆に富むコメントを頂戴しました。キーワードとしては「価値観」「差別化した空間」というところでしょうか。

    例えば、日本で最高のステイタスを誇るホテルは一般に帝国ホテルだと認識されていますが、同ホテルは誰でも入れて、ロビーには人があふれ、単に休憩や昼寝をしている人までいます。

    元来ホテルはこのようにパブリックに開かれた空間でしたが、2000ゼロ年代以降、ビルインタイプと言われるオフィスとホテルの複合利用が外資などで主流になって、その流れは変わりました。エントランスとロビーを分けて、エントランスで(ある程度)チェックをされた上で高層階のロビーに向かうスタイルです。

    リゾートトラストはさらに過激です。「完全会員制」をうたって、ホテルというもともとパブリック性を持つ空間を、真逆の「聖域」として販売し、ベイコート倶楽部以降は宿泊者でなければ入れないようにしました。

    これはゲーテッドコミュニティに似た考え方です。アメリカではゲーテッドコミュニティは「アメリカ社会における富裕層と貧困層の断絶の象徴」と評されることがあります。

    このサイトのディスカッションでも同様に、例えば値上げの議論などで、分断を感じることが多くなりました。「分断の提供がサービスになっていて受け入れられている」という事実はありそうです。

    コメント欄でちょろっと書くのは難しい、深いテーマです。

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