闇だらけの医療ガイドラインを読む – 2

「がん患者よ、旅に出よう!」は、トラベルライターの舟橋栄二さんによる連載です。早期退職でリゾートライフを満喫する日々の裏には、2度の手術を含めた「がん」との闘いがありました。「旅は生きる喜び。その喜びをがんに奪われたくない」
本連載は「旅を通して転移がんを克服した全記録」です。(編集担当:resortboy)

コレステロール値に限らず、血圧、血糖値、さらに、がん検診のマーカー値を含めて、病院でなされる様々な検査基準がカットオフ値で、医学的エビデンスがなかったとしたら? そう考えるとぞっとします。

医師と患者の認識の違い

こちらは最新の2022年版ガイドラインからの引用ですが、「管理目標値」を使った「コレステロール低下療法」を「コンセンサス」によって「A」レベルで推奨するとしています。

2013年、米国発の新ガイドラインは、こうした目標値を定めた診断と治療を、臨床的エビデンスがないとして放棄しました。これに対して日本動脈硬化学会は「LDL-Cの管理目標値を決定するに足るエビデンスは現状では十分ではないことに関しては我々も異論はなく」と応じました。

(詳細は前回の記事を参照)第2-47回・コレステロールと黒船 – 4

私はこの答えに仰天した訳ですが、彼らは専門家として真面目に答えただけで、そんなことは百も承知だったのです。

逆に解釈すれば、「基準範囲はしっかりした医学的エビデンスに基づく正しいもの」と思っていた我々(私)の思い込みが間違っていた、とも言えます。

この認識の違いは重大です。

基準を作れば患者が生まれる

カットオフ値は限られた専門家のコンセンサスでどうにでもなるので、2012年のガイドライン改訂版には、新たにLDLコレステロール(120~139mg/dl)が「境界域高LDLコレステロール血症」として追加されました。

基準を下げれば、「脂質異常症予備軍」が新たに誕生します。

その後も、動脈硬化学会や医療関係者は高LDLの危険性を声高に言うだけで、「たとえ高LDLでもHDLコレステロール値が高く、レムナント(RLP)や小型LDLが少なければ問題ない」「レムナントや小型LDLを調べて本当に悪い高LDLなのかを確認せよ」といった、新しい知見を診療に活かすような声は、ほとんど聞こえてきません。

抹殺されたのでしょうか?

こぼればなし

(参考記事)人間ドック、医師が教える「ほぼ無意味な検査」2つ 多くの人は「通常の健康診断」で十分な場合も | 健康 | 東洋経済オンライン

この記事は「第31回・コレステロールの嘘」でresortboyさんがコメント欄で紹介してくれたものです。カットオフ値を知ったうえで読んでみてください。

我々シニア男性の共通の懸念「前立腺がん」を見つける血液検査(PSA検査)があります。私も夜間頻尿に悩む年代になり前立腺がんが心配です。

とりあえずPSA検査をしてみようか?という気になりますが、実はこの検査、日本泌尿器科学会は「絶対に行うべき」と推奨し、一方、厚生労働省は「推奨しない」となっています。PSA検査の闇も深そうです。

(続く)

【次回】第2-50回・闇だらけの医療ガイドラインを読む – 3

【前回】第2-48回・闇だらけの医療ガイドラインを読む – 1

本連載は、本サイトに掲載した舟橋栄二さんの記事から、がん闘病に関する回を再配信したものです。時期に関する記載は2023年現在のものです。

(本連載記事一覧)がん患者よ、旅に出よう!
(スペシャル対談)私のリゾートライフの全体マップ
(筆者ホームページ)舟橋栄二「第二の人生を豊かに」

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