
コレステロールの嘘 – 4
本連載は「旅を通して転移がんを克服した全記録」です。(編集担当:resortboy)
「緊急!“コレステロール低下医療に警鐘” コレステロール値は高い人の方が癌や脳卒中に罹りにくく、そして長寿であることが解った。間違ったコレストロール低下医療の危険性を示し、医療の改善をめざす」 こう高らかに宣言し、日本の医療改革を目指したのが、「日本脂質栄養学会」でした。2010年のことです。
日本脂質栄養学会のガイドライン
驚きましたね。日本の正式な医学系学会が、従来のコレステロール悪者説に真っ向から反対する「ガイドライン」を出していたのです。
私は、早速、アマゾンで注文して下記の2冊の本を購入しました。
「長寿のためのコレステロール ガイドライン・2010年版」中日出版社(2010年9月)
監修:日本脂質栄養学会、コレステロールガイドライン策定委員会
「続・長寿のためのコレステロール ガイドライン 作用メカニズムから見たコレステロール低下医療の危険性」西海出版(2014年9月)
監修:日本脂質栄養学会
ここには従来の主張を完全否定した驚くべき内容がありました。以下、その要旨です。
・総コレステロール値あるいはLDLコレステロール値が高いと総死亡率は低下する
・総コレステロール値は高い方が長生きする
・高コレステロール血症でもコレステロール低下医療(スタチン投薬)を勧めない
・血清コレステロールの善玉・悪玉説は、その根拠が崩れた
上記の本は医療関係者向けの専門書で読解に苦労します。手っ取り早く内容を理解するには以下の2冊が役に立ちます。2人の著者は上記ガイドライン作成の中心人物です。
奥山治美著「コレステロールは高いほうが心臓病、脳卒中、がんになりにくい」主婦の友社(2012年4月)
大櫛陽一著「100歳まで長生きできるコレステロール革命」永岡書店(2012年1月)
日本脂質栄養学会のガイドラインが「私の疑問」に全て答えてくれていました。高コレステロールは悪くなかった。私の血液は何も問題なかった。
しかし、これを認めれば、今までの日本のコレステロール治療は全面崩壊します。病院・製薬会社は大打撃を受け、医者は失業します。当然のごとく、このガイドライン発表に対して、日本動脈硬化学会から以下のような猛烈な批判が出ました(全文は出典を参照)。
日本動脈硬化学会は、科学的根拠なく、必要な患者の治療を否定するような標記「ガイドライン」を断じて容認することはできないことを表明する。
日本動脈硬化学会 理事長 北 徹
(出典)「長寿のためのコレステロール ガイドライン2010年版」に対する声明【日本動脈硬化学会】
これに対して日本脂質栄養学会から2010年11月9日付けで、次のような回答が出されました。全文は下記の出典参照。
混乱が起こるのは、総コレステロールで 220 mg/dL(LDL-Cで140)以下を目標とする動脈硬化学会のガイドライン(GL)に原因があると考えるべきでしょう。日本のほとんどの疫学調査で、総コレステロール値 240-259 mg/dL(LDL-コレステロールなら 160-180 mg/dL)の時、総死亡率が一番低いという報告がなされています。
日本脂質栄養学会 理事長 浜崎 智仁
(出典)日本動脈硬化学会 「長寿のためのコレステロール ガイドライン 2010 年」に対する声明(2010年10月14日)―に答える
両学会を巻き込んだコレステロールのバトルが始まりました。そして、3年後の2013年、コレステロール治療について、アメリカから「黒船」がやってきました。
アメリカ発の新ガイドライン(2013 ACC/AHAガイドライン)の登場です。
(続く)
【次回】第2-44回・コレステロールと黒船 – 1
【前回】第2-42回・コレステロールの嘘 – 3
本連載が単行本(紙の書籍)として刊行されました
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(筆者ホームページ)舟橋栄二「第二の人生を豊かに」