
コレステロールの真実 – 3
本連載は「旅を通して転移がんを克服した全記録」です。(編集担当:resortboy)
今まで日本動脈硬化学会は、高LDL血症が冠動脈疾患の最大のリスク要因として、LDL低下治療をしてきました。しかし今や、小型LDLが冠動脈疾患の真のリスクマーカーになるということが、多くのエビデンスで示されています。
実は、2022年版の「動脈硬化性疾患予防ガイドライン」にも、小型LDL(Small dense LDL)のことが書かれています。以下、同書55ページからの一部引用です(太線筆者)。
LDL粒子のうちサイズが小さく比重が大きいSmall dense LDL(sdLDL)は冠動脈疾患との関連が多数報告されており、またPDAや動脈瘤との関連も示されている。そして、sdLDLコレステロール(sdLDL-C)が日本人においてLDL-Cと比べて冠動脈疾患リスク、冠動脈硬化の重症度、二次予防における心血管イベント発症とより強く関連することが示されている。
「知らぬは一般国民のみ、専門家は百も承知だった?」
日本動脈硬化学会は小型LDLの危険性を十分認識していました。しかし、小型LDLのことは一般的には全く知られておらず、私もコレステロールの真実を深く追求していて、はじめて「発見」したことです。これは一体どういうことでしょうか?
resortboyさんのドキュメンタリー
発見と書きましたが、実は私は、resortboyさんのブログ「tapestry」内にある一連の「学院長の健康診断シリーズ」を読んで、小型LDLのことを知りました。
ここで、このサイトのオーナーであるresortboyさんの、コレステロールに関するドキュメントを紹介します。これは私(舟橋)の解釈によるものですので、resortboyさんからは追って何かコメントがあるかもしれません。
resortboyさんは40代前半の時、心筋梗塞を発症し、緊急手術をしました。カテーテル手術で血流を復活させ、狭窄した冠動脈にステント(血管を広げる金属でできた網目の筒状のもの)を挿入して一命をとりとめました。現在もステントは入ったままです。
彼の悪玉コレステロールLDLは昔も今も極めて高く、手術後、心筋梗塞発症の2次予防として、コレステロール低下薬(スタチン)を何年にも渡って服用しました。しかし薬の副作用が強く、また、当時取り組んでいたマクロビオティックの食事(玄米を主食とする食事法)の影響もあり、体調がすぐれない日々が続いたといいます。
そこで食生活を大幅に見直し、糖質制限と肉食中心の食事に変えることで、体質改善を図りました。その効果は絶大で、彼は健康を取り戻しました。さらに、コレステロールなどの脂質について調査研究をして、2018年に小型LDLこそ動脈硬化の真犯人だと突き止めました。
血液検査によれば、彼のLDLは善玉の大型LDLで占められ、超悪玉の小型LDLは皆無でした。動脈硬化は進行しません。そこで彼は、自分のデータと関連する医学論文を持参して大学病院の主治医と真剣な議論をしました。そしてついに、主治医の了解の上で8年間も継続したスタチン服用をやめたのです。
彼は心筋梗塞を発症したことで、死の一歩手前まで来ていました。もし、彼の学習した理論と実践が間違っていたら、心筋梗塞が再発し、人生The End、になってしまいます。ご自分の命を賭けた取り組みです。これはもう迫真のドキュメンタリーで、我々も大いに学ぶものがあると思います。
resortboyさんは現在、ますますお元気になり、仕事に旅行に、そしてブログ執筆、勉強会開催などに活躍されていることは、読者の皆さんがご存知の通りです。
以上、小型LDLの概説をしましたが、これらのメカニズムを理解しようとすると非常に難しく、完全に研究者レベルです。この連載のレベルを超えていますので、興味のある方は以下の参考文献をご覧ください。小型LDLについて詳しく解説されています。
(参考資料)小型LDLコレステロールについて(株式会社シクロケムバイオ, 2019年9月~11月まで7回掲載)
(参考資料)小型LDLの重要性 平野勉教授(川村内科診療所)
(続く)
【次回】第2-63回・私の健康長寿への道 – 1
【前回】第2-61回・コレステロールの真実 – 2
本連載が単行本(紙の書籍)として刊行されました
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