
闇だらけの医療ガイドラインを読む – 1
本連載は「旅を通して転移がんを克服した全記録」です。(編集担当:resortboy)
私は決してお医者さんや病院を敵に回したいわけではありません。しかし、この連載で記してきたように、私の家族や私自身のがん体験を通して、現代の西洋医学に大きな疑問を持ちました。その診断や治療は本当に正しいのか? 私の知りたいのは「真実」です。
検査基準「カットオフ値」はコンセンサスで決まる
日本動脈硬化学会は1997年に「高脂血症診療ガイドライン」を出し、2002年に「動脈硬化性疾患診療ガイドライン」を出しました。そして、2007年に従来の「診療ガイドライン」から「予防ガイドライン」に名前を変え、その後、大幅変更はなく、2022年の「動脈硬化性疾患予防ガイドライン」が最新版となっています。
このガイドラインの変遷を見てみると、どうやら日本動脈硬化学会は2007年に大きなポリシー変更をしたようです。
何があったのでしょうか?
恐らく、背景には2004年に成立した利益相反を禁じたEU新法(EU臨床試験指令)と、その後のコレステロール研究結果があると思われますが、2007年のガイドラインでは一般の人(私)には知られていない大事なことが議論されていました。
2009年3月25日にOnline publicationされた以下の資料から一部引用します(太線筆者)。
引用元論文:動脈硬化性疾患予防ガイドライン2007年 寺本民生
さて,わが国で,このような脂質異常が本当に動脈硬化性疾患と関連するのかというエビデンスであるが,(略)それぞれのカットオフ値(注1)をどのように決定するかということになると,クリアカットな線引きができるわけではなく,専門家のコンセンサスに基づいて決定されることになる。そのような基準で決定した診断基準をTable 1(注2)に示す。
カットオフ値とは何か
まず、上記の引用部分で注として示した部分について説明します。
まず注1のカットオフ値とは、ある検査の陽性、陰性を分ける値のことで、病態識別値とも呼ばれます。その検査結果によって、特定の疾患に罹患した患者と罹患していない患者を分ける境界値ですが、その範囲内の全員が陽性(または陰性)ということはありえません。
理論的に、100%正確なカットオフ値は不可能です。そのため、カットオフ値を設定すると必ず偽陽性・偽陰性が生じ、本来健康な人でも病人になってしまう可能性があります。
検査基準はカットオフ値以外にも数種類あり、かなり複雑です。これを理解しないとコレステロールの真実に迫れませんので、後日、再度取り上げます。
次に注2の脂質異常症の診断基準(カットオフ値)は、同学会では以下のように基準を定めています。
・LDL-cholesterol ≧ 140 mg/dL
・HDL-cholesterol < 40 mg/dL
・Triglycerides ≧ 150 mg/dL
この「カットオフ値」について、私なりに解説していきます。
2007年に設定された上記の脂質異常症の診断基準は、その後の職場健診・人間ドックの基準となり、日本人に見事に定着しました。しかし、この基準はカットオフ値であることを我々は十分理解する必要があります。
カットオフ値は医学的なエビデンスと言うより、権威があるとされる医師や研究者など少人数の合意によって基準範囲が決定されるものです。これはカットオフ値の宿命です。
そして、日本のコレステロール治療はこの基準範囲を管理目標に設定して、基準値をオーバーした人には、まずは生活改善を促し、効果がなければ薬物治療を勧めてきました。
(続く)
【次回】第2-49回・闇だらけの医療ガイドラインを読む – 2
【前回】第2-47回・コレステロールと黒船 – 4
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