
コレステロールの真実 – 2
本連載は「旅を通して転移がんを克服した全記録」です。(編集担当:resortboy)
前回、「LDLの血管内皮細胞への侵入を阻止せよ!」ということで、私なりに「動脈硬化性疾患予防の王道」についての根本にたどり着きました。そこで参考図書として紹介した書籍の監修者である寺本民生氏は、「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2007年」の解説論文の中で、次のような指摘をしていました。
Small dense LDL(小型LDL)とは
(参考論文)動脈硬化性疾患予防ガイドライン2007年(寺本民生, 脈管学 Vol.48, 2008)
脂質異常症の診断基準
近年,単なるコレステロール(TC)やトリグリセライド(TG)ばかりでは表現できないリポ蛋白異常,とくにレムナントやsmall dense LDLなどが動脈硬化性疾患と極めて関係が深いことが分かり,これらの脂質異常も意識していることを理解しておくことも重要である。
そして前回紹介した書籍「患者のための最新医学 脂質異常症(コレステロールと中性脂肪)」でも、寺本氏は、「中性脂肪が増えるとLDLが小型化(小型高密度LDL)し、さらにしみ込みやすくなる」と記しています。
一般的にはほとんど知られていませんが、実は悪玉コレステロールLDLには、サイズが25.5nmより小さい「小型LDL」と、サイズが25.5nmよりも大きい「大型LDL」の2種類があるのです。これをLDLサブクラス(亜分画)と言います。
小型LDLは重くて(高密度)、「Small dense LDL」と呼ばれ、大型LDLは軽くて(低密度)「Large buoyant LDL」と呼ばれます。denseとは密度が高い、buoyantとは浮力のある、という意味です。
小型の重いLDLと、大型の軽いLDLが、混在して血管の中を流れている感じです。そして、LDLの中身(サブクラス)を検査すると、人によって小型LDLと大型LDLの割合が異なっているそうです。
小型LDLの比率が高ければ…
注目すべきことは、大型LDL比率の高い人をAパターン、小型LDL比率の高い人をBパターンと分類すると、Bパターンの人はAパターンの人より、冠動脈性心疾患の発症率が3倍も高い、という試験結果(以下論文を参照)が1988年10月に報告されています。
小型LDLの詳しい説明は以下の論文にも掲載されています。
(参考論文)Small dense LDL(木庭新治, 昭和大学医学部内科学講座・循環器内科学部門, 心臓 Vol.43 No4, 2011)
(参考論文)糖尿病と動脈硬化 4)脂質異常(平野 勉, 昭和大学医学部内科学講座・糖尿病代謝内分泌内科学部門, 糖尿病 60(7): 485~488, 2017, 日本糖尿病学会誌第60巻第7号)
どうやら動脈硬化の真犯人は小型LDLであることが、これら国内外の研究グループによって明らかにされてきています。
小型LDLが冠動脈性心疾患につながる
では、なぜ小型LDLは冠動脈性心疾患の発症率を高めるのでしょうか? 以下の理由が考えられます。
・小型LDLはLDLレセプターへの親和性が低く血中滞在時間が通常のLDLの1.5倍長い
・小型LDLは血管内皮に付着しやすい
・小型のため血管内皮細胞の隙間から入り込みやすい
・小型LDLは酸化変性を防止するビタミンEに乏しいため酸化されやすい
・小型LDLは酸化ストレスの影響を受けやすく、容易に酸化LDLになる
さらに、インスリン抵抗性があると小型LDLが増えること、小型LDLはメタボリックシンドロームとも関係することも明らかにされました。小型LDLコレステロールとインスリン抵抗性指数とは正の相関があり、脂肪細胞から分泌される「アディポネクチン」(善玉ホルモンの一種で、内臓脂肪が溜まると分泌量が減る性質がある)とは負の相関があることも示されています。
これにより、小型LDLを少なくし、大型LDLが多い脂質に体質改善すれば、たとえLDLが多くてもアテローム性動脈硬化は防げ、さらに、糖尿病やメタボ対策にもなる、という夢のような道が見えてきます。
(続く)
【前回】第2-60回・コレステロールの真実 – 1
本連載が単行本(紙の書籍)として刊行されました
(本連載記事一覧)がん患者よ、旅に出よう!
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(筆者ホームページ)舟橋栄二「第二の人生を豊かに」