
自己判断のための「吹田スコア」 – 2
本連載は「旅を通して転移がんを克服した全記録」です。(編集担当:resortboy)
吹田スコアを様々なケースに当てはめると、見えないものが見えてきます。例えば、女性の閉経後のLDL-Cの増加は冠動脈疾患の発症リスクに影響するか?という問いに、吹田スコアは明確な答えを出しています。
高齢女性の場合
極端な2つのケースを考えてみます。閉経後の65歳~69歳の女性で、LDL-Cが基準値を超えて140〜159に増えた人の場合を計算してみましょう。悪いのはLDL-Cだけで、喫煙・糖尿病・慢性腎臓病なし、至適血圧、HDL-C(60以上)であるとします。
これで計算すると、吹田スコアは38となり、10年間の冠動脈疾患の発症リスクは何と1%です。生活改善の必要はなく、スタチン服用など論外です。
逆に、閉経後の65歳~69歳の女性で、LDLコレステロールが基準値内(100未満)であっても、その他の危険因子がすべて最悪の場合、合計得点は75となり、冠動脈疾患の発症リスクは28%以上と跳ね上がります。これはかなりヤバい状態で、すぐさま、LDL低下治療以外の対策を講じるべきです。
高齢男性の場合
65歳~69歳の男性の場合も、LDL-Cが基準値を超えて140〜159に増えても、喫煙・糖尿病・慢性腎臓病なし、至適血圧、HDL-C(60以上)で計算すると、吹田スコアは45となり、10年間の冠動脈疾患の発症リスクは2%になります。
逆に、65歳~69歳の男性で、LDLコレステロールが基準値内(100未満)であっても、その他の危険因子がすべて最悪の場合、合計得点は82となり、冠動脈疾患の発症リスクは28%以上に跳ね上がります。
このように、吹田スコアを見ると、LDL-Cの値よりも、その他の要因の方が冠動脈疾患の発症リスクに影響していることがわかります。「LDL-Cを下げればよい」という単純なものではないのです。
参考までに、日本動脈硬化学会は「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2012年版」で初めて、個人の管理目標値の設定に絶対リスク評価を導入しました。絶対リスクとは、有害なイベント(冠動脈疾患など)が発生する確率を意味します。
そして、2017年版で動脈硬化性疾患発症の絶対リスク評価に「吹田スコア」を、2022年版では「久山町スコア」を採用しました。
(参考)【久山町スコア】2022年版で新採用!動脈硬化性疾患予防ガイドライン | HOKUTO
ガイドラインに採用されているのですから、恐らく現場の臨床医は動脈硬化性疾患の2次予防(既に疾患が発症してしまった患者の再発防止)には、これらのスコアを使って患者のリスクを評価し、治療に役立てていると思います。
(続く)
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