ガラ権(日本独特のリゾート会員権という商品)の歴史をたどると、かつては現在のようなリゾートホテルだけではなく、かなりのメーカーがシティホテルと称して、現在で言うビジネスホテルを利用施設に組み入れていた時代がありました。
かつてあったシティ会員権
リゾートトラストではサンメンバーズに今も、リゾートホテルと同列にシティホテルが形式的になりながらも概念的に併存していることは、読者の皆さんがよくご存知のことと思います。
一方の東急ハーヴェストクラブにおいては、シティホテルという概念はなく、かつての「京都アーバンステージ」を例外とすれば、すべてがリゾートホテルです。
僕はハーヴェストクラブの会員になったことはないのですが、リゾートトラストの変調に気づいた今年、ハーヴェストクラブへの入会に興味をもった時期があって、その時に「フレンドリーホテル」という制度を認識しました。
中でも魅力を感じたのは、今は東急ハーヴェストクラブの運営と同じ会社になったホテルブランド「東急ステイ」を提携として優待利用できるという制度でした。
フレンドリーホテル
現在、上記のような金額で利用できます。素泊まり1名で5,500円です。東急ステイのラインナップは以下のようなもので、街なかに泊まってその土地の店を利用したり観光をしたい僕にとっては、相当に魅力的なものでした。
しかし残念なことに、この制度は実質的に年内で終了します。
いままで上記の通り5,500円だった料金は、1月1日以降、「シンプルステイプランから1割引」に改定されました。
実質的終了
今日のトップ画像は、南青山にある「東急ステイ青山プレミア」です。写真のように独立した25階建てのビルで、外苑前の駅から徒歩2分という超一等地。ホテルは13階から25階に170室で営業しています。
試みに、今日から1カ月後の2025年1月27日の料金を調べてみると、公式サイトのシンプルステイは以下のようなものでした。通常価格と会員価格があり、どちらの価格から10%オフになるのかは不明ですが、安い方としても17629円になります。
一方で一般OTAで調べてみます。Yahoo!トラベルで見ると、17310円でした。フレンドリーホテル制度の意味は、少なくともこの事例についてはありません。
Yahoo!トラベルは必ずPayPayポイントが付き、かつ予約時にその分を値引いて支払うことが可能です。そのポイントはたいてい10%であり、またシンプルステイよりも有利なプラン(早割など)にも適用されますから、ハーヴェストクラブのフレンドリーホテル制度がYahoo!トラベルよりも安くなることはないと考えられます。
優待の縮小ということ
このフレンドリーホテルという制度は、東急ハーヴェストクラブの契約にあるものではなく、あくまで、いつ終わるかもわからない「優待」に過ぎなかったのではないかと思います。ですから、インバウンド需要に湧く普通のホテルが、より有利な条件で販売できるようになった今、その優待が終わるのは、運営会社の経営面からは当然でありましょう。
ガラ権には、このように契約外のルールが多数存在し、またそれが暗黙の了解として利用の前提となっているケースがあります。典型的なものとしては、エクシブにおける各種のオーナー優待が挙げられます。
一般ホテルと相乗りしている東急においては、一般販売を優先するようになりましたが、エクシブは一般販売を行いませんし、今後も行わないだろうと僕は予想しています。
東急は当然のように、インバウンドが見込めないホテルハーヴェストでは価格を下げて会員のメリットを縮小し、インバウンドが見込める東急ステイはこのように切り離すことで会員メリットをなくしました。
エクシブは一般もインバウンド需要も取り込める仕組みになっていませんので、不人気施設では格安プランを用意して需要を喚起しています。しかしその一方で、契約外のオーナー優待は、今後は縮小される危機にあるのではないでしょうか。
今回の話は、すべて「取りやすいところから取る」という、商売においてごく当たり前のことの帰結だからです。契約書に書いていなければ、廃止はいつでもできます。
まして、契約書に書いてあることも守れないような状況なのであれば、なおさらのことです。