ホテルコンドミニアムの問題点

リゾート会員権分譲会社(ガラ権メーカー)の次なる商品として、「より新しい」とされる「ホテルコンドミニアム」が急に話題となってきました。リゾート会員権市場が飽和し、かつ、分譲後にさしたる収益が見込めないホテル運営を嫌ったとすれば、それは自然なことです。

リゾート会員権が、飽和する宿泊施設の中で水商売に活路を見出し、過剰な高級化とレストラン重視・接客重視で生き延びてきたのと同様に、このホテルコンドミニアムという50年もの歴史を持つ商品も、現在は、その商品構成が複雑に進化しています(これはむしろ悪い意味で言っています)。

具体的な事例としては、本サイトの連載で掲載した、以下の記事をご覧ください。

東急商法の現在地、ホテルコンドと最後のガラ権

今日は、この箱根仙石原の物件からスタートして、合計4つのホテルコンドミニアムを主体的に販売してきた東急リゾートの取り扱い商品について、主に、それら商品の販売後の運営に着目して分析します。

複雑な登場人物

まずは上記記事で取り上げた「BLISSTIA箱根仙石原」です。こちらの物件は、ホテルコンドミニアムとホテルレジデンスという2つの仕組みが混在した複雑な運営がなされていますが、今回の記事では、ホテルコンドミニアムに絞って話を進めます。

こちらの物件に関する「配役」は以下のようになります。

まずオーナー本人ですが、客室(専有部分)は区分所有です。つまり、普通のマンションと同様に、客室はそれぞれのオーナーに権利義務があり、共有部分は区分所有法のもとで管理運用されます。

これは言葉を変えると、区分所有者全員によって管理組合が結成され、管理会社に物件管理が委託されるということです。この物件の場合、その管理会社は東急不動産傘下の東急コミュニティーです。修繕積立金の制度もあり、ここまでは普通のマンションと同じです。

ホテルコンドが特殊なのは、これに加えて宿泊施設運営会社が登場することです。この物件の場合、それはリロバケーションズになります。ホテルの運営は売った東急ではなく、まったく別の会社であるリロが行います。

このため、客室オーナーはリロバケーションズと賃貸借契約を締結します。リロは実際のホテル収益から自らの収益を差し引いて、オーナーにペイバックします。

資産管理会社

話はこれだけでは終わりません。このホテルコンドミニアムという商品は、オーナーが自らの物件を自由に使えないという点で不動産投資商品の中でも金融商品的な側面が強く、それに関わるキャストが登場します。

それが資産管理会社の存在です。オーナーは、管理委託契約や賃貸借契約と当時に、資産管理業務委託契約を締結しなければホテルコンドミニアムを持てません。それにもとづいて、管理費とは別の宿泊施設資産管理業務費用が毎月徴収されます。

この資産管理会社は何をするのか。これは東急の説明をそのまま引用しましょう(引用元:【ホテルコンドミニアムとは】沖縄ホテルコンドミニアムならではの「管理運営の仕組み」とメリットをご説明します | リゾートSTYLE

資産管理会社の役割
沖縄のホテルコンドミニアムにおけるユニークな仕組みのひとつが、資産管理会社の存在です。その役割は、主に「ペイバックシステムの監視業務」になります。

資産管理会社は、ホテル運営会社が行う運営状況の報告やペイバックの金額等を、各種資料、報告書、客室の稼働状況などと照らし合わせながら整合性を確認し、オーナーへ報告します。加えて、各オーナーへのペイバック金額について配分が正しく行われているかも確認します。第三者の立場からオーナーの資産を守り、適正に運用・管理されているか監視する存在。それが資産管理会社の役割なのです。

このように、利益の最大化に努める「ホテル運営会社」、快適なホテル環境を守り維持する「管理会社」、運営会社を監視しオーナーの資産を守る「資産管理会社」という3つの会社が共同で運営管理しているのが、沖縄のホテルコンドミニアムの特長です。

しかし、BLISSTIAの資料を見ても、この資産管理会社がいったい誰なのかが明示されていません。

三重奏

このように、ホテルコンドミニアムというのは、1)普通のマンションと同様に、区分所有法に基づいて専有部分の権利義務をオーナーが持ち、共用部分が管理組合を通じて運営されるのと平行的に、2)オーナーはあらかじめ決まったホテル運営会社に専有部分を強制的に賃貸させられ、3)第三者である資産管理会社にペイバックについて監視させる、という3つの契約が重層的に存在するものであることがわかります。

1)については区分所有法に基づいて、オーナーの意思決定を取りまとめる存在として管理組合があります。しかし実際にオーナーが居住するわけではないリゾートマンション(このホテルコンドミニアムを含む)において、管理組合が十分に機能しないことは歴史が証明しています。

2)については、専有部分についての賃貸借契約ですから、各オーナーにその主体があり、1)の管理組合は関係がないでしょう。しかしホテルコンドミニアムの場合、ホテル運用が前提となるため契約が強制であり、オーナーは賃貸の解除ができません。その後の売買時にも、賃貸借契約の継承が条件になっています。つまり、自分の部屋についての利用の権利が、本質的にはそもそもありません。

逆にホテル運営会社側から見て、その契約を解除する権利は存在するのでしょうか。「富める時も 貧しき時も ホテルとして愛し ペイバックし続けることを誓いますか?」なんてことはありえませんから、ホテル運営会社がバンザイしたときにどうなるかは、顧客にどのように説明されているのでしょうか。権利と義務が非対称(オーナーが一方的に不利)ではないでしょうか。アーメン。

3)については、そもそも資料に誰だか書いてありません。2もそうですが、3についても法的な消費者保護の仕組みがなく、なんとなくそれらしいものとなっていますが、実際には関係する事業者は誰も結果責任を負わず、実際にはなんの権利もないオーナーにそれらをすべて帰属させるシステムではないでしょうか。

現在、BLISSTIAは販売を終了したことになっているので、販売サイトは消えています。しかし売れ残ったものを東急リゾートが部屋ごとに売っていますので、そのページから「注釈」を引用します。

ブリスティア箱根仙石原/ホテルコンドミニアム(47876) | 箱根(仙石原)のホテルコンドミニアム | 別荘、リゾートマンション・不動産情報は東急リゾート

・所有客室に対し「宿泊施設賃貸借契約」「宿泊施設資産管理業務委託契約」を締結していただきます。
・ホテル運用が前提となるため、上記契約を解除することはできません。
・宿泊施設賃貸借契約に基づき得られる賃料は変動性のあるものであり、購入後保証されるものではありません。
・オーナー様のご利用時にはご利用料金が発生します。

これはわかりやすい「開業ゴール方式」であり、開業後の責任を分譲会社が完全に放棄しているという点で、従来のペイバック方式(ペイバックPart1)と異なる「ペイバックPart2」に進化しています。

山口百恵の声(配役は東急リゾートのセールス)で「プレイバックPart2」のサビを、替え歌で脳内再生してください。

♪「あてにしないでよ~」
♪「〇〇〇のせいよ」

〇〇〇には運営会社の名前を自由に入れてください。これで現在のホテルコンドミニアムの本質が理解できると思います。

シーズン2以降

さて、このペイバックPart2のシーズン1があまり成功したようには見えない、箱根仙石原だったわけですが、その後、沖縄、軽井沢、白馬を舞台にシーズン2~4が東急リゾートより絶賛上映中です。キャストを紹介します。

リーガロイヤルリゾート沖縄 北谷

売主:京阪電鉄不動産、セキスイハイム東海
販売代理:東急リゾート
管理会社:京阪カインド
運営会社:ロイヤルホテル
資産管理会社:不明

【公式HP】新築分譲ホテルコンドミニアム リーガロイヤルリゾート沖縄 北谷

グランディスタイルホテル&リゾート旧軽井沢

売主:東急不動産、サンケイビル、三菱地所レジデンス
販売代理:東急リゾート
管理会社:東急コミュニティー
運営会社:ケー・エキスプレス
資産管理会社:不明

【分譲/公式】グランディスタイルホテル&リゾート旧軽井沢|新築分譲ホテルコンドミニアム

ラヴィーニュ白馬 by 温故知新

売主:リストデベロップメント
販売代理:リストインターナショナルリアルティ、東急リゾート
管理会社:合人社計画研究所
運営会社:温故知新
資産管理会社:不明

【公式】新築分譲ホテルコンドミニアム|ラヴィーニュ白馬 | 東急リゾート

一般にホテルはおよそ20年で陳腐化し、計画的なリニューアル投資(CAPEX)やリブランドが必要になるビジネスです。そうした継続的な運営責任と計画性が、東急リゾートのホテルコンドミニアム販売からは欠落しているのではないでしょうか。これは、僕の資料の見落としであることを祈っています。

最後に、こうしたホテルコンドミニアムの一つの事例として、かつて泉郷が分譲した「ホテルアンビエント苗場」の現況について、YouTuber・ブロガーの吉川祐介さんの動画を紹介します。

3 comments

  1. 今回紹介された吉川祐介さんがゲストで登場し会員制リゾート(湯沢町のエクストラクラブ岩原)について語る動画があります。ここで提起されている問題は深刻であり東急HVCの会員もエクシブの会員も人ごとではありません。例えば閉鎖されたリゾーピア箱根の区分所有者はリゾトラ社の対応に納得しているのでしょうか。自分のホテルを使うことができずに固定資産税だけを払っている状態に満足しているのでしょうか。動画はリゾマン研究所。
    https://www.youtube.com/watch?v=gmCrxxgmKKY

  2. ホテルコンドに話を戻すとホテル運営会社が東急じゃない点がオーナーにとっての最大のリスクです。ホテルの利益が上がらず運営会社が手を引くリスクは無視できないと思います。売ったら終わりで後は知らないというスタイルではトラブルが起きたら東急という大看板が毀損するのではないでしょうか。

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