オールドエクシブの稼働率は20年でどう変わったか

先日の記事で、リゾートトラストの会員権売上の勢いがピークアウトしたことを、同社の投資家向けデータから明らかにしました。潮目が変わったのであれば、少し過去を振り返って「老朽化」というテーマに目を向けてみませんか。今日は20年以上前の有価証券報告書が入手できたので、そこから当時のエクシブの客室稼働率を拾って、20年間の変動を見てみます。

20年前のエクシブは通年で6割の稼働率

今回入手できたのは、1999年4月〜2000年3月の稼働率データです。

当時、1999年3月にエクシブ蓼科が開業し、2000年11月に同社は東証一部上場を果たします。当時(2000年3月期)のエクシブの稼働率は、全体で58.8%でした。

開業初年度のエクシブ蓼科の稼働率は67.2%。最も人気があったのが開業3年目のエクシブ琵琶湖で、稼働率はちょうど70%。また、今では不人気施設の代表と思われているエクシブ淡路島の稼働率も、通年で69.9%もありました。

いろいろな定義があると思いますが、ここでは、エクシブ蓼科(1999年開業)までのエクシブ施設をオールドエクシブとくくって、それらホテルの現在の稼働率と当時を比較してみます。2020年3月期以降はコロナ禍の影響があるため、2019年3月期のデータを現在の稼働率の近似値として利用することにします。

オールドエクシブの稼働率は20年でこう変化した

グラフの青い点が2000年3月期(1999年4月〜2000年3月)、赤い点が2019年3月期(2018年4月〜2019年3月)です。数値はパーセントです。

当時最新の蓼科は開業20年を経て、当時の6割程度の稼働に落ちています(約7割の6割で4割強)。琵琶湖にも同様の傾向が見られます。

白浜については補足が必要です。2000年の段階で本館とアネックスがあり、今も同じです。グラフでは、室数を勘案して両館の合算値を求めて記載しています(現在のリゾートトラストは別館等を合算して稼働率を発表しているためです)。

白浜はもともとの稼働率が蓼科や琵琶湖ほど高くありませんでしたから、落ち込み幅としては当時の3割引きといった幅に収まっています。

落ち込みが最も激しいのが淡路島です。これは、近隣に大規模施設であるエクシブ鳴門が2001年以降、SV、SV2を含めて次々と開業した影響があります。

2000年当時の淡路島の稼働率が高いのも、開業前の鳴門オーナーの利用が影響していると見られます。当時の実力的には、グラフの左右にある「海のリゾート」、白浜や伊豆と同様に、5割台の稼働であったでしょう。

伊豆に関しては、20年を経て稼働率が5割から3割へと、4割の減少となりました。

稼働率は20年経つと3〜4割減る

ここまでを総合してみると、淡路島の特殊事例を例外とすれば、総じて当時の稼働率から3〜4割の減少が共通して見られます。

ここでは「会員制ホテルの稼働率は開業20年で3〜4割減」と仮説を立てておきましょう。開業時に7割の稼働率があれば、20年後に4〜5割まで落ちる、ということです。

ただしこれは、会員制ホテルチェーンとして理想的な経営が行われていた、という追い風の中での数値です。リゾートトラストの場合、絶えず新規開発が行われ、絶えず新規会員が供給されて、チェーン全体でダメになる、ということがありませんでした(これは観光開発史上、前例のない偉業です)。

それ以外の3つの施設は参考事例です。

理由は、鳥羽、山中湖、軽井沢には、その後いずれも鳥羽別邸やサンクチュアリ・ヴィラ、軽井沢パセオといった新規販売が敷地内もしくは隣地で行われ、それら新設ホテルの稼働もデータに含まれているためです(リゾートトラストはこうした隣り合ったホテルを別々に数値発表していません)。

これらの3地域については、新規販売によるテコ入れの結果、数値の落ち込みが1〜2割に抑えられています。

「チェーン全体が高級」という設定には永続性がない

通常のリゾートホテルでは、20〜30年も経つとリブランドして、ホテル自体の位置づけを変化させることで、市場に適応させるのが普通です。しかし、会員制リゾートホテルの場合には、追加投資してリブランドするということが、商品の設計上不可能です。

オールドエクシブの場合、新規会員権の性格に引っ張られて、チェーン全体(この場合はエクシブ全体を指しています)としては、全体で高級化している、というストーリーとなっています。利用価格はかなり統一されていて、稼働率(つまり人気)に応じて安く利用できるというわけではありません。

しかしこの稼働率に現れているように、ホテルが古くなれば魅力が低下して会員は利用を避けていきます。会員制ホテルでは大規模リニューアルのような追加投資が不可能である以上、チェーン全体で高級であるというストーリーに永続性をもたせることには無理があります。

コロナ禍で盛り上がったリゾート会員権ですが、こうしたサステナビリティの面についても、運営会社はもっと積極的に会員とコミュニケーションをしてほしいと思います。同社の体力に余裕があるうちに、老朽化した施設のあり方について道を示すべきです。

9 comments

  1. エクシブをよく利用させて頂いています
    ドギールームはなかなか空きがありません
    エクシブ、サンメンバーズのドギールームを
    増やし、稼働率向上を期待します

  2. ドギーズルームを目当てに購入したのですが、占有日に休みを取れなければ、ほとんど取れません。もう少し増設してもらいたいと思います。
    また鳥羽別邸の会員ですが、これまた占有日を逃したからもありますがここ3年予約が取れたことがなく、本館かアネックスしか予約が取れません。
    どうしたものか。。

  3. 東急HCの稼働率についてはリゾートボーイさんも以前触れていらっしゃいましたが、コロナ前の軽井沢&VIALA(塩沢)開業前の記者会見で「18年度のハーヴェストクラブ全体稼働率は65.8%に到達する見込み」と発表しています。東急も築20年を超えた古い施設が多いのでこの数字は意外でした。
    ところで塩沢ハーベストの隣に建設中の「VIALA軽井沢Retreat」の案内が届きました。予定通りの案内開始ですので鬼怒川渓翠の販売は順調なようです。Retreatのお値段は渓翠+200万円くらいで強気の設定です。

  4. 淡路島エクシブにスパを作って頂きたいです❗

  5. 吉良さん、カズさん、佐藤さん、いらっしゃいませ。ざりさん、コメントありがとうございます。

    ご指摘いただいたドギー関係は、今後の成長分野であると長年考えられていますが、リゾートトラストは中途半端な対応にとどまっているような感じがしますね。ニーズはあるけれども、ペットに否定的なお客さんも当然いますから、それらのバランスをどう取るか、というところに、スパッとした回答は出ていないですね。

    セラヴィなんてホテルアンビエント伊豆高原の本館の方まで「わんわんパラダイス」にしてしまって(アンビエントは伊豆高原に2つあって、わんパラはエクシブ伊豆のそばの旧アンビエント伊豆高原コンドミニアムだけでした)、そうしたニーズを吸収しているように見えます。

    あれ、浜名湖の「さざなみ館」まで今はわんパラなのか…。同社は徹底していますね。ちょっと脱線してセラヴィの話をしますね。

    高山のわんパラはかつて「ヴィラ高山」と言って、規模は小さいながらも本格山岳リゾートの重厚さを持ったホテルで、僕も一度行ってみたいと思っていたところ、早期にわんパラ化してしまいました(ですから行ったことがありません)。

    それは2005年のことでしたが、会員制リゾートホテルの施設の方針変更は、それに賛成しない会員も当然いますから、けっこう難しい問題だと、当時思ったものです。

    そんな過去の事例を振り返ると、例えばオールドエクシブのどこかが稼働率が不振だからと行って、わんこ連れ向けにリニューアル、というのも、現状の好調に見えるリゾートトラストでは、困難だろうなと思います。

    セラヴィは一度破綻しているし(泉郷から数えると2回も破綻している)、多くは共有制ではありませんからいろいろな改革ができる体質で、もともと会員制だったホテルを不人気な順にわんパラにするという再生モデルを実践できているわけですが…。

    全国のわんパラ | 【公式】愛犬・ペットと泊まれる宿|ペットホテル宿泊はわんわんパラダイス

    この話(会員制+不人気+ペット対応)はけっこう深いですね。

  6. resortboyさま

    私は、resortboyさんや舟橋さんのブログを読んで、昨年セラヴィリゾートの会員になりました。夏、1、2週間とか、1か月くらい、愛犬と涼しい所でのんびりしたかったのです。
    今のところ、安曇野も蓼科も八ヶ岳も、コテージは清潔で、レストランのお食事も美味しかったです。
    ワンズリゾートは、山中湖も城ヶ崎海岸も、快適でした。
    エクシブとは、いろいろな点でレベルが違うと思いますが、私は、愛犬家として満足しています。

  7. クッキーママさん、コメントありがとうございます。

    改めてセラヴィの会員向けページを(表紙だけ)見てみましたが、わんパラに加えて上位ブランドのワンズリゾートがあり、愛犬家向けにシフトすることで同社は「居場所」を見つけることに成功したんですね。Twitterを見てもそのような印象があります。

    セラヴィリゾート泉郷(@izumigo_hotel)さん / Twitter

    一方で、湯快リゾートとの提携も果たしたんですね。そうすることで、わんこシフトのバランスを取っているということなのかな。

  8. 浜名湖予約です。ゲートウェイプラン(1ドリンク付)で予約していましたが、初夏を感じるスペシャリティパッケージはフリードリンク付なので変更しました。
    私はタイミングが合わず静岡県民割引が使えませんでしたが…
    オールドエクシブは使いこなすとお値打ちに楽しめますね。
    鮎の塩焼き追加でいただいてました。

  9. ジューシーママさん、これ、すっごいお得ですね。でも今からでは間に合わないか…。

    初夏を感じるスペシャリティパッケージ|宿泊プラン|グランドエクシブ浜名湖

    12,500円(から)で2食付き、アルコール飲み放題とは魅力的だ…。しかも全グレードで提供されている。

    浜名湖が「オールドエクシブ」なのかは議論が分かれそうですね。僕がエクシブを買った年に開業したホテルなので、僕にはいまだにキラキラエクシブです。

    でも、最近お求めになった方には、離宮以外はぜんぶオールドエクシブ、という感じなのかなぁ。

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