リゾート会員権における専有と共有の実際

皆さん、五輪開幕の4連休をいかがお過ごしですか。残念なことに過去最大の感染拡大局面にあり、自分は五輪会場エリアの中に住んでいるので、電車で都内のホテルに出かけた程度であとは自宅でおとなしくしています。自宅周辺は住民でない方の往来も多いし、日本中のおまわりさんが大集合しているので、あまり出かける気にならないです。ばーんと遠くに行ければいいんですが、この状況ではね…。

というわけで、思いついてリゾート資料の蔵を開けて、エクシブの契約書類を確認したりしていました(謎)。それで少し思ったことがあるので、皆さんと共有してみたいと思います。

このサイトにお越しの方々にいまさら言うまでもないことですが、エクシブやベイコート倶楽部は共有型のリゾート会員権ですから、会員は客室を14分の1とか28分の1などといった単位で所有しています。

共有の基礎となる単位は今やいろいろで、特定の客室、特定のフロアや棟、グレード全体、などがあります。それら単位ごとの専有面積を、会員は各自の持分に応じて共有しています。区分所有法で言う専有部分を共有しているので、僕のような素人(不動産の専門家ではないという意味)には理解が難しいところがあります。

客室以外の部分についてはどうでしょう。分譲マンションがそうであるように、基本的にはすべてが共有部分です。「え~、そうなの」という驚きの声が聞こえそうですが、例えば冒頭の写真のホテルフロント(レセプション)はマンションの玄関ホールと同様に、当然に共用部分であると解されているようです。

手元にエクシブ箱根離宮の重要事項説明書がありますが、それによると、フロントやエントランスホールに加えてラウンジも、当然に共用部分であると記載されています。ラウンジは会員とはいえ自由に使える場所ではありませんし、箱根離宮の場合はレストランやバーとして一般営業をしていますから、この取り扱いは行き過ぎな部分があると感じます。

ここで根拠となる法律を見てみましょう。区分所有法の第4条に共用部分についての定めがあります。

(共用部分)
第4条 数個の専有部分に通ずる廊下又は階段室その他構造上区分所有者の全員又はその一部の共用に供されるべき建物の部分は、区分所有権の目的とならないものとする。
2 第一条に規定する建物の部分及び附属の建物は、規約により共用部分とすることができる。この場合には、その旨の登記をしなければ、これをもつて第三者に対抗することができない。

この第1項は「法定共用部分」と言います。一般的には、構造上当然に共用部分となるものです。例えば廊下は所有権の目的にはできないので、法定共有部分となります。

第2項は「規約共用部分」と呼ばれているもので、所有権の目的となり得る部分(=専有部分)についても、規約で共用部分とすることができるとしています。

エクシブ箱根離宮を例に取ると、重要事項説明書には共有部分について、以下のように説明されています。

レストランの手配といった営業活動を行うためのスペースでもある「フロント」や、明らかな営業活動が行われている「ラウンジ」が法定共有部分として記載されているのには違和感があります。また、規約共用部分が数多く定義されているのですが、これのロジックが複雑です。

規約共有部分は以下のようにたくさんあります。スキャンの関係で2つの画像に分けて掲載します(そのため、中央の一部項目が重複しています)。

これら規約共有部分は「各区分所有者全員の共有」となるとされていて、さらにその規約共有部分を売主(リゾートトラスト)が無償で専有使用できるとされています。

従業員の事務室や飲食施設(カフェラウンジ&バーと記載)など、普通に考えて営業専用であると解されるものが含まれているように思います。「スパ(浴場施設)」についても、「そこも共有なのか」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。

規約共有部分については、普通のマンションでの典型的な例として「集会室」があります。集会室は所有権の目的(=専有部分)となり得るものの、規約で共用部分とする、ということで、これは誰しも納得が行く事例です。

エクシブにおける規約共有部分の論理はもう1ひねりされているようです。「事務室」といった専有部分となり得る部分を規約で共有とみなして、さらにそれを無償で専有利用しています。つまり、一般的には専有部分として所有権を持つべき部分を、規約共有とした上で専有使用する、というロジックです。マンションなどで類似のケースはあるのでしょうか(詳しい方がいらしたら教えてください)。

最後に、エクシブ箱根離宮の売主専有部分です。逆に言うと、これと客室以外の部分はすべて持分に応じた共有になっているということになります。

このように、リゾート会員権を購入するということは(ここではエクシブ箱根離宮を例に取った場合ですが)、客室以外にもかなり多くの部分を共有という形で所有していることになります。言い方を変えると、会員権によるホテル建設においては、客室以外の部分の建設費も、相当な部分、会員権販売によって早期回収することができる(その後の租税公課などの負担も同様)、というビジネスモデルになっています。

個人的な感想は、かなりイケイケだな、というものです。今後、専門家(学者さんや弁護士さんなど)を交えて、議論してみたい話題です。

2 comments

  1. こんにちは。興味深い記事をありがとうございます。せっかくなので、少し乗っからせてください。。
    区分所有法では、「法定共用部分」とは基本的に「専有部分以外の建物の部分」を指すので、これを理解するには、まず、専有部分の用語の定義が必要と考えます。
    簡単に言いますと、専有部分とは、一棟の建物内に存する区分された独立の部分(≒部屋)を言うのであって、これ以外は、原則、法定共用部分に当たると考えます。ラウンジやレセプションなどは、その用途や利用性に着目して決するのではなく、他のスペースとの独立性の有無や位置的・空間的な判断等で、法定共用部分とされるのではないでしょうか。
    また、専有部分の要件を満たす空間についても、建築と同時に、公正証書で場所を指定をすることで、当初売主(つまりリゾートトラスト)の判断でこれらを自由に共用部分(規約共用部分)とすることができます。ショップやゲームセンター等はその典型でしょうが、指定にあたってどのような判断基準があったのか、興味あります。
    なお、露天(三日月の湯)なんかは、そもそも区分所有法の対象外のため、これは専有部分でもなければ共用部分でもなく、所有権の帰属は謎です(もしかしたら規約に書いてあるのかもしれませんがよく読んでいません。。)。
    さらに、箱根離宮は敷地(宮ノ下112番2 外)の権利関係も極めて複雑で、一体、現オーナーたちはどのような割合で敷地を所有(共有)しているのか、もはや理解不能ですね(^^;)

  2. masaさん、コメントありがとうございます。専門的なご理解のある方からコメントいただくと、僕の記事の不足している部分が明確になってとても助かります。先に専有部分の定義を理解しておかないと、共有部分についてはわからないわけですね。おかげさまで、リゾートトラストの論理の裏にあるものも推測できるようになりました。

    それで、実際のところを知りたくて、登記簿を取り寄せたりしています。ただ、1つのエクシブでも100近い登記簿を閲覧しないと全容がわからないので(まぁ5万円あれば解析できるっていうことなんですが)、誰かスポンサーを得たらトライしてみようと思います。

    取り寄せた登記簿からわかったことは、次回8月21日のKASAの会にて紹介する予定です。

    リゾートトラストが意図しているわけではないと思いますが、この区分所有権の件のように、商品の本質が「わかりにくい」ということは、高額商品で利益を出す定番の方程式でもあります。たぶん誰も研究していないと思うので、シェアリングビジネスという観点からも、継続的に見ていきたいと思っています。

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