前回に引き続いて、このほど、マイステイズ・ホテル・マネジメントの傘下に入ったセラヴィリゾート泉郷のホテル群について、それらが「どこから来たのか」を見ていきます。前回は「わんわん」関係をチェックしましたので、今回は大型ホテルや、わんわんでない貸別荘「AMBIENT」について解説します。
AMBIENT(アンビエント)のブランドになっているものは、全584室で、セラヴィリゾート泉郷の全1,153室のおよそ半分です。すべてが旧 泉郷(設立当初の社名は「八ヶ岳中央観光」)によるもので、貸別荘と大型ホテルです。基本コンセプトは分譲であり、貸別荘であり、さらにはペイバック型です。
つまり、部屋ごとにオーナーがいて、それを泉郷が借り上げて運用するという、なんだか今になって、またもてはやされているシステム(ただしこちらは40年も前の話)です。人口減少時代にうまくいくわけない、ということが、この泉郷の歴史を通じて、よくわかるはずです。
泉郷の歴史を語っているとキリがないので、施設ごとの概観に留めることとして、今日はサクッと済ませたいと思います。ではレッツゴー(三匹)。
AMBIENT伊豆高原コンドミニアム 41室
前回、旧 泉郷プラザホテルであった「伊豆高原わんわんパラダイスホテル」といっしょに紹介した「伊豆高原わんわんパラダイス コンドミニアム」ですが、実はわんわんとAMBIENTのダブルブランドになっています(冒頭の写真)。
歴史を紐解いてみましたところ、コンドミニアムとして当初、80室が分譲されていました。その分が「わんわんパラダイス コンドミニアム」の80室に等しいので、もともと1室分譲をした側の建物がわんわんになった、ということのようです。現地を訪ねると、写真のように建物としては2つあり、ブランド別に分かれています。
参考までに、1994年の泉郷の広告画像を掲載しておきます(以下、広告引用部分はすべて同年のものです)。
AMBIENT八ヶ岳コテージ 140室
これがオリジナルの八ヶ岳中央観光の貸別荘です。わんわん利用にOKしない別荘オーナーもいるので、それがAMBIENTブランドに分類されているのだと思われます。
全盛期には700棟を超える貸別荘が八ヶ岳南麓にありました。
現在分譲中のサンクチュアリコート八ヶ岳はその10分の1に過ぎません。4~50年経ったら木造建築がどうなるのかは、だいたい同じ場所にある泉郷が全部を体現していますので、サンクチュアリコート八ヶ岳を買ってしまった人は、今の現地を見に行ったらいいと思います。その期間の半分くらいは日本が史上最高にいい時期でありました。自ずと事情がよくわかるでしょう。
これは1981年の八ヶ岳中央観光の求人広告ですが、これを見て、44年という時間の流れを感じ取っていただければと思います。価値観の変化は時の流れに抗えません。
旧 泉郷がつぶれ、旧セラヴィリゾート泉郷もつぶれ、コロナ禍でファンドに売られ、そして今回、マイステイズ傘下になりました。オリジナルの契約が守られているはずもないでしょう。
AMBIENT安曇野ホテル 200室 / AMBIENT安曇野コテージ 40室
1992年12月に泉郷プラザホテル安曇野として開業したのが、現AMBIENT安曇野ホテルです。
このホテルは、泉郷として小口分譲に踏み切った最初のホテルです。八ヶ岳中央観光は貸別荘からはじまりましたから、伊豆高原までは1室単位で分譲していました。しかし、バブルが絶好調になり物件価格が上がってしまって売りづらくなり、小口分譲に切り替えます。
このホテルは全203室でしたが、室単位で販売されたのは74室でした。バブル崩壊で売りづらかったのでしょう。後の129室とパブリック部分を700口に小口化して会員権を刷ります。
これは民法上の任意組合として、現物出資の形で法的問題がクリアされました。泥棒猫であるあの司法書士が詳しい、不特法がまだない時代のソリューションです。
会員権(むしろ投資案件として販売されていた)は1口1,500万円。家賃は4%で、うち2割が修繕積立金という契約でした。
コテージのことはよく知りません。
AMBIENT蓼科ホテル 163室
僕も何度も利用した思い出のホテルです。これも安曇野と同時期で、開業は1993年7月です。同様に、遅れてきたガラ権ホテルという感じですが、とんでもなく不便な女神湖畔にあって、到着さえしてしまえば真夏でもひんやり。最高の立地です。
この時代の泉郷は、貸別荘という原点からだんだんと迷走していて、預託金制の泉郷ベストクラブ以外にも、投資目的風味を前面にして以下のような会員権を販売していました。これらの権利は一体いま、どのようになっているのでしょうか。
アンビエント(旧 泉郷プラザホテル)には、「ホテルアンビエント苗場(苗場泉郷コンドミニアムホテル)」(1990年11月、162室)のように会社更生手続の中で切り捨てられ、廃墟化しているホテルもあるのです。
(参考)セラヴィリゾート泉郷、11月末にも更生手続き完了 - 日本経済新聞
このように「本当に終わってしまった案件」に関する現状報告は僕の守備範囲ではありません。興味のある方は他の報道でご覧いただければと思いますが、当事者ではない方々には、あまり騒がないでいただけないかと思っています。会員や当事者でないのなら結局は興味本位になるし、他のガラ権の終わりを早める悪影響になってしまう局面に、現在はあります。どうぞご配慮ください。
アルティア鳥羽と清里高原富士屋ホテルの話は、また今度にします。最後に、アルティア鳥羽別館を経てわんわんパラダイスホテルを生み出した、泉郷プラザホテル鳥羽の広告で締めます。
ここまで読まれた方、お疲れさまでした。ぜひまた次回もお読みください。