セラヴィリゾート泉郷のわんわんホテル群

セラヴィリゾート泉郷はこの2月から、ホテル運営客室数で業界4位のマイステイズ・ホテル・グループの傘下に入りました。マイステイズのホテル事業者としての特色や、もともと2020年に別のファンドに買収されていたことなど、これまでの経緯はまた別の記事で書くことにして、今日と次回とで、セラヴィリゾート泉郷のホテル群について概観してみようと思います。

と言いますのも、けっこう今回の経営変更は僕にとってショックなことで、ここ数日、ずっと考え込んでいるのです。

2020年に(知らないうちに)元の株主がファンドに会社をまるごと売却していたのを知ったのもショックでしたし、今回「ファンドっぽいホテル事業者の一部門」になったということも、同社が人気リゾートクラブの一角とみなされていることから、どう理解していいのか、まだ混乱しています。

ともあれ、公式発表は以下からそれぞれをご覧ください。

(マイステイズ)プレスリリース | 株式会社マイステイズ・ホテル・マネジメント | 企業サイト
(セラヴィリゾート泉郷)株式会社セラヴィリゾート泉郷は、ホテル運営客室数が業界4位のマイステイズ・ホテル・グループに加わりました | 【公式】セラヴィリゾート泉郷(いずみごう)

そのホテルはどこから?

今日は、セラヴィリゾート泉郷の現在のホテルラインナップから、それが「どこから来たのか」を説明しておきたいと思います。

同社は全国に20ホテル、1,153室と大規模です。何度も経営破綻していますがその度に立ち上がり、かえって会員の満足度が上がって「強く」なっていることから、ガラ権界のロッキー・バルボアの異名を取ります(ウソです)。

まず、同社のホテルラインナップは、現在3つに分類されています。それは「AMBIENT」「清里・鳥羽」「愛犬リゾート」です。なぜこの分類なのかは、今回のマイステイズ入りと関係があるように感じられます。

同社の現在の最大の売りは、ペット(犬)対応の充実度にあります。今日は主力の「愛犬リゾート」を概観します。わんわん関係は以下の444室あり、全1,153室のおよそ4割。20施設のうち13施設。施設数は多いですが、こぶり(平均34室)で、買収案件が多いです。

伊豆高原わんわんパラダイス 145室

・伊豆高原わんわんパラダイス コンドミニアム 80室
・伊豆高原わんわんパラダイスホテル 52室
・伊豆高原わんわんパラダイスコテージ 13室

これら3つは近くにあるのでまとめておきます。コンドミニアムはエクシブ伊豆のすぐ上にあって、ホテルとコテージはまた別の近くの場所にあります。いずれも、オリジナルの八ヶ岳中央観光時代の計画です。コテージは1984年から、ホテルは1986年開業です。コンドミニアムは1989年開業で、その年に経営統合で「泉郷」が誕生します。

これらは全部、泉郷ベストクラブの施設でした。純粋なガラ権開発で(預託金制。旧泉郷の破綻によってほぼ全額減殺済)、コンドミニアムは分譲しているので、後日、調査の上で補足します。

Wan’s Resort 城ケ崎海岸 28室

ここは旅館を買い取ってリニューアルした施設です。以前の旅館は以下です。2018年にWan’s Resortははじまりましたので、ガラ権由来ではありません。

(参考)伊豆高原 五景館 高陽楼 お得に宿泊予約-伊東 | Trip.com

浜名湖わんわんパラダイスホテル 43室

話すと長いのですが、現在のセラヴィリゾート泉郷がちゃんと存続しているのは、旧セラヴィリゾートがこの旅館を買い取ったからと言っても過言ではありません。かつての「浜名湖グランドホテル さざなみ館」です。

2001年、倒産により旧セラヴィの元へ。ガラ権由来ではないものの、その後の旧セラヴィリゾート破綻によって「ハーフガラ権」的な位置付けとなります(説明が雑でごめんね)。

和風旅館の三代目は家業の旅館を潰しましたが、新生セラヴィリゾート泉郷の経営者として、優良ガラ権メーカーとして更生計画を大幅に短縮して達成する原動力になりました。昔の資料は以下。

(参考)浜名湖グランドホテル さざなみ館/ハローナビしずおか 静岡県観光情報

ここは老舗ベースだけあって、なかなかいいところなんですよ。冒頭の写真はここのレセプションです。

八ヶ岳わんわんパラダイスコテージ 32室

これはまごうことなき、八ヶ岳中央観光=泉郷のオリジンです。話すと長いので今日は割愛。

Wan’s Resort 山中湖 24室

ここは大手介護事業者が介護対応の宿としてオープンしたものの、うまく行かなかったのですぐに売却したホテルです。元の名称は「サポートの宿 山中湖 INN」。開業時のデータは以下をどうぞ。

(公式)「サポートの宿 山中湖INN」2012年9月29日(土)グランドオープンに向け、本日プレオープン! | 社員寮から介護サービスまで人のぬくもりを伝える企業 リエイ

蓼科わんわんパラダイスコテージ 23室 / 安曇野わんわんパラダイスコテージ 13室

こちらも泉郷由来の、オリジンとなる貸別荘事業です。八ヶ岳同様に説明省略。

高山わんわんパラダイス ホテル&コテージ 41室

これはなかなか味わい深い話でして、2001年に旧セラヴィが買い取ったホテルです。

現地高山の有名な木工業者が、上高地帝国ホテルを模して作った最高級ホテルでしたが、場所的に集客がどうにもならず、旧セラヴィも「ホテルセラヴィリゾートヴィラ高山」として引き継ぐも持て余してしまいます。その頃、鳥羽で苦し紛れに八ヶ岳を真似てスタートした「わんわんホテル」に手応えを得た旧セラヴィリゾート泉郷が、あろうことかこの山岳リゾートをわんわんにしてしまいます。

もう20年も前、2005年11月13日の話です。当時、エクシブ2年生でブログを開始したばかりの僕は、そのトランジションから来る会員の叫びを深く記憶しています。

でも、その苦し紛れがあったから、今のセラヴィリゾート泉郷があるのです。

鳥羽わんわんパラダイスホテル 57室

そのわんわんホテル第一弾がここです(旧 泉郷におけるわんわん事業の発祥は八ヶ岳コテージ)。これは旧泉郷プラザホテル鳥羽です。すぐ近くに、バブル豪華ホテルである地上社のアルティア鳥羽を買い取ったので、どうしようかと思案の末、わんわん事業がスタートします。以下の記事で詳説。

名古屋のマンデベが築いた「至高の国」の数奇な運命

松阪わんわんパラダイス 森のホテル スメール 22室

これも比較的最近の買収案件。2016年4月1日から、わんわんパラダイスになったホテルで、旧名は「香肌峡温泉 森のホテル スメール」と言いました。現在も同名を残し、わんわんとのダブルブランドで営業中です。

以前の公式サイトもまだ残っています。

(参考)森のホテル スメール|松阪市にある「黄金湯」が自慢の天然温泉

南紀白浜わんわんパラダイスホテル 16室

今日はこれで最後です(疲れた)。これは最近の話でして(2024年8月1日開業)、元は三菱電機関係の保養所です。旧名称は「紀望館」です。

(公式)紀望館 | 全国の営業拠点|メルコリゾートサービス 株式会社

今日はわんわん関係だけで力尽きたので、他のブランドについて、また続きを書きます。

その施設は誰が作ったのか。その流れ、をちゃんと理解した上で、今回の外資系ファンド(というか、マイステイズ)への売払いについて精査したいと思います。

だって、もともとガラ権だったのであれば、建築のためのカネを出したのは会員ですからね。それが、会員の権利(預託金など)はほとんとゼロに減殺されて、外資の金儲けの装置になるのであれば、ちょっと許せないでしょう?

でも、それが今、そしてこれからの、「ガラ権の風景」なんですよ。

7 comments

  1. resortboyさん、渾身のレポート「セラヴィリゾート泉郷のわんわんホテル群」ありがとうございました。そして、驚きました。「セラヴィリゾート、お前もか~」という感じです。何度も書いていますが、セラヴィの「ホテルアンビエント蓼科」が私の(今でも)定宿で毎年8月に泊まっています。

    私は子供が2人いますが、長男夫婦(+孫2人)、長女夫婦(+孫2人)、そして我々ジジババ2人、合計10名で、ホテル蓼科に3部屋(2連泊)予約して、家族の結束の場にしています。今年も既に予約済です。

    特筆は会員料金の安さで、夏のハイシーズンでも1泊2食付き9700円(税・サ込)です。しかも夕食はアルコール飲み放題付きバイキングプラン!エクシブのディナービュッフェ1万円と比較すると天地の差があります。注:一般料金は2倍以上です。

    部屋はフルキッチン付きの「デラックス和洋室(84平米)」です。独立した洋室(ツインベッド)と和室、そして窓側に面した広々としたリビング・ダイニングルームがあります。このホテルが私のリゾートライフの拠点でした。
    参考までに、その軌跡をアップしておきます。
    http://www.e-funahashi.jp/japan/cest/index.htm

    想い出深いセラヴィ!破綻したセラヴィを見事に再生させた「㈱セラヴィリゾート泉郷 代表取締役社長 小西 滋 氏」の社長就任インタビューをアップしておきます。

    「私はどのような業種も相手の気持ちにより添っていくことがビジネス成功の秘訣だと考えています。儲けてやろうと思えばお客さまに拒絶され、その人をよろこばせたいと思えばお金を使ってくれるのです。イソップ寓話の「北風と太陽」と同じですね。この話は私の座右の銘といってもよいでしょう。」

    https://www.hoteresonline.com/articles/3166?p=1

    マイステイズ傘下になっても小西さんが経営陣に残り、彼の「北風と太陽」ポリシーが発揮されることを切に望みます。小西さんが排除されたらセラヴィは終わりです。この後の展開はresortboyさんにおまかせします。

  2. funasanへ。残念ながら小西滋さんは2020年11月に退任されています。そのタイミングは、「日本企業成長投資」というプライベートエクイティファンドに、セラヴィリゾート泉郷の全株式が売却されたことによります。

    投資先企業 | 日本企業成長投資 | Nippon Investment Company

    その後、ファンドから人材が業務改善のために送り込まれました。例えば以下の方とか。

    プロ野球楽天でテクノロジー活用 CTOとして目指す先 | NIKKEIリスキリング

    今回は、フーリハン・ローキーというアメリカの投資銀行が仲介して、ファンドからファンドっぽいホテルチェーンであるところのマイステイズに全株が売却され、ファンドとしてはEXITとなりました。

    会社概要|フーリハン・ローキー株式会社

    これは、今の日本のガラ権、つまり「終わったシステム」に、外資または金融の手法が入ることで草刈り場となりつつある、ひとつの事例であるように思われます。「リゾートクラブ」「会員制」などと、のんきな夢を見ている場合ではないのです。そんな時代は終わりました。

    もう少し取材をして、この件はちゃんと書きますが、少し時間をくださいね。

    ガラ権では別のところでも知らないうちに社長が消えています。「消えた社長シリーズ」を連載しなければ…。

  3. ご無沙汰しております。
    驚いたような、納得のいくようなセラヴィリゾート泉郷かな?と思いました。
    経営変更とありますが、これは経営破綻して売却されたということなのでしょうか?

  4. MASAさん、こんにちは。株主が2020年にファンドに変わって、今回、その全部が売却されて、セラヴィの代表者は山本俊祐さんというマイステイズのトップに変わったということでして、経営破綻ではありません。

    現在のトップは以下の方です。

    2024年2月15日 放送 マイステイズ・ホテル・マネジメント会長 山本俊祐 (やまもと・しゅんすけ)氏 |カンブリア宮殿: テレビ東京

    セラヴィリゾート泉郷はもはやガラ権メーカーというか、新規でホテルを作ることもありませんし、リゾートクラブに必須のメンバー間の何かもなくなって、「一般ホテルを割引してくれるクラブ」になったので、結果的にそれが一番いい、という方はいらっしゃると思います。

    この辺の話は、もう少しデータを集めて、本記事として書こうと思っています。

  5. resort boyさん
    詳細なセラヴィリゾートのレポートありがとうございます。
    小生、セラヴィの会員ですが今のところ年会費、宿泊料金変更などの報告はありません。小生はワンワンパラダイス目的で会員になり、とても楽しませて貰っており、セラヴィには満足しています。最近、リゾートトラストの方がSCC琵琶湖開業、法人宿泊客増加などの影響もあるのかドギールームの予約が極めて取りづらくなっており困っています。今までほぼ間違いなく取れていたホームの別邸でさえ交換待ち不成立が続いており、ホテルには申し訳ないのですが、同じ日にちにSCC琵琶湖、エクシブ、サンメンバーズ、東急、セラヴィ全てのホテルに予約を入れたりしています。SCC琵琶湖、エクシブは交換待ち不成立を見越して予約しています。その点、セラヴィは早い時期から予約が確定するのでとてもありがたくやはり小生には必要です。今後もセラヴィが続く限りは会員権を持ち続けようと思っています。

  6. RCさん、会員でいらっしゃるお立場からのコメント、ありがとうございました。

    まず、リゾートトラストの予約が取りづらくなったという件。サンクチュアリコートでは1室を36分割して、主に法人の福利厚生向けに販売していますので、1室の仮想的な分割は100にも及ぶケースも考えられます。人気は特定の日取りや施設に集中するので、どんどんストレスがたまる方向に進みそうですが、これはリゾートトラストの制度設計の問題で、避けようがありません。

    本質的にはハーヴェストクラブのようなホーム主義で解決されるべき問題だと思いますが、販売の方針がそうなっていないところに最大の問題があると思います。

    規模が大きくなったので会員の不満を解消する新システムが必要ですが、その予定は同社に今のところありません(新規を買うなどの契約外の場外乱闘的なものを除けば)。

    セラヴィについては、僕に聞こえてくる範囲では会員の皆さんの満足度は高く、経営的な問題が今回、マイステイズ入りで解消されるのであれば、「一般ホテルの割引クラブ」としての安定感が増すのかもしれません。

    はからずもリゾートトラストとセラヴィの比較になりましたが、どちらももはやリゾートクラブとしての本来的な姿から逸脱しているように思われます。その意味では東急ハーヴェストクラブの制度設計はスッキリしていると感じられます。それが時代に合っているかは別問題です。

    次の記事で書こうと思っていたことをいろいろ書いてしまったのですが、いい機会なので再度ちゃんとまとめようかと思っています。

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