リゾート会員権論 4「エクシブが起こした革命」

2020年12月に東京で開催した勉強会の講演録の4回目です。今回からの数回は、現代のリゾート会員権企業の代表格である、リゾートトラスト(エクシブ、ベイコート倶楽部)と東急不動産(東急ハーヴェストクラブ)の歴史を概観し、その成長過程について見ていきます。両社を対比することで、業界の発展要因と、現在の立ち位置が理解できることと思います。

ここまでの記事はこちらです。よろしければ最初から順にお読みください。

(第1回)リゾート会員権論 1「はじめに・基本的性質」
(第2回)リゾート会員権論 2「預託金制と共有制」
(第3回)リゾート会員権論 3「リゾートブーム・会員権利用の2つの軸」

resortboy:リゾートトラストの主力商品であるエクシブの第一弾施設、「エクシブ鳥羽」が開業したのは、1987年です。築後30年以上経つ今見ても、なかなかの威容を誇る施設で、会員制リゾートホテルとしてそれまでにない豪華なホテル、という路線でエクシブはスタートしました。

一方の東急ハーヴェストクラブの第一弾ホテル「東急ハーヴェストクラブ蓼科」(1988年)というのは、時代背景もあってやはり豪華ではあるんですが、少し趣きが異なります。

これ、東急リゾートタウン蓼科という東急が開発した大別荘地の一番端っこの(スライド右下)、一番景色の良いバーンと開けたところに、彼らの会員権事業のフラッグシップとして作ったわけです。つまり、背景にある概念として、名実ともに「別荘地」という文化の中に生まれてきたんです。

Photo by resortboy

(写真は東急リゾートタウン蓼科から望む八ヶ岳連峰)

それで、こちらのエクシブ鳥羽に行ったことがある方は?(会場半数挙手) 別に別荘地というわけではなく、特に周りには何もなくて、こつ然と現れたシーサイドリゾートという感じです。

こうした第一弾の立地を見ても、その後の両社の展開が既に示されているところがあるんですが、それでもエクシブ鳥羽を見るとコテージを沢山作ったりして、実は別荘文化というものからスタートしていたことが見て取れると思います。

Photo by resortboy

(注:エクシブ第2弾施設のエクシブ伊豆においてもコテージという概念が残っているが、第3弾施設のエクシブ軽井沢以降は失われた)

ではこれから、リゾートトラストの1980年代~90年代の話をしていきます。ちょっと愛が深すぎて、くわしく話すといつまでも終わらないので、すごく飛ばして行きますのでよろしくお願いします。

これは、エクシブの開発順に立地を書いたものです(アネックスなどの別棟を除く)。鳥羽、伊豆、軽井沢、白浜、淡路島、山中湖、琵琶湖、蓼科。これらが1984年以降、1990年代までにリゾートトラストが建てたホテル(エクシブ)です。

これを見ると、シーサイドに作ったか、高原の別荘地に作ったか、基本的にその2種類しかありません。近年の同社の販売物件の立地とはまったく異なっています。

彼らの飛躍を支えたエクシブというビジネスモデルは、大発明だったと思います。どれも観光地のリゾートホテルとして考えると、かなり不便なところにあるんですね。

例えば、エクシブ蓼科は山の奥の別荘地にあって、最寄り駅から送迎バスで40分もかかります。不便なところに超豪華施設という、それまでにない(いい意味で)クレイジーな事業で成功しました。会員制で建築費用は早期に回収してしまう上に、先行投資して確保しなければならない土地も、一般的な観光地と比較すればかなり安いわけです。

これは後で紹介する東急の事業展開とはかなり違います。

今日は時間がなくて、リゾートトラストのホテルを1つひとつ紹介することができないのですが、彼らの事業の特色を示している事例を2つご紹介します。

これはGoogleマップの空撮画像を元に僕が作ったものです。うまく比較できるように、撮影角度をそろえるように加工しています。

(Googleマップを元に筆者作成)

これ、左はエクシブ琵琶湖で、右はザ・リッツカールトン・ネイプルズというフロリダにあるリゾートホテルです。リッツカールトンの後ろ側にはゴルフ場が広がっていて、琵琶湖の方は田んぼです。でも、ホテルは両方とも海(湖)に面していて、この写真を見るとわかりますが、本当にもう「そっくり大賞」みたいなものです。

もっとすごいなと思ったのはこちらの東京ベイコート倶楽部という、江東区有明にあるホテルです。

右側はワイキキ・ランドマークという、オアフ島ワイキキにあるコンドミニアムです。東京ベイコートもランドマークも、発売のタイミングが悪くて当初は全然売れない大変な物件だったという共通点があります(東京ベイコート倶楽部はリーマンショックの翌年2008年に開業、ランドマークは1992年完成で日本のバブル崩壊後)。

(Googleマップを元に筆者作成)

すごいなと思ったのはですね、ランドマークは凱旋門のような本体ビルの横に、お店やオフィスが入って屋上にプールがある別棟がくっついているんですが、そのフォルムを再現するために、東京ベイコート倶楽部は会員制ホテルにわざわざビジネスホテル(ホテルトラスティ東京ベイサイド)をくっつけて建てて、形状を再現しているところです。

さらに言うと、ハワイの方は後ろにアラワイ運河というのが流れているんですが、東京の方には有明西運河があるんです。この運河と建物の角度などもかなり「寄せて」いて、やはりそっくり大賞です。巨額を投じてこうした模倣を行うというところは、本当にすごいと思います。

最近、YouTubeであまりテレビでは見かけないものまねの方を見たりして、とても面白いのですが、これを見るとそれに近いものを感じます。細かすぎて伝わらない、という「凄み」のある世界です。

他のホテルも紹介したいのですが、こうした海外の本格的名建築をモデルとして、ちょっと観光地から離れたところにドカンと豪華ホテルを建てて度肝を抜く、というのがリゾートトラストの発明だったわけです。僕たちのコミュニティでは、「オールドエクシブ」と呼ばれているホテル群ですよね。ここにリゾート会員権産業が現在まで発展していることにつながる、革命的な発明があったのではないかなと思います。

(注:ベイコート倶楽部は2008年開業ですが、企画されたのは2000ゼロ年代初頭で、後続のベイコート物件とは異なり、むしろオールドエクシブの系譜で作られた)

対する東急ハーヴェストクラブはどういう活動を当時していたかと言うと、比べてみると面白いのですが、80年代~90年代の東急はすごい勢いで会員制ホテルを作ってるんですね。

(続き)リゾート会員権論 5「バブルの破綻物件がビジネスを変えた」

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