2回に分けて、マリオットが積水ハウスと組んで、全国の「道の駅」にホテルを次々と開業していることについて、現時点でまとめておきます。本サイトは主にリゾートホテル、特に会員制のそれについて話題としていますが、立地選定において共通する部分があり、また現在の両社のやり方には開発手法としての新規性があります。
一方で、かつてのリゾートバブルとは違った意味で、開発が地域(自治体)とセットになっており、リゾート会員権(ガラ権)をより理解する上でも無視できません。それにリゾートトラストの開発手法と比較すると、「何から何まで正反対」となっていますので、このサイトらしく、そのことを意識しながら見ていきます。
道の駅ブランドではなかった
現在のところ、全国に29もの同じような中小規模ホテルが、わずか数年の間にできました。この「フェアフィールド・バイ・マリオット」は、道の駅専用ブランドというわけではなく、第1号は札幌(札幌東武ホテルがリブランド)、第2号は大阪難波(新築)であり、日本導入時においては一般の都市型ビジネスホテルのブランドでした。
しかし、3号以降の29ホテルはすべて道の駅にできたロードサイド型ホテルで、フェアフィールドはいつしか、特異なリゾートホテルチェーンとして増殖しました。
第3号の開業はコロナ禍の中の2020年10月。以来、怒涛の勢いで西日本を中心に全国展開していきます。まず第1期として、2020年10月から2022年3月までに、6府県15カ所で合計1,152室が開業します。
続いて第2期として、2022年春から2023年秋までに、8道県14カ所で合計1,184室を開業しました。合計29カ所で、全2,336室もあります。この間、わずかに3年です。
岐阜で現地取材しまして、冒頭の画像はその訪問先「フェアフィールド・バイ・マリオット・岐阜高山白川郷」です。この施設の詳細は次回以降に触れることにして、今回はこれらチェーンの概要について、その特異性をまとめておきます。
これは地方創生なのか
まず第一に、これらすべては「地方創生事業」として積水ハウスが主体となって事業を行っていることです。その上にブランドオペレーターとしてのマリオットが日本進出のアクセラレーターとする形で乗っかって、ブランドとして「フェアフィールド」をこのプロジェクトに割り当てた格好です。
(プロジェクト公式)TRIP BASE STYLE [トリップベーススタイル]
地方創生と言いながら、その柱となるのは、外資系ブランドとインバウンドのゲストです。この企画に地方自治体がどんどん手を挙げて出店が続々と決まったことに、このプロジェクトの最大のユニークネスがあります。
僕はこのようなビジネスを「地方創生」と呼ぶことには抵抗があります。事業主体は外資と大資本であり、資料をざっと見た範囲では、パートナー企業を見ても大企業ばかり。本当に地方の活性化につながっているのかは、検証が必要です。
自治体を巻き込んで
フェアフィールド自体は、上記のようにビジネスホテルのブランドとして日本に上陸しましたが、もともと海外では、小規模マーケット向けのホテルフォーマットとして展開しているものでした。現在、海外では同ブランドのフォーマットは約80室となっています。ブランド名はマリオット創業者のジョン・ウィラード(JW)が購入した農場「フェアフィールド」に由来することから、日本でのド田舎展開にマッチしたものと判断されたのだと推測しています。
プロジェクトが立ち上がったのは2018年11月で、開発発表には栃木県、岐阜県、三重県、京都府、和歌山県の知事がエンドースメントのコメントを寄せており、世界最大手ホテルチェーンと日本最大級のハウスメーカーが、自治体を巻き込んでプロジェクトを三つ巴で全国的に展開するという、ホテル開発として極めて異例のものでした。
(報道発表)地方創生事業「Trip Base 道の駅プロジェクト」始動。ロードサイド型ホテル2020年秋から5府県15カ所開業 | マリオット・インターナショナルのプレスリリース
最初にオープンした岐阜の2ホテルは85室と54室で、それ以降も同じような50~100室程度のフォーマットで次々と開業していきます。
ホテル機能を大胆にカット
施設の特徴は、道の駅に隣接することで、ホテルとして必要な設備を大胆にカットしているたことです。客室以外、ほとんど何も備えていないホテルとなっています。朝食サービス(「朝食ボックス」と呼ぶ弁当)はオプションで提供されますが、レストランはありません(道の駅などを利用)。大浴場もありません(道の駅を利用)。バスタブすらありません(シャワーのみ)。
ホテルの施設としては、フロントに隣接してそれらしいデザインのセルフラウンジとミニキッチンがあるだけであり、欠けている機能はすべて、道の駅か近隣施設を使ってくれ、ということになっています。そしてこの開発コンセプト自体が地方創生であると、彼らは主張しています。
つまり客室以外何もないに等しい定型フォーマットをド田舎で展開するという点で、非常に新しいと言えます。積水ハウスとしては同じような箱ものを次々と建てればいいのですから非常に簡単であり、まさに短期間での大量出店が可能でした。ホテルの実際の様子は、次回の記事で触れます。
まさに正反対
これは、これから開業するリゾートトラストのサンクチュアリコート琵琶湖と比較すると、あまりの正反対さに驚きます。
立地はいずれもド田舎ですが、方や何もないホテルで雇用は最小限。近隣のお店を使ってください、という方式で、紋切り型で小口大量出店が可能。国際ブランドを活かして全世界から集客します。
方や、日本、いや世界でも有数のフルフィーチャードな大型リゾートホテルで、ありとあらゆる職種の雇用を自ら手配。近隣のお店を使う想定がない「ディスティネーションホテル」で、数年と数百億を投じた個別生産の大プロジェクト。そして「完全会員制」として限られた範囲の日本人だけで集客。
両方ともあまりに極端で、書いている僕も頭がクラクラしていますが、高齢者人口が維持される今後20年程度のスパンで考えて(サンクチュアリコートは50年契約ですが…)、どちらの運営モデルに軍配があがるでしょうか。ご意見をぜひお寄せください。
ド田舎の素泊まりの価格
話をフェアフィールドに戻します。
設備は特にありませんから素泊まりが基本で、予約も清算も簡単。ホテルオペレーションにかかる人件費が最低限になる設計です。しかし、マリオットブランドで海外からも広く集客していますので、日本人にとって価格は安くありません。
取材した岐阜高山白川郷を例に取ると、繁忙期ではない場合に1室平日1.6万、休前日2.3万、という感じです。つまり、平日100ドル、休前日150ドルといった設定です。
以下でホテルの名称等を個別に紹介しますが、立地は主にド田舎であり(道の駅があるようなところなわけですから)、観光地として魅力的かどうかは、一般的な感覚として疑問です。ただし、そうした立地こそが、日本を訪れる海外からのリピーターに受ける(ニーズがある)のだと、彼らは考えている(考えることにした)ようです。
同じような紋切り型展開
最後の特徴は、もう既に述べたことですが、これらが全国同時多発的に、同じようなフォーマットでどんどん作られているということです。
以下が公式サイトから引用した、現在の全ホテル29施設です。こうして画像で表現する意味はあまりないかもしれませんが、「どの程度おんなじか」を感覚的にご覧ください。
(ホテル画像出典:マリオット・インターナショナル)
というわけで、この特異なビジネスの全体像を見たところで、今回は終わりです。
(公式)フェアフィールド・バイ・マリオット 道の駅 | 公式サイト
resortboyさん
来週、フェアフィールドマリオット郡上八幡に宿泊して、サンメンバーズひるがの、東急ハーヴェスト飛騨高山、サンクチュアリコート高山と岐阜旅に出かけます。
当初、白川郷も目的地なので、3泊目は取材されたフェアフィールド岐阜高山白川郷を予約していたのですが、白川郷より高山が近いので、キャンセルしてハーヴェスト飛騨高山に変更しました。
昨年からBonvoy修行を始め、フェアフィールドマリオットはプラチナ特典は何もありませんが、ホテル代とほぼ同じポイントで宿泊できるので、今後、積極的に利用しようと考えています。
今まで訪問したことのないエリアに施設が多いことも、個人的には利点です。
フェアフィールドは初めての利用ですが、部屋は1タイプのみ、SPAもラウンジ、レストランもない、RT施設とは対極の道の駅寄生型ホテルに宿泊するのが、とても楽しみです。
タイムリーな投稿ありがとうございます。
あまりにもタイムリーな内容で、嬉しくて、自分の岐阜旅のことだけを急ぎ投稿してしまいましたが、ずっと不思議に思っていた疑問が解決しました。
なぜ、岐阜や和歌山など特定の県に集中しているのか?
地方創成事業で合点がいきました。
RT社への個人的な不満のひとつは、首都圏、名阪からアクセスし易いエリアに集中しまっている点であり、会員権販売が命である同社としては仕方ありませんが、コンセプトは違っても地方への展開が期待されたトラスティを手放したことも残念です。
マリオットも特定地域に集中している嫌いはありますが、今後の展開に期待できます。
ホテル(フェアフィールド単体で)ビジネスとしてもコスト面、稼働率含めたRT社とのビジネスパフォーマンス比較はとても興味深いです。
部屋しかない究極のミニマルホテルですが、隣接した道の駅にはレストラン、ギフトショップ、温泉もあり、館内にファシリティはなくても、ぶらり散歩がてら出かけるのも楽しそうです。
道の駅寄生型、いや、共生型ホテル楽しみです。
Bobbyさん、コメントありがとうございます。
「岐阜旅」はリゾート会員権界隈では、今年の人気かと思い、いつかこの道の駅の話を書こうと思っていましたが、矢継ぎ早にマリオットの日本進出がまた新たなステージを迎えたことを示すニュースがあって、マリオット側からの文脈で記事を書くこととなりました。
数日中に、フェアフィールドのハードウェアの話を書きますので、行ってらっしゃった際にまたご覧いただき、実際の使用感などお聞かせいただければと思っています。
マリオットの話は、ビジホ展開(ユニゾ)、道の駅展開(積水ハウス)、地方都市オンボロホテルのリニューアル(HMI)の順番で、暇を見つけて書いていきます。これらの展開は実に合理的で、まさに「草刈り場」という表現がぴったり来ます。
来週まではRTのことで頭がいっぱいなんですが、マリオットの上記の話は、総合的にリゾートホテルについて研究している僕でないと書けない視点があると思っていますので、ガラ権連載とともに、少し頑張ってみようかと思っているところです。
resortboyさん、みなさん、こんばんは。
これってどう考えても持続出来るとは思えないんですが・・・
田舎の道の駅って、大体営業時間9:00~18:00とかですし
スーパーより品揃え悪くて価格も高いですし。
アクセスはどうするんでしょう? 田舎の駅って、タクシーいないし、営業17時までとかざらです。
フェアフィールド・バイ・マリオット・岐阜高山白川郷って所在地荘川ですよね。
白川郷も高山も車で高速走って、40分ほどかかりますよね。地名で海外の人
予約入れたら詐欺呼ばわりされそうな立地ですが。
先月より白川郷とか上高地5回バス乗務で行きましたが、欧米人4割、アジア人4割、日本人2割ですね。
泊まるのは、白馬コルチナのグリーンプラザですが、滅多に日本人見ません。
日本人見たら阪急トラピでした。会員制の時代を知る身としては、悲しいものがあります。
makunoutibentouさん
来週宿泊するので、私も郡上八幡道の駅の詳細調べてみて、レストランが16:00にはクローズ、遅いラーメン屋が18:00と知ってショックでした
フェアフィールドバイマリオットは米国で言うところのモーテルですから、交通手段は車でないと宿泊は難しいと思います
レンタカーを借りて旅行する外国人が多いとは思えないので、利用者は大半が日本人だと思います
マリオットは米国流のモーテル文化を道の駅に寄生して日本に持ち込もうとしていると思いますが、日本人にどこまで浸透するか?
resortboyさんが言及されているように、まさに、RT社と対極のホテル展開です
Bonvoyで泊まれるという理由からだけで予約し、RT施設と比較するつもりもありませんが、興味が湧いてきたので、宿泊体験して、自分なりに評価してみようと思います
resortboyさん、Bobbyさん、みなさん、おはようございます。
>Bobbyさん
>フェアフィールドバイマリオットは米国で言うところのモーテルですから
>交通手段は車でないと宿泊は難しいと思います。
なるほど米国のモーテルを模してるんですね。日本でこれを模してる
チェーンとしては、AZホテルチェーンがあてはまるのでしょうか?
昨年築108年の古民家を購入しまして、残置物だらけの初期に
AZホテルに泊まった事ありますが、最近展開を始めたのでしょうか?
どこも綺麗です。夕食・朝食バイキング付けて、全日5030円かな。
ここも回りは、田んぼとかなので全ホテルレストランは、併設されています。
この値段で食事がついているので、あればありがたいという程度のものでした。
Bobbyさん、是非感想をお聞かせください。現在東海北陸道飛騨清美より
中部縦貫自動車道髙山西までは、平日工事閉鎖で髙山西まで並行する一般道を
走る必要があります。さらに20時から翌6時までは、東海北陸道 飛騨清見IC
~小矢部砺波JCTで夜間通行止めです。
郡上八幡ならいくらでもおいしい食事どころがあるので楽しみですね。
お気をつけてお出かけください。
makunoutibentouさん
道路情報ありがとうございます
しっかり、偵察してきます
>なるほど米国のモーテルを模してるんですね。日本でこれを模してる
チェーンとしては、AZホテルチェーンがあてはまるのでしょうか?
他にもロードサイドホテルとして
旅籠屋
https://www.hatagoya.co.jp/
とかがあります。
ホテルAZの場合、シングルで4800円、ツインで8000円(税別)ですけど、
株主優待券があれば3割引になります。
フェアフィールドバイマリオット岐阜郡上
宿泊体験報告です
予想以上に快適でした
郡上八幡から長良川沿いに高山方面に車で15分ほどの道の駅「古今伝授の里やまと」にあります
2020年施設オープンなので、新しくて快適
部屋も24平米あるので狭苦しさは感じません
部屋以外に何もないかと思っていましたが、テラス付きの快適なラウンジがあり、コーヒーは無料
他に小さな売店があります
Bonvoy特典ですがBonvoy500ポイントかチーズケーキ2個(こちらをチョイスしました)を貰えます
道の駅の温泉やレストランエリアまで徒歩2分
エクシブ軽井沢のムセオやSVから大浴場に行くより近いです(笑)
温泉は21:30までで、併設されたレストランもあります
マリオットで100円引き600円で入浴券を購入でき、ホテルのタオルも利用OKです
一般ホテルなので金額は変動すると思いますが、この時期平日利用で1.5万円くらい(ポイント宿泊なので、早期予約ならもっと安いかも)
おそらく、他の施設も類似していると思われますが、道の駅をホテルの一部として考えるととても快適です
雨天のときは面倒なのと道の駅の休日リスクがあるのは要注意です
また、特に利便性を感じたわけではありませんが、前日メールが届き、オンラインチェックインできます
このタイミングで部屋がアサインされ、スマホが電子キーになります
もっとも、フロントで受付して、カードキーを貰う前提であり、顧客が上手く使いこなせずスタッフの対応が増えるので受付手続きは外せないようです
フェアフィールドは特定エリアに集中しているきらいはありますが、個人的には未訪問エリアに施設が多いので、積極利用しようと思いました
外国人のフェアフィールド利用について、ホテルのスタッフに聞いてみました
具体的な割合は良く分からないものの、宿泊した岐阜郡上でも結構いますとのこと
今回キャンセルした高山白川郷は外国人利用がかなり多いようです(外国人大人気エリアですね)
右ハンドルの日本で外国人のレンタカー利用はそんなにはないだろうという、私の読みはハズレで、resortboyさんの見解どおり、フェアフィールドでもインバウンドを積極的に取り込む戦略なのかもしれません
Bobbyさん、さっそくの現地報告をありがとうございます。makunoutibentouさん、コメントと情報をありがとうございました。
僕が某エクシブで遊んでいるうちに時間が進んでしまって、施設紹介が後になってしまいましてすみません😅
というわけで、Bobbyさんのレポートとともに、以下の公式画像をご覧ください。
岐阜郡上のご家族向けホテル | フェアフィールド・バイ・マリオット・岐阜郡上