現代リゾート会員権商法の最前線

リゾートトラストは2023年2月9日、2023年3月期3四半期の決算を発表しました。2022年12月までの9カ月累計のリゾート会員権契約高は624億円で、3四半期で過去最高だった前期の559億円を11%も上回る好調さでした。

その好調さを支えているのが高山、琵琶湖、日光の「サンクチュアリコート」です。これらは建設中ですべて未開業ですから、まだ実際に見ることすらできないものを売りまくっている同社のビジネスモデルは特異であり、東急不動産を除く他社には真似のできないものです。

今回は、同社がサンクチュアリコート3物件を同時に販売することで、巧みに売上の底上げを図っている様子を、ビジネスモデルの視点から詳しく見ていきたいと思います。題して「現代リゾート会員権商法の最前線」です。

まず、こちらが最新の同社の契約高の資料です(単位は億円)。

サンクチュアリコート第一弾である高山の前期の306億は、2021年6〜12月のおよそ半年での販売実績です。ならすと、月間50億というイメージです。これが今年は9カ月(4〜12月)で15億しか売っていません。

さらに細かく見ると、今年4〜9月で高山は14億売っていましたから、10〜12月では1億しか売れていません。高山だけ見るとかなりの失速です。

琵琶湖は2023年3月21日発売で、その月のうちに13億売りました。今季実績の376億をそれに足し合わせると、3〜12月の10カ月で388億売ったことになります。

琵琶湖は4〜9月で273億売っていましたから、この間は月間90億という驚くべき販売スピードでした。10〜12月分は103億ということになり、やはりかなり減速しています。

日光は2023年10月20日の発売ですから、2カ月あまりで149億を売りました。他の2つに比べると新しいだけに勢いがありますが、琵琶湖の当初の勢いには及びません。

さて、最初の表に目を向けると、2年前のエクシブ湯河原離宮の売上がマイナスになっていることに気づくでしょう。これは、新規契約の売上よりも、会員権を買い取る負の売上の方が多かったため、結果としてマイナスの売上が計上されたことを意味します。この数字に現れているように、同社は一度販売した会員権を解約したり下取りするなどして、別の会員権を販売する手法を得意としています。

この手法を念頭に数字を見ていくと、上記のように販売中の会員権売上が、好調ながらも急速に失速していく理由がよくわかります。

こちらのグラフをご覧ください。これは僕が同社発表資料から、サンクチュアリコート琵琶湖の3カ月おきの累計契約高を地域別に口数で集計したものです(10泊タイプとして集計)。左から、6月末までの累計、9月末まで、そして12月末までの累計契約口数です。

さらに地域ごとにこれらの数字を集計しています。青が東京、赤が横浜、黄色が名古屋、緑が大阪の各支社で販売された琵琶湖会員権の口数です。

これを見ると、琵琶湖の失速がよりよくわかります。9月末と12月末とで、販売口数がほとんど増えていません。東京と横浜は販売口数が減っているので解約があったことを意味します。名古屋も大阪も伸びてはいるけれども、減速が激しいことがわかります。

東京と横浜で琵琶湖の契約口数が減った理由は明らかで、琵琶湖の契約をキャンセルし、後発の日光に変更したからです。キャンセルして変更するには、当然ながらより高い会員権に誘導されます。この販売手法は、サンクチュアリコート3物件の客室グレードの配分にはっきりと現れています。

高山はまず3つのグレードを均等に設計し、次の琵琶湖、日光と進むにしたがって、上位グレードの割合を高めています。その結果、日光では過半が最上位グレードとして販売されることになりました。

このように、未開業の物件を並行して販売しながら、徐々に販売グレードを高いものに引き上げています。一度契約した会員権を、別のより高額なものに誘導し、それを未開業のうちに実行する、というビジネスモデルが、現在の同社の高収益を支えています。

これが現在、旺盛な高級リゾート会員権需要に対してサンクチュアリコートが次々に売り出され、そして同社が利益を拡大しつづけている手法であり、現代のリゾート会員権産業のスタイルが確立してからおよそ30年を経て、そのトップランナーがたどり着いたビジネスモデルです。

これはビジネススクールの教材になるような、大変興味深いものではないでしょうか。

8 comments

  1. まさに猛烈なゴリ押し商法ですね~
    まあこの営業手法があってこそ、ここまでリゾートトラストが成長したとも言えますが、一般的な社会からすると
    余りにも強引過ぎる手法ですよね。
    世間一般的には通常受け入れられないはずなんですが……
    プライドを上手く、くすぐり、猛烈なアタックで契約に持ち込み、強引に次々にグレードアップさせるか新しく別の会員権を購入させる。
    高額な会員権を購入した次の日に直ぐにグレードアップを持ちかけられたり
    翌々日には別の会員権を勧めてきたりするので本当に呆れてしまいますね。
    と散々文句を言いながらエクシブにドップリ浸かって楽しんでいる自分は何なんだろう(^o^;)
    サンクチュアリコートが出来るのを今か今かと待ち望んでいる自分が恥ずかしいです(^_^;)

  2. 久しぶりです
    日光サンクコートを楽しみにしています

  3. アップグレード商法は、ホテルを新設し続けないと継続出来ない、サスティナブルではないやり方に見えてしまいます。これをみると、熱海や強羅などの有力な建設候補地は、一旦3サンクチュアリ完成後に次のパッケージ的に販売されそうな予感がします。
    RT社が今後も儲かっていけるか否かは、resortboyさんが言う会員権の総数の伸びから、新たな顧客層を獲得出来ているか?だと思います。ここはresortboyさんの見立て通り、個人の富裕層から法人にターゲットの舵を切ったのが伺えます。日光のパンフレットにも、「法人様の保養所」と福利厚生施設としての経費処理を謳ってます。(会員権も減価償却出来るのでしょうか?)
    50年の定期借地権に契約期間を変更したのは、ホテルを新設していく事と法人ターゲットを考えた新たなビジネスモデルに対応したものなんでしょうね。

  4. RT社はRCさんのような上顧客を「育てて」きたのでしょう。限られた人数で高齢化による引退を考えると「サスティナブル」とは言えませんが、幸せな世界、ですね。残念ながら私には、そのお金も時間もありませんが…

    法人をターゲットにするのであれば、接待需要を取り込むのが吉、かと思います。迎賓館、のような。
    インバウンド富裕層が望むような「金は出すから完璧でヨロシク」を実現する華美な建物・至高のサービスを提供。
    個人には手が届かない価格設定(会員権・使用料共)にして、わざと空室率を高くし、使いたい時に使える体制を確立(既に一部のフレンチレストランが実行している施策)。
    エクシブ・ベイコートとは完全に切り離してRCIに加入、利便性向上を図る。

    そんな「別世界」を構築・運営することに成功すれば、エクシブ・ベイコートについては「うちのフラッグシップじゃ無いから!」とリブランド的な価格+サービスレベルの下方修正も許容されるのでは?と思います。オーナーは納得しなくても、世間的には。

  5. RCさん、上得意ユーザーさんのお立場からのコメント、誠にありがとうございます。

    RCさんと同様なお気持ちをお持ちの方々が、たくさんいらっしゃるのを知っています。こうしたセールススタイルにたどり着いて、かつ成長を続けているリゾートトラストという会社は、本当にすごいと感じます。

    僕が懸念しているのは、サンクチュアリコートの販売戦略が、あまりにも洗練され過ぎていることです。高額商品を効率良く売ることに特化していて、かつ、どのホテルも未開業です。あやうさを感じずにはいられません。

    芦屋(関西)、ラグーナ(中部)、横浜(関東)のベイコート三連荘で培った「複数地域同時販売」のノウハウを、時間軸を圧縮して繰り出しています。景気敏感商品ですから、必ず揺り戻しがあります。そのとき、創業者は引退。後継者はメディカル畑。どうなっていくでしょうね。

  6. スイートハウス8さん、カミーさん、belairさん、コメントありがとうございます。

    > 日光のパンフレットにも、「法人様の保養所」と福利厚生施設としての経費処理を謳ってます。(会員権も減価償却出来るのでしょうか?)

    へー、そうなんですね。僕は会計の専門家ではないのですが、リゾート会員権の研究家として理解している範囲で、この話題についてコメントしてみますね。

    まず、リゾート会員権の経理処理については、論文が書ける程度の「揺れ」がある話題であると思います。一方、おそらくゴルフ会員権については何らかの論文が出ているかと思いますが、リゾート会員権の方がその資産性の解釈に複雑な面がありそうです。

    以下一般論です。まず、有効期間に定めのないリゾート会員権の入会金は「投資その他の資産」となって償却できません。しかし、会員資格の有効期限が決まっているサンクチュアリコートのような会員権の場合には、繰延資産として利用期間により償却が可能とされています。

    根拠は「法人税基本通達 9-7-13の2」(レジャークラブの入会金)です。興味のある方は調べてみてください。

    不動産部分はあくまで不動産なので、建物部分については減価償却費を計上できるとする見解があります。ホテルとして償却するので耐用年数は一般に39年。

    また償却保証金ですが、入会時に償却計画が決まっているのでそれに沿った償却が可能かと思いきや、会計的には保証金の価値が経過により減少していくと考え、会員権の譲渡時まで経費計上できないとする見解があります。

    年会費については、接待目的であれば交際費、従業員の慰安のためであれば福利厚生費として経費化できると思われます。ただし、オーナー一族がメインに使うなら当局が否認したくなるでしょう。豪華なリゾート会員権は調査時に目立ち、突っ込まれること必至のように思われます。

    サンクチュアリコートの契約書を見ていないのですが、価格の4割を占める登録料が繰延資産として経費化できると言っても、他の6割はこれまでと同様ですし、年会費や利用料金といったランニングコストを含めたトータルな支出で考えると、そのインパクトは思ったよりも小さいのではないでしょうか。商品性がガラッと変わって節税になると言ってセールスされた場合には、少なくとも上記程度の点をチェックしたほうがよさそうですし、個人的には節税メリットなどはこの商品にないと感じます。

    面白いテーマをいただいたので、来年度の研究発表テーマとして検討しちゃおうかな。

  7. サンクチュアリィコート日光のクラブスイート
    を買いました。自宅から1時間程度で行けるのでホームグランド感があるリゾートホテルとして使えるのがいいですね。年間10泊の最安値
    グレードですが空いていれば月5泊年間60泊で
    切るのはハッピーリタイヤする私としては圧倒的な魅力です年間10泊分は他のベイコートや
    離宮シリーズに当てれば年間70泊140日のリゾート暮らしはにプラスして国内の高級温泉旅館と海外旅行も楽しむ予定なので退屈しない最高の老後が完成です。

  8. yanGさん、いらっしゃいませ。最新施設のメンバーさんからコメントいただけて光栄です。

    「ホームグラウンド感」というのはこれまでのリゾートトラストの会員権ではあまりなかった考え方かと思います。サンクチュアリコートの新制度(何と呼んだら?)「契約ホテルには月5泊までフローティングなら権利未消化で宿泊可能」によるものですね。「権利未消化宿泊」とでも呼びましょうか。感じが出ませんね。「権利ゼロ泊」の方がいいかな。

    何かいいネーミングを思いついた方は教えてください。流行らせよう(謎)。

    それにしても、年間140日のリゾート暮らし、というのはとても夢のある言葉ですね。インパクトがあります。

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