東京ベイコート倶楽部の功罪

リゾートトラストの歴史を振り返る上で、東京ベイコート倶楽部が残したものは非常に大きなものがあります。発売から早くも14年、開業から11年経った現在から振り返って、今に残る影響を振り返ってみたいと思います。

東京ベイコート倶楽部が発売されたのは2005年4月7日。エクシブで大成功したリゾートトラストが、次なる成長の主軸として取り組んだのが、日本初となる都市型会員制ホテル事業。エクシブの枠組みを都会に持ってくることでした。開発表明当時、経営者はこのように述べています。

「世界の一流が集まり外資としのぎを削る東京地区でも、他社に負けないハイグレードな施設を提供することができます」

言わば日本を代表するワールドクラスのホテル建設を、会員制という「オーナーに建築費を負担してもらう」という方法で、日本ではじめて行ったのです。そして紆余曲折の上、完売にこぎつける。これは日本のホテル史に残る偉業であったと思います。

しかし、あまりにもこれが難産だった。その様子を販売高の推移で確認してみます。

東京ベイコート倶楽部の発売から、各事業年度末ごとに、販売高の数字を追ってみます。

2006年3月 14.2%
2007年3月 24.5%
2008年3月 40.8%(開業時)
2009年3月 49.5%
2010年3月 69.1%
2011年3月 86.5%
2012年3月 99%

およそ丸7年をかけて売り切ったのですが、これがどういうことか、最新のベイコート物件であるラグーナベイコート倶楽部と比較するとよくわかります。ラグーナベイコート倶楽部は開業時に79.8%も販売済みなのです。

いかに東京ベイコート倶楽部が苦しかったのかがわかります。もちろん、2008年9月におきたリーマンショックの影響は大きいです(この事業年度には9%ほどしか売れていません)。しかしそれを差し引いても、これはおかしい、と会社が自信を失うほどの売れ行きであったと思います。

しかし、この東京ベイコート倶楽部をなんとか売り切ったからこそ、今のリゾートトラストがあるのです。それはどういうことか。

それはエクシブとは違うアッパーラインのリゾート会員権を作ったことで、会員権価格の引き上げ、運営管理費の引き上げが実現し、それがここ数年顕著になった建築費や人件費の高騰をカバーする源泉となったからです。

ラグーナベイコート倶楽部が、都市型とは言えないにも関わらずベイコート倶楽部として発売された理由もここにあります。上記のように、エクシブとして企画され商標出願まで終えながらも、土壇場でベイコート化して売り出され、そして開業時に8割を売るというヒットを飛ばした。これは東京ベイコート倶楽部をやりきったからこそできたことです。

それは現状のノーマルエクシブ最新物件である、エクシブ湯河原離宮が、あんなにもおかしなものになってしまったことと、背中合わせのものとして存在するのです。

しかし東京ベイコート倶楽部は、負の面も大きくエクシブの商品性に傷跡を残しています。

それは交換制度における問題点であり、ひいてはそれがRCI脱退にもつながっていきます。エクシブの商品性の大きな部分を占めていた海外リゾートネットワークRCIへの加入権利が失われたのは、東京ベイコート倶楽部の販売対策と無縁ではありません。

それは東京ベイコート倶楽部開業後の2008年11月のことでした。それまで全く別の会員権として位置付けられていたベイコートとエクシブでしたが、突如、東京ベイコート倶楽部のすべての権利日がエクシブのレッドの権利と定義されるようになったのです。

皆さんすっかり忘れていますが、それまでは、ベイコートオーナーはエクシブではオーナー扱いですらなかったのです(別の会員権として売っていたので当然です)。

しかしいつしか、ベイコートはエクシブの「上位会員権」として販売されるようになりました。当時、僕はこう書いています。

これらの改定によって、「エクシブを買うよりもベイコートを買ったほうがお得ですよ」というストーリーでのセールスがはじまった。ミスコンセプトで売れ行きの悪いベイコートの会員権を、エクシブの新規物件を作らずしてエクシブが欲しい層に販売する、というビジネスモデルが創出されたのである。

(出所)融合に向かうエクシブとベイコート | resortboy’s blog – ホテルの会員制度を楽しむサイト

この施策によってリゾートトラストはリーマンショックという難局を乗り切り、その後の建築費・人件費の高騰という別の難局への受け皿をも用意できてしまったというところに、いかにも同社らしい強運さを感じます。

しかし、こうしたでたらめな運用を、ワールドワイドの組織であるRCIを通じた交換利用だ、と言うことには、さすがにムリがありました。

当時のリゾートトラストの営業トークを再現すると、コントとしか思えません。

(当時のベイコートの営業との会話)
「ちょっと、どうなってるの?」
「東京ベイコート倶楽部を買うと、すべての権利日がエクシブのレッドと交換できるようになりました。土日利用が中心のお忙しい●●さんには最適です。お買い替えになりませんか?」

(当時のエクシブの営業との会話)
「ちょっと、どうなってるの?」
「ベイコートにオールレッドの権利があると言っても、それはRCIリゾート交換システムで扱われています。ですから、エクシブのレッドがRCIのリゾート交換に出されない限り、ベイコートオーナーが予約することはできません。●●さんのエクシブ権利にほとんど影響はありませんよ」

このような詭弁が国際組織の一端を担うRCIジャパン(リゾートトラストの子会社だった)で許されるわけもなく、リゾートトラストはRCIとの提携を2013年末に終了することになるのです。

ってな感じの話を、今度のオフ会ではもう少し掘り下げて話します。参加申し込みは、もう締め切っちゃいましたが。

しかし、本当に同社のストーリーは面白い。大河ドラマよりよっぽど面白いんじゃない? 見てないけど。

2 comments

  1. resortboyさん、皆さん、第1回の「トークライブ&オフ会」(5月18日)が迫ってきましたね。
    参加者も多く、きっと盛況で中身の濃い勉強会かつオフ会になると思います。
    残念ながら私は名古屋近郊に住んでいて、今回は参加できませんが、遠方ながら成功をお祈りしてます。

    さて、resortboyさん、東京ベイコートの販売不振とRCI脱退との鋭い考察、非常に面白く読ませて頂きました。なるほど、東京ベイコートの宿泊権利を全部レッドにしてエクシブ利用OKにすれば、抜群の利用価値ができますね。忙しい現役の(リッチな)社会人にとっては「エクシブの複数買い増しよりベイコート1本」の流れができますね。

    「リーマンショック後の大不況・株価暴落の後に、東京ベイコートの会員権を売り切った」のは奇跡近い、と思います。しかし、この奇跡の裏にマジックがあったのですね。「全部レッドですよ」と。何でもありのリゾートトラストの経営戦略に“感動”さえします。

    ここで、私の昔話です。
    私にとってリゾートクラブの目覚めは2003年出版のある1冊の本からです。
    橘 玲 著 『得する生活 お金持ちになる人の考え方』幻冬舎
    目からうろこの内容でしたが「第3章 素晴らしきリゾート生活」によって、その後の私の人生が大きく変化しました。特に、最後の「リゾート会員権の不思議」が決定打となりました。

    橘氏のRCIについての記述です。(長いですが引用します)
    「アメリカやヨーロッパのリゾートクラブはポイント制に移行しておりWEB上で登録を行い、RCIのホームページから宿泊予約をする仕組みになっている。(中略)高額な物件を購入した人は多くのポイントを獲得し豪華なリゾートの利用権と交換できるからだ。」
    「ところが、日本の場合、会員権の価格にかかわらず、海外のRCI提携リゾートに宿泊する場合はどこでも一律3万円だ。」
    「世界のリゾートに格安で宿泊できるRCIは魅力的なプランなので、欧米では相当な高額物件を購入しないと自由に利用するだけのポイントは貯まらない。ところが日本のリゾートクラブの中にはわずか数10万円の会員権で無制限の利用を認めるところもある。」
    「RCIのオフィシャルサイトによれば、いずれは日本を含むすべてのシステムをポイント制に統合する予定だという。そうなれば、こんな豪勢な旅行も不可能になるはずだ。1週間3万円の豪華旅行を心行くまで楽しむのなら急いだ方がいい。」

    私はこの本を読んでから会員制リゾートクラブに目覚め、真っ先に「RCI無制限利用可能」の泉郷ベストクラブ(現セラヴィリゾート泉郷)を買いました。またエクシブもRCIも利用できて格安なサンメンバーズも買いました。いずれも中古会員権です。そして、日本ではエクシブ三昧、世界ではRCI加盟リゾートに出かけ、1週間3万円という超格安料金でリゾート三昧しました。

    これにより、私の「安くて豪華な旅」が実現しました。橘氏のこの著書に出会わなかったら今の私はなかったかもしれない‥‥。人生を変えた1冊です。
    注:自称トラベルライターの私は、そんな1冊を創作したいと思って日々、執筆しています。(宣伝で申し訳ありません)

    さて、リゾートトラストは世界のRCIの流れ(ポイント制移行)を先読みして、RCIジャパンはいずれ崩壊・閉鎖する運命にある。それなら、東京ベイコートの権利をすべてレッドにして国内(エクシブ)交換の優位制を確立して、会員権を売ってしまおう。
    しかし、これはどう考えても世界のRCI基準と合わない。世界のRCIからクレームがついて、どうにもならなくなったら子会社のRCIジャパンを「廃止」すればいい。その時を見越して、自分勝手に何とでもなる新しい海外交換システム「RTCC」を作ってしまおう。

    以上、私の勝手な考察です。真相はリゾートトラスト経営陣のみ知っている?

    第1回の「トークライブ&オフ会」にかえて、funasanこと舟橋栄二からでした。

  2. funasanこんにちは。東京でのオフ会は盛会のうちに終了し、僕もホッとしているところです。

    今回は某社ビジネスについて公開された数字を元にファクトベースで分析・解説する会でした。某社とのトラブルを避けるために、出席の方々には箝口令を引いていまして、ちょっとそれはやりすぎたかな、とも思っているのですが、個人的にあまりいい思いをしたことのない過去もあり、このブログの存続を重視してそのようにしています。

    ですからあまり今回の内容を皆さんの生の声としてはフィードバックされないと思うのですが、自分としては某社ビジネスを長年に渡って結果的に推薦するような行動をしてしまったという責任も感じており、できる範囲で真実をお伝えするように努力していこうと思っています。

    僕も「得する生活」には背中を押されました。

    得する生活―お金持ちになる人の考え方

    これが出たのが2003年の12月。翌年に会員権を買ってリゾートライフがスタートしました。懐かしい。

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