リゾートトラストの新会員権ブランド「サンクチュアリコート」が発表になりました。この機会にサンメンバーズからエクシブ、ベイコート倶楽部、離宮シリーズ、そしてサンクチュアリコートへ向かう、エクシブを中心とした販売グレードと交換グレードの系譜について振り返ってみたいと思います。
リゾートトラストが、東急不動産を除けば一人勝ちと言えるほどにリゾート会員権というビジネスで成功した理由の1つに、会員権に多彩なグレードを用意して、購入者の心理を巧みにくすぐってきたことを見逃すことはできません。これは競合他社にはない大きな特長で、近年では既存顧客を対象とした「アップグレード販売」という手法も盛んになり、同社が業績を拡大するビジネスモデルのエンジンの1つと言えると思います。
今回の記事では、その歴史を振り返って、その独特なビジネスモデルの一端を解明してみたいと思います。
1984年に最初のエクシブ、エクシブ鳥羽が開業する以前に販売されていたリゾート会員権「サンメンバーズ」においては、客室グレードという考え方は存在していませんでした。例えば、リゾーピア熱海には「デラックスルーム」と呼ばれる大型ルームがありますが、これはサンメンバーズ会員であれば誰でも予約でき、会員に上下の隔てはありません。
それがエクシブでは、開始当初は3グレード(スタンダード、ラージ、スイート)の区分を設け、上位グレードを下位グレードの会員が利用できないようにしました。これが同社がいくつももたらしたリゾート会員権ビジネスに対する革命の1つであったと思います。
今日は歴史の話ではないので細かいところは飛ばしますが、1990年代にはさらに「スーパースイート」を最上位グレードとして追加します。図は、オールドエクシブの傑作として名高いエクシブ蓼科におけるグレード分けと参考価格です(価格は開業当時の発表資料による税抜価格。以下も同様だが、箱根離宮の記載のみ税込)。
ここで注目してほしいのは、「サンメンバーズ」から伸びている上向きの矢印です。これはサンメンバーズ会員が矢印が指すエクシブのスタンダードグレードを利用できることを示しています(予約開始は、一部は1年前から、多くは1カ月以内)。エクシブのスタート直後は、施設も少なく、同時に会員も少ないですから、発足当初のエクシブには「サンメンバーズルーム」と呼ばれる既存会員向けの部屋が設けられていたほか、タイムシェアであるエクシブの占有権利が開放されるフローティング枠(1カ月以内の予約)を使ってサンメンバーズ会員はエクシブを利用することができました(今もできます)。
リゾートトラストにおいてはこのように、新しい会員権をスタートさせたとき(通常はより高級化した上位の会員権となります)、従来の会員(概念としては下位の会員)もその施設を利用できるようにします。別の言い方をすると、リゾートトラストの会員権においては、販売されるグレード(ここでは「販売グレード」と呼びます)と、予約が可能なグレード(ここでは「交換グレード」と呼ぶことにします)が別々の概念として存在しています。
そのビジネスモデルの効果については別稿に譲ることにして、ここではそれらグレードの系譜について明らかにしていきましょう。
2008年に東京ベイコート倶楽部が開業します。この「ベイコート倶楽部」という会員権は、当初はエクシブと全く異なる別の会員権として発売され、エクシブ会員が利用することはできないとされていましたが、極端な販売不振の結果として商品性が見直され、エクシブをエクシブよりも利用しやすい上位互換の会員権として販売されました。
他のベイコート倶楽部もそうですが、東京ベイコート倶楽部のグレードは「ベイスイート」「ラグジュアリースイート」「ロイヤルスイート」の3つで、ローエンドのベイスイートでエクシブのスイートグレードが使えるものと設定されました。
同時に、エクシブのスタンダードをサンメンバーズが利用できるようにしたのと同様に、対応するグレードの1つ下のグレードのエクシブ会員がベイコート倶楽部の客室を交換利用できるように設定されました。具体的には、エクシブのラージ会員はベイコートのベイスイートが使え、スイート会員はラグジュアリースイート、スーパースイート会員はロイヤルスイートまで利用できることとしました。
次に事情が変わるのが、2010年開業のエクシブ箱根離宮です。離宮シリーズには2006年開業のエクシブ京都八瀬離宮がこの前にありますが、京都はオールドエクシブと同じ通常の4グレード展開となっていて、販売グレードが変化するのは箱根以降です。
箱根離宮においては、4グレード展開ながら、スイートまでの3グレードを「中2階」のように位置づけて販売されました。例えば、同ホテルのスタンダードグレードは「スタンダードCBタイプ」と称されますが、実際にはラージグレード相当の価格で販売されたため、それらの中間的な性質を持ちます。つまり販売グレードとしては実質ラージであり、他のエクシブのラージグレードが利用できますが(同様にベイコート倶楽部のベイスイートも利用可能)、交換グレードとしてはスタンダードであるというものです。
その結果、サンメンバーズ会員は離宮シリーズのCBタイプが利用できるようになり、離宮シリーズの大成功もあって、大いにサンメンバーズ会員権の利用価値が高まることになりました。もちろん、エクシブのスタンダードグレードも同様です。
現在販売中の離宮シリーズには2017年開業のエクシブ湯河原離宮がありますが、このホテルにおいては4グレードから3グレードに整理され、ECタイプ(販売グレードがスイートで交換グレードはラージ)は設定されませんでした。
そしてこのほど新ブランド導入が明らかになった「サンクチュアリコート」ではどうなったのか。この新会員権ではベイコート倶楽部のグレード設定を踏襲したものになりました。ただし、埋立地展開のベイコートの「ベイ」を名乗ることはなくなりましたので、下位グレードのベイスイートは「クラブスイート」という名称に改められました。
サンクチュアリコートにおいてもベイコート倶楽部と同様に3グレード展開ですが、注目すべきは離宮シリーズのCBタイプを交換グレードではスタンダードとしたのと同様に、販売グレードがスイート相当であるクラブスイートを、エクシブのスタンダードでも利用できるようにしたことです。
これを図示すると、サンクチュアリコートは、現状の離宮シリーズの3グレード販売の流れを汲むものであるように見えます。つまり、ベイコート倶楽部をベースに、後期離宮(鳥羽別邸や湯河原離宮)の設定をかけ合わせたものが、この新ブランドのグレード設定であると言えそうです。
サンクチュアリコートにおいては、エクシブの名を捨てたことで1室の口数が14であるというしばりからも開放され(エクシブは「XIV」と表記されることから、1室を14分割することを意味します)、結果的には1室18口(1口年間20泊)と36口(1口年間10泊)で販売されます。ベイコート倶楽部よりもさらに口数を広げたことで、会員権価格を上げずに建築費の高騰化に対応した形です。
なお、冒頭の写真は鳥羽別邸での1枚です。当初は鳥羽別邸とサンクチュアリコート高山との類似性についての論考を書こうと思っていたのですが、結局、このような大河ドラマのような話になりました。このように歴史を振り返ってみると、同社の会員グレード設定には複雑でありながらも一貫性があり、よく練られた設定を行ってきたように思われます。
ワンダーネットからの予約画面が完全に新しいシステムに移行しましたね。
使いにくいです。空き状況の画面から予約が出来ません。
予約画面に移行して、ホテル名、日にち等を入力しても、人数の部屋がなかったり喫煙しかなかったり、3日分の空室が表示されているので、間違えそうになります。
面倒で予約が減りそうです(笑)。
oceanさん!!
ホント使い勝手悪くなって嫌になります…
空室情報からは、今までは自分のグレード以下しか見れなかったのが、上位グレードの空室情報が見れるので嫌がらせとも感じてます!!
新しいシステムは「キャンセル待ちができない」「しばらくするとなぜか空き情報が変更されている」など、特に人気の施設は、オーナーが有利になる様に表示されているのではないかと勘ぐってしまうのですが、このように感じるのは私だけでしょうか。
皆さん、コメントありがとうございます。予約システムは慣れの問題もあると思いますが、利用する立場からすると、決定的に大事な部分なので、ぜひ使い勝手を改善するように、継続的に投資をしてほしいものです。
実はワタシ、昨年のことですが、新システムになって予約日を間違えて、間違えたまま現地に行ってしまったことがあります。
前のシステムは慣れちゃっていたというのもありましたが、いったいいつからあのシステムだったのかと思うくらい、長く使われていましたね(僕が2004年に入会したときには既にあった)。
今は、こちらのページで下調べをしてから、という感じなのかな? これ、誰でも見られるので、会員権の購入前の人には検討材料によいのかもしれない…。
空室情報
resortboyさん
年代に沿ったグレード変遷のご解説、とても懐かしい思いで拝見しました。以前 resortboyさんが「会員権の賞味期限は10年」と書かれていた通り、左下のサンメン購入に始まって右上へと向かう矢印通りに、各グレードの会員権を順番に賞味しながら歩みを重ねてきた、その長い歳月を思い返すと感慨もひとしおです (笑)
まさにRT社のビジネスモデルに囚われた典型的な会員だったわけですが、それはそれでグレードアップの楽しみを何度も味わえましたし、10年サイクルで変化する利用環境に即した活用を享受できたわけですので、振り返っても全く後悔は感じないという点で言えば良く出来たシステムなのかも知れませんね。
新しい予約システムにも次第に慣れてきました。むろん改善点は多くありますが、アプリ&メール(+時々電話)で殆どのことは解決できています。さすがにワンダーネットはシステム的に古すぎて、今後の展開には対応できないのでしょう。新システムがどこまで先見性があるか分かりませんが、今後に期待しています。
本当に使いにくく困っています。
慣れようとしていますが、慣れれません(汗)。
予約へのスタンスの違いも影響すると感じています。
新予約システムはこの日に、ここに行くって決めて予約する場合は問題ないと思います。
私の場合は、1年先まで計画を立てて予約を入れています。
また、週末時間が空いたら、空室のある施設を探していきます。
どこへ行くというより、色々な場所の空いている施設を探します。
予約の流れです。
①空室情報を見て、空室を確認。
②予約画面に移動して会員権を選んで、ベイか東日本か西日本かサンかを選択。
③施設を選択。ここで全ての施設を選択すると40か所をクリックします。全選択択ボタンが必要。
④グレードを選択。
⑤ノンストップチェックインを選択。(まだ、予約確定しないのでここでは不要)
⑤部屋タイプを確認。何故か3日分表示されます。予約日を間違えます。
喫煙室しかなかったり、4人部屋がなかったりした場合は③まで戻ります。
③~⑥を繰り返して予約できる施設を探します。画面の、上下スクロールが長すぎます。
このシステムの作成者は、エクシブの特有の利用状況を理解してないのではと思います。
一般のホテルと違って、場所への目的をもって予約するより、行きたい日に空いているホテルを探します。京都?有馬?箱根?湯河原?鳥羽別邸?って感じで、探します。
従来のシステムは、それができました。日にちから複数のホテルの予約へ行けるようにしてほしいです。空室情報から直接予約ができれば良いと思います。
改善を期待します!!。
benさん、想いのこもったコメントをありがとうございました。このように振り返ってみると、このグレード制度というものが自分も含めていろいろな人々を引きつけてきた日本独自のリゾート会員権文化のカギとなるものであったのだなぁと思います。
途中で複雑になりすぎた部分がありましたが、オリジナルの3グレードに回帰するような流れとなっていて、また、会員制リゾートホテルの弱点である稼働率の問題については下のグレードからの利用を受け入れるという流れもずっと踏襲されていて、面白いなぁと思います。記事では販売グレードと交換グレードという使い分けで分析してみましたが、販売グレードではなくて所有グレードと呼んだほうが、会員の皆さんのメンタリティには合致しているかもしれませんね。
ところで、oceanさんのご意見はもっともだと思います。今のシステムは使いにくいし、しかもちゃんと動作していません。
昨日(7日)にはまったく使い物にならずに、電話で申し込みをしました。
上記のように障害報告が出ていますが、フローティング狙いで張り付いているいま時点でもエラー頻発でちゃんと動いていません。
きちんと投資して、せめて、動くシステムを提供してほしいです。情けない。
私も昨日はサンクスフェスティバル狙いで、予約システムにアクセスしようとしましたが、夕方までず~っと利用できませんでした。
おかげでつながった時には、昨日まで空いてた部屋が満室に・・・
国の感染対策アプリ・ココアとか、ワクチンの大規模接種会場での予約アプリとかの不備など、日本ってやっぱり遅れてる?人材不足?
oceanさんの指摘されるように、「システム開発者がエクシブ特有の利用状況を理解していないのでは」という疑問は、どのアプリ開発にも共通する問題点ですね。
予約システムの事ばかりですみません。
先ほど3日後の予約で、空室ありになっている施設が何箇所かありました。
家族でどこに行くか散々話しをして予約をしようとホテルへ電話しました。
(3日以内はネット不可なので)
予約の電話をしたところ、二つ返事で
ホテル「その日は満室です」
私 「えっ、ワンダーネットで空室になっていますよ」
ホテル「3日以内はネットに反映しないシステムにです」
って、当然のように言われました。
3日以内の空室表示は実態と反する表示です。使えないシステムなんですね!!。
もう少し、会員の立場に立ってほしいですね。
ストレス溜まります!!
今週末はハーベストに変更します!!
oceanさん、コメントありがとうございます。うーん、今のような情勢では、直前になってから宿泊予定を決めるのがむしろ普通なのに、この仕様(と言っていいのかわかりませんが)は困ったものですね…。
ネット予約システムに力が入っていない理由は、釣った魚に餌はやらない、という感じなんでしょうかね。「お電話いただければいつでも!」的な担当営業さん経由主義は、そろそろ「かえって面倒」と思う方が多いような気がするんですが…。
初めて投稿します。
まだ、カードが届いていないのですが、RTの歴史や予約方法などを勉強させていただきました。大変助かります。
今後も参考にさせていただきます。
SAC高山に関しての親記事を書いていなかったので、発表当時に書いたこちらの記事に関連の話題をぶらさげておきます。
開業を前に、従業員の寮の建設がはじまりました。鉄骨造地下1階地上2階建て、建築面積2393平米ということです。ワンルームのアパートだとしたら、100室くらいな感じなのかな?
リゾートトラスト 高山寮建築に着手|建設ニュース 入札情報、落札情報、建設会社の情報は建通新聞社
想定するスタッフ数は「正社員・非正社員を合計して約200名」だそうです。
http://www.hoteresonline.com/articles/12233?p=1
トップインタビュー リゾートトラスト(株)サンクチュアリコート高山アートギャラリーリゾート 開業準備室 室長 金村 輝男氏【週刊ホテルレストラン2023年04月28日号】
サンクチュアリコートは121室ですから、1室あたりのスタッフ数は1.65人。最終エクシブの湯河原離宮が187室で2022年3月時点で235人なので1.26人。ベイコート倶楽部は横浜は特殊なのでラグーナで見ると、193室に対して271人で1.4人。
オールドエクシブだと、鳥羽は特殊なので伊豆で見てみると、227室に対して107人なので0.47人。蓼科で230室に対して184人で0.8人。
施設のタイプが異なるので単純な比較にあまり意味はないかもしれません。
上場企業のPCシステム?かと思うほど使いにくいし、理解しずらいです。だれがシステム作ってるの?社内のパソコンオタク?ちゃんと専門会社に外注してください!自動車会社のHPや星野屋あたりの予約システムを見習ってください!
じじさん、コメントありがとうございます。おっしゃることはよく理解できます。この会社の予約システムは本当にストレスフルだと思いますし、なにしろミスが多いのが困りものです。
要するに、グランドデザインを行う人材がこの会社にはいないのです。
resortboyさん
SAC八ヶ岳(仮称です)の続報ですが、グレードに関する内容を含みますので当欄に書かせて頂きます。例の山梨日日新聞によると、先般この件で周辺住民向けに説明会が開催されて、早ければ今月下旬にも既存建物の解体工事が開始されるとの報告もあったようです。
また記事にはパブリック棟の他に、客室55棟80室を計画とも書いてありました。この数字は概ね、SAC高山のRSとLSを足した室数ですね。報道が確かなら戸建て+集合棟の組み合わせかと思われますが、そうなるとグレード構成がどうなるかも気になってきます (^^;
3グレード構成のままであれば、戸建て50棟がRSとLS、集合型5棟がLSとCSなんて想像もできますけど、上位のRS+LSだけとか全室RSも考えられます。土地の賃借料や収益を考えれば後者とも思えますが、CSの需要もありますから前者が妥当ですかねぇ 😅
benさん、55棟80室という情報をありがとうございました。木造で修繕費のかかり方がこれまでとは異なってきますので、その辺りの計画をどのように盛り込んでくるかに注目しています。木造建築は急速にボロボロになるので、これまでのように無計画というわけにはいかないでしょう。
リゾート地として人気がある場所ではありませんので、全体的になかなか難しい案件だと思いますが、行き詰まり感を打破する可能性も木造小淵沢計画にはあると思いますので、思い切ってこれまでとは違ったものを作ってほしいと願っています。