志摩国の一の宮、伊射波神社へ

そんなわけでまったくの偶然から、志摩国の一の宮、伊射波神社（いざわじんじゃ）を訪ねてみることにした。最初にネタバレしておくと、ここは全国の一の宮の中でも、有数の「参拝しづらい秘境の神社」なのであった。

まずは前回紹介した安楽島舞台のそばにある案内板を見ていただこう（画像のクリックで拡大します）。

「道のり1.3km、徒歩20分」なんて書いてある。ちょっと遠いなぁと躊躇していたら件のオジサンが「途中までクルマで行ける。アンタのクルマなら大丈夫」と教えてくれた。

この案内板の左から三分の一くらいのところに海岸があって、そこから参道がのびているが、そこまではクルマで行けるのだという。ただし、小型車に限る。実際に行ってみたが、決して3ナンバーの人は行ってはいけない細く険しい道だ。自分としては楽勝であったが、「すれ違いはどうするのかな～」という感じではあるので、クルマを大事にしている人は止めておきましょう。

そんなわけで神社最寄の「大浜海岸」までクルマでやってきた。ちょうど海岸に出る直前に駐車場があるのでわかりやすい。

冒頭の写真の鳥居はこの海岸に、海に向かって立っている。案内板によれば、参道を上ること285mで、家内安全、五穀豊漁、縁結びの神の伊射波神社に到着である。

海岸から岬の丘まで上るのでそれなりの坂道だが、これだけの距離なら楽勝だ。原生林のイメージがある山道を上ると、その秘境っぽさに期待も盛り上がってくる。

程なくして伊射波神社に到着。

さっそくお参りをするが、少々「？」な雰囲気。拝殿、本殿ともに平成13年に建てられたそうで、まだ新しいのだ。この地の神秘的な雰囲気から期待されるものとはちょっと違っていて、かなり拍子抜けしてしまう。

しかし、ここからがむしろ本番である。ここまでの参道には夜間に訪れる人を照らすために電線が張り巡らされていた。この岬の先端まで行くと、水平線の向こうから朝日が昇るスポットがあり、先のオジサンによればそこで朝日を眺めるのが「人気」なのだそうだ。

なるほど、太陽崇拝のパワースポットというわけか、と合点して、気を取り直して岬の先まで行って見ることにした。

伊射波神社からは250m。もうアップダウンはないのでラクだ。「領有神（うしはくがみ）の道」と名付けられた道を進むと、岬の先端にしめ縄のついた展望スポットを発見。

相当に神秘的な雰囲気で、朝日が昇ったらつい拝みたくなるだろうな、と思ったが、やはり「？？」という思いは消えない。

東京に戻って調べると、近代社格（明治になって制定された社格）においてこの神社は無格社であって、無格社の一の宮は全国でもここだけなんだそうだ。基本的に無人なので、ご朱印を集めたいなら、宮司さんに事前に連絡したほうがよさそう。

というわけで、他のナントカ大社とは比べるべくもない、珍道中風味の参拝であったのだが、その独特の雰囲気とマニア度の深さに、逆になんだか満足感を持てるひとときとなったのだった。