リゾート会員権の不思議

夕食を終え、エクシブ鳥羽アネックスのラウンジで生演奏を楽しんだ後、風に当たりにプールサイドに出てみた。潮風に揺れる椰子の葉と炎を眺めながら、ある本の一節を思い出していた。

リゾート会員権について書かれた書籍はほとんど皆無といってよいが、橘玲が2003年に著した「得する生活」は僕の知る唯一の例外である。最終章「リゾート会員権の不思議」で橘は、リゾート会員権を「地味だけど見所のある生徒」と表現し、その利用価値と実勢価格の乖離について語っている。

最終章に続くあとがきでは、本書の発想を得たシーンとして、RCIとマイレージを使ってわずか3万円でマウイ島のリゾートを利用した経験を次のように表現している。この写真を撮りながら浮かんだのがそのシーンだった。ちょっと引用してみよう。

バルコニーのデッキチェアでマイタイを舐めながら、オレンジ色に染まっていく太平洋を眺めていた。(中略) 海岸沿いに並べられた松明に火が灯されると、レストランではジャズバンドによる60年代のヒットメドレーが始まった。漆黒の闇に椰子の樹影が浮かび、かすかに波の音が聞こえる。

橘にとってのこのシーンは、僕のエクシブ鳥羽での経験と重なると思ったのだ。

橘が本書で示唆するように、人々が「得する方法」に気づいたとき、市場は効率化し、超過利潤は消滅する。エクシブ会員権の中古流通価格が今後どうなるかなど、買ってしまった僕にとってはもうどうでもいいようなことだが、ここには多くの人が気づかない超過利潤がまだ存在している。鳥羽の風に吹かれて、そんなことを考えた。(2006 Spring)

2 comments

  1. 私も「得する生活」は読みました。最初読んだときは、そのリゾート会員権が、サンメンバーズの事をさすとは解らなかったのですが、後になって興味を持ち、ともさんのサイトにあるサンメンバーズ・マニアにリンクが有ったので、何のことか解りました。
     はたして、最初に自分が値の張る会員権を買っておいて超過利潤を受け取っているかどうかは疑問ですが、「のどもと過ぎれば熱さを忘れる」体質のため、旅行するたびに「安く旅行できて良かったなぁ。」と錯覚?する様になりました。それに今では、エクシブを知らない知り合いを招待して、少しでも驚いてくれると嬉しくなる、ビックリ箱のような使い方で幸せを感じています。

  2. クワさんこんにちは。

    > ともさんのサイトにあるサンメンバーズ・マニアにリンクが有ったので

    こちらの記事ですね。上記で紹介している本の元原稿と言える連載になっています。
    Webマガジン幻冬舎:実践『マネーロンダリング』講座:第11回 リゾート会員権の不思議

    さて、クワさんご指摘の「最初に値の張る会員権を買っておいて…」という部分は、リゾート会員権を購入する際に誰もが考慮しておくべきポイントだと思います。参考までに、日経ビジネス2005年5月16日号「ケーススタディ リゾートトラスト 独り勝ち支える仕組み」の中で紹介されている宿泊費用の試算の部分を引用しておきます。

     リゾートトラストの収益性は高い。儲けの源泉は、既に述べたホテルの会員権販売だ。売り上げの3分の1、利益の7割弱を占める。だが、ここには収益をいつ認識すべきか、というIT(情報技術)業界の会計処理にも通じる問題が内包されている。長期にわたり利用するホテル宿泊料の前払いと言える会員権収入が、初期段階で利益に化けているからだ。

     エクシブの1泊当たりの料金は割高だ。1000万円でエクシブの「ラージ」を買ったとする。年15日利用すれば、年会費や固定資産税を割り振った1泊当たりの宿泊代は、飲食を除いて約2万1000円。これに会員権代まで加味すればいくらになるか。20年利用して購入時の半額の500万円で売れたら、1泊当たりは3万7000円強になる。年平均10回しか利用しなければ4万9000円強に、そのうえ20年後の売却価格が300万円まで下がっていれば5万9000円へと跳ね上がる。

     もちろん、会員にとってこのような机上の計算はさしたる意味を持たない。経済合理性などなくとも、究極の性能や乗り心地を求めてフェラーリやロールス・ロイスを買う人間はいる。

    みなさんも、一度試算なさってみては?

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