磐梯連山に3つのスキーリゾートを訪ねて

富士山のような巨大な円錐形の火山だった磐梯山は、上半分が噴火で吹き飛ばされて、複雑な稜線を持ちます。そのため、一帯の山中を走り回れば、刻々と変わるさまざまな絶景に出会えます。また磐梯山の周辺には、吾妻山と安達太良山という日本百名山に数えられる名峰が続き、山好きには堪らない一帯となっています。

本連載ではこれから3回に渡って、この地の高原ルートを用いて、ガラ権施設の数々を訪れます。

山岳ドライブ

冬場は雪のため、道路に閉鎖が多いですが、それ以外のシーズンにドライブし、狭い道やカーブをいとわずに走り回ることは、日本有数の見事な山岳ドライブのバリエーションを楽しめる機会です。ぜひ、チャレンジをお薦めします。

磐梯を中心とする連山のドライブのための走行ルートには、多くに愛称が付いていますので、列挙して紹介します。

・北西側の縦に「米沢ー猪苗代(西吾妻スカイバレー)1
・西から東へ「喜多方ー福島(磐梯吾妻レークライン 2+磐梯吾妻スカイライン 3)」
・南西側の縦に「北塩原ー会津若松(磐梯山ゴールドライン)4
・全体を大きく斜めに「猪苗代ー福島(国道115号線)5
・東側を縦に「猪苗代ー磐梯熱海(母成グリーンライン)6

(参考)磐梯山ゴールドライン・磐梯吾妻レークライン・磐梯吾妻スカイライン ドライブルートのご案内 - 福島県ホームページ

1つのエリアでこれほど多様な道路バリエーションは珍しく、筆者も何回も訪問して、やっとこれらを完走しました。南に拡がる大きな猪苗代湖はもちろん、山中には大小の湖や川・滝が点在し、走り飽きることはありません。

3つのスキーリゾート

磐梯連山3部作の第一回目となる今回ですが、ガラ権施設をメインとして3つスキーリゾート開発を見て歩きます。

前回、メガソーラー訪問で通った米沢市の西側からスタートです(注:ルートに冬季閉鎖あり)。南下して磐梯山の北側、強烈なくねくね道路(スカイバレー)に入りますが、そこでは白布温泉 7 や天元台高原スキー場 8 といった、ひなびた宿などのローカルリゾート(田舎の風景)に浸れます。

心が折れそうになるカーブの連続を抜け、桧原湖が見えて来た辺りから、急にリゾート感が出てきます。レークラインへ直進すると、そこは名勝「五色沼」。磐梯山山頂もすぐ目の前です。

これで、今回ご紹介のエリアの中心部に来ました。道中は雄大な眺望に随所で出会えるので、運転の疲れも吹っ飛ぶことでしょう。

東急電鉄のグランデコ

まずはこのエリアで、ガラ権ファンの皆さまにとって最も馴染みのあるスキーリゾートを取り上げます。

五色沼のある中心部から北東の奥に進みます。狭い山道を進むと、急に豪華ホテルが見えてきます。そしてその手前には、相当な規模のスキー施設があることがわかりますが、上品な看板類が景色に溶け込み、目立ちません。

ここがバブル期の磐梯山リゾート開発、東急ハーヴェストクラブでガラ権ファンに知られた「グランデコ 9」です。

現在、中心となる宿泊施設は中国系の「コートホテルズ 10」の一員となっており、チェーンの高級リゾートブランド「EN RESORT」を冠します。

不動産・ホテルズも巻き込んで売却

簡単に歴史を追います。開発の舞台は次項の猫魔と同じ北塩原村ですが、山は「西吾妻山」です。珍しい経緯だと思うのですが、バブルに乗り遅れた時期である1992年に東急電鉄がスキー場を開設していましたが、2003年に東急不動産に譲渡されています 11

モダンなゲレンデレイアウトで、ゴンドラで一気に高所に上がり、最終的にセンターハウスに滑り戻る形式。ここも安比で見たようにスキー場のステッカーに力を入れていたのを思い出します。東急らしく、磐梯山系のスキー場で最も垢ぬけたイメージのスキー場でした。

ゲレンデにスキーイン・アウトできる、「ホテルグランデコ 12」という高級ホテルは、当然ながらスキーシーズンの宿泊料は非常に高かったのですが、筆者が利用できたのは上述の通り、東急不動産傘下になってから2004年スタートでクラブが発足し、会員権が販売されたからです。

筆者は他のハーヴェストの会員でしたので、相互利用として安く利用できたのでした。高級ホテルでしたので、素泊まりで宿泊しながらも、必要に応じて館内のレストランを選んで利用できたのも良かったです。

預託金制で一般ホテルへの寄生型としてスタートした「東急ハーヴェストクラブ裏磐梯グランデコ」は、2023年に当初の予定を繰り上げる形でクラブを終了させ 13、中国資本であるコートホテルズのENリゾートとなりました。

約100室のホテルは、バブル期の豪華さとガラ権施設的な部屋の広さを併せ持ち、磐梯エリアでの宿泊の際には検討に値する施設であると思います。スキー用のゴンドラは秋の紅葉シーズンにも動いており、美しい景色だとの報道をよく目にしますね。

裏磐梯猫魔ホテル

再度クルマで中心部分に戻ります。バブル期の磐梯山エリアのリゾート開発は、この中心エリアでの開発が最も盛んでした。中でも特筆すべきは、現「裏磐梯レイクリゾート 14」です。

1986年、「裏磐梯猫魔スキー場」がオープンします。開発は、福島交通グループ総帥で大物政商と呼ばれた小針歴二 15 氏の日本ロイヤルクラブと北塩原村との第三セクター。300億を投じたスキー+ゴルフ場の巨大なものであり、中心となるホテルが1992年開業の「裏磐梯猫魔ホテル」でした。

ゴルフ場は遅れて1996年開業。時すでに遅しというのは、全国に見られる他の巨大リゾート開発と同じでした。

2003年に整理回収機構(RCC)に経営が移ってからも営業は続けられましたが、2008年には星野リゾートがスキー場の運営を手掛けます。これに先立って2001年に閉鎖されていたこのホテルは、数奇な運命を辿ります。

猫魔離宮

簡単に書きますと、オーナーはリベレステ、加森観光が運営で2004年に営業が再開されます。その後、リベレステの直営となっていた時代を経て、ホテルは2013年に星野リゾートに運営委託されます。「星野リゾート 裏磐梯ホテル」となるのもつかの間、2015年には通販のベルーナグループに売却されて現在の裏磐梯レイクリゾートになります。

このホテルは、いわゆる本館・新館の2つの建物が大きく横に拡がって連結したもので、後者は非常にバブリーな施設です。ベルーナは本館を「五色の森」、新館を「猫魔離宮 16」として運営しています。

ゴルフ場の方は、リベレステの所有・運営から2021年に地元企業に売却されましたが、「猫魔ホテル猪苗代ゴルフコース 17」として健在です。

筆者は磐梯山エリアが好きで、これから連載で書く定宿があるために、この猫魔ホテルに宿泊したことがないのですが、かねてより最も気になっていたホテルであり、健在なのは幸いです。

本ホテルはガラ権による開発ではありませんが、現在はサンダンスリゾートクラブの提携施設として 18、クラブポイントで利用できるようです。また、セラヴィリゾート泉郷も五色の森部分を提携施設としています 19

ヨシハルのスキー場

補足として、星野リゾートのことについて触れます。星野はこのエリアで、時代錯誤かとまで思えるような、巨大スキー場開発(テコ入れ)に注力しており、星野佳路氏のスキーへの思いの深さを垣間見ます。

猫魔と磐梯山はお隣同士の山です。猫魔ヶ岳は磐梯山の西側にあり、この山と山の中間をスキー場としたのが旧 猫魔スキー場です。

星野リゾートは、この北側と、磐梯山温泉ホテル 20 がある旧アルツ磐梯スキー場を南側として、2つの山を統合したのです。実に2023-2024シーズンというつい最近になって、本州最大級のスキー場、星野リゾート ネコママウンテン 21 が誕生したわけです。

こんなところに京急が

今回の最後に、もう1つのスキーリゾートに向かいます。再び中心部に戻った後、猪苗代湖方面に下っていきます。

ここまでの2つのように大規模開発ではありませんが、このエリアとしては珍しく、都会的ムードを感じた、首都圏の京浜急行が手がけた「猪苗代リゾートスキー場 22」を目指します。

猪苗代湖から見える大規模なスキー場は、歴史ある「国設猪苗代スキー場」などが合併したものです。本スキー場はその西隣にあり、小ぶりながらファミリースキー場として栄えました。

京急が猪苗代町との第三セクターを設立して開発したこのスキー場は、1985年に開業するも2003年には閉業に追い込まれています。

ホテルは1986年開業の「京急猪苗代リゾートホテル」。都会的でセンスの良い白い建物でした。近年は東北の企業が運営していましたが、コロナ禍で閉鎖され、復活することなく会社は破産します。

しかし2023年、地元出身の実業家が経営する、「DMC aizu 23」により再建されることが決まり、現在再開準備中です。

セラヴィ!

この京急猪苗代リゾートホテルについては、長らくセラヴィリゾート泉郷の直営施設として知られていたので、ご記憶の方が多いと思います。筆者もその一人で、近くを通る度に「セラヴィ!24」と発声していました。

再建に取り組むDMC aizuは、磐梯山自体の南斜面である猪苗代スキー場と、同じ南斜面に位置するこのスキー場を一体化して運営するでしょう。今後の復活に期待したいと思います。

以上、磐梯連山に位置する、バブル期に芽生えたスキーリゾート、そしてそこに芽生えたガラ権を追ってきました。筆者は、無視されがちの磐梯山系の良さを分かってほしくて、今回の記事はかなり長くなりました。

スキー客や観光客は近場を好むようになり、東北新幹線にしても福島を抜けて一気に仙台まで行く人が多い。もはや磐梯山近辺・猪苗代・会津若松は興味を持たれない場所になってしまったような気がします。

一方でコロナ以降、スノーリゾートにはインバウンドという名の外国勢が襲来し、メリットもありますがデメリットも目立つようになってきています。そんな中で、磐梯連山には、まだ少数のインバウンドしか見られず、のどかで静かなリゾートを楽しめる。ぜひ読者の皆さんにも訪れてほしいと思っています。


  1. 西吾妻スカイバレー|観光スポット(米沢市・置賜地方)|やまがたへの旅 - 山形県の公式観光・旅行情報サイト ↩︎

  2. 第二磐梯吾妻道路 - Wikipedia ↩︎

  3. 磐梯吾妻道路 - Wikipedia ↩︎

  4. 磐梯山有料道路 - Wikipedia ↩︎

  5. 国道115号 - Wikipedia国道115号 - Wikipedia ↩︎

  6. 母成グリーンライン|郡山へ行こう:郡山市観光協会【福島県】 ↩︎

  7. 白布温泉の歴史 | 白布温泉 ↩︎

  8. 天元台高原 | WINTERseason | スキー場 | 米沢市 ↩︎

  9. EN RESORT Grandeco ↩︎

  10. トマム(売却済み)やキロロを買収した復星国際をスポンサーとするイデラ・キャピタルマネジメントの傘下。
    【公式サイト】北海道~沖縄のホテル コートホテルズ ↩︎

  11. グランデコスノーリゾート - Wikipedia ↩︎

  12. ホテルグランデコは、東急電鉄が開発し、東急不動産に売却され、 東急ホテルズに加盟して「裏磐梯グランデコ東急ホテル」と名称が変わり、さらにリゾート全体が中国に売り払われるという、この地のリゾート悲話を象徴するように流転していった。 ↩︎

  13. 2004年にホテルグランデコの103室のうち、30室が東急ハーヴェストクラブとして販売(預託金制)されるも、2023年にクラブは契約期間満了前に解散。東急が契約を完遂せずにクラブを放棄した黒歴史として、日本リゾート会員権史に刻まれる事件と言えるが、不人気であったために話題にすらなっていない。 ↩︎

  14. 裏磐梯レイクリゾート 五色の森【公式】(旧 裏磐梯猫魔ホテル) ↩︎

  15. 小針暦二 - Wikipedia ↩︎

  16. 裏磐梯レイクリゾート 迎賓館 猫魔離宮【公式】(旧 裏磐梯猫魔ホテル) ↩︎

  17. 猫魔ホテル猪苗代ゴルフコース – 福島県耶麻郡猪苗代町のゴルフ場 公式サイト ↩︎

  18. 裏磐梯レイクリゾート|【公式】サンダンス・リゾートクラブ会員サイト ↩︎

  19. 会員様ご利用可能施設 | セラヴィリゾート泉郷のリゾート会員権【公式】 ↩︎

  20. 磐梯山温泉ホテル by 星野リゾート【公式】 | Bandaisan Onsen Hotel by Hoshino Resorts ↩︎

  21. リフト&コースガイド|星野リゾート ネコマ マウンテン ↩︎

  22. 猪苗代リゾートスキー場(福島県猪苗代町): 追憶のゲレンデ ↩︎

  23. 株式会社DMC aizu ↩︎

  24. セラヴィ! - Wikipedia
    なお、「セラヴィ(C’est la vie !)」はフランス語で「人生なんてこんなものさ」「仕方ない」「これが世の常だ」などという意味であり、ガラ権メーカーの名前として似つかわしく感じざるを得ない。 ↩︎

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