広島に続いてその東、岡山県と鳥取県に入ると、大阪圏に近くなって人口も増えてきますが、ガラ権は限られています。例を挙げると、鳥取県には旧 大山ロイヤルホテル 1 が、岡山県には閉鎖したジャンボクラブ湯郷 2 と現役のグランリゾート赤穂 3 がありますが、小ぶりです。
そんな中、岡山県と兵庫県にまたがるようにして、旧ダイヤモンドリゾートが大規模ゴルフリゾート開発を行っており、また現ダイヤモンドソサエティ 4 は瀬戸大橋近くにあるバブル遺産のホテルを取得し、再生させています。
前者の旧ダイヤモンドカントリークラブとクラブハウス内ホテル+旧ダイヤモンド作用ソサエティは、現在は経営が替わり、「G-styleカントリー倶楽部・ホテルG-style 5」として運営。また後者は、瀬戸内海に面した岡山県玉野市の瀬戸大橋近くにある「ダイヤモンド瀬戸内マリンホテル 6」です。
今回はこの2つの特色あるダイヤモンド系の施設について書き残します。
ダイヤモンド小史
ダイヤモンドは、老舗ガラ権としてトップメーカーの1つでした。クラブ運営は一貫していますが、かつてはダイヤモンドリゾートという会社でした。バブル崩壊期に重なる八ヶ岳 7 やハワイ 8 のホテル会員権の販売不振もあり、2001年8月から運営が現在のダイヤモンドソサエティに移行したリゾートクラブです。
高齢のガラ権ファンの間では、ガラ権の代表格として、エクシブ以前にナンバーワンであったダイヤモンドの「ソサエティ」を思い浮かべる人が多くいると思います。時が流れた今も、当時からの落ち着いた雰囲気を醸し出しながら、立派に現存する伝統的クラブです。
今のリゾートトラストも表面的にはそうですが、かつてのガラ権トップメーカーは、ホテル施設は会員の社交場であると宣伝していて、会員のみの利用に限ることで独特の品を保っていた面がありました。1980年代にトップだったダイヤモンドやジャパン・トータル・クラブがその典型です。
旧ダイヤモンドリゾートが分譲した各「ソサエティ」の入口には、品位あるゴルフ場クラブハウスに見られるがごとく、オーナーの名札を並べたボードが今も設置されています。これはリゾート会員権では本クラブ(ダイヤモンドオーナーズクラブ)だけの特徴です。
このように、上質な経営姿勢が今もうかがわれるダイヤモンドの歴史を、今回はほんの少しですが紹介してみます。
黎明期から
旧ダイヤモンドリゾートは、総合経営という社名で1960年代から活動していた企業です。その名の通り、創業者は何でも屋的なアイデアマンだったようで、日本でリゾート会員権が各地で勃興した最初期である1970年代初頭に、会員のための専用のホテルを建築して「ダイヤモンドクラブ」として会員制のリゾートクラブを立ち上げます。
現在のダイヤモンドソサエティのホームページにも、当時の施設名が記録されています。1973年のダイヤモンド軽井沢ホテル、ダイヤモンド芦の湖ホテル。1975年のダイヤモンドあずみ野温泉ホテル、1978年のダイヤモンド能登ホテルなどです 9。さすがに50年が経過しているので、この中で営業が継続しているものは現在はありません。
この当時はまだ共有制という発想は薄かったので、ダイヤモンドクラブは預託金制でのスタートでしたが、預託金制だと権利関係がはっきりしないと考えられるようになり、次なる展開として共有制のダイヤモンドオーナーズクラブが構想されます。そして1980年代に同社は、数多くの「ソサエティ」を冠するホテルを分譲し、エクシブ、ハーヴェスト以前としては最高の会員制ホテルチェーンを築きます 10。
ゴルフへの進出
さらにこの時期は空前のゴルフブームであり、ゴルフ場建設ブームでもありました。旧ダイヤモンドは時流に乗って自然と、単なる預託金制のリゾートクラブから、それを高級化した共有制リゾートホテルをベースとした社交組織(ソサエティ)の創設で発展しましたが、それに続いて「ゴルフ場+ホテル」という総合レジャー開発が加わり 11、これら3つが事業の柱として構想されました。
これら3本柱はそれぞれ、現在のダイヤモンドソサエティに引き継がれて20年以上が経過した現在も、「ダイヤモンドファミリーメンバーズ 12」「ダイヤモンドオーナーズクラブ 10」、そして今回取り上げるゴルフリゾートとして、立派にそのコンセプトを保持したまま継続的にクラブが運営されています。
なおゴルフリゾートについては、以下で取り上げる「佐用」は経営交替の際にダイヤモンドから一度離れることになりますが、同じタイミングでより豪華な施設を持つ「ダイヤモンド滋賀 13」が加わって現在に至っています。
佐用物語
話を1980年代なかばに戻します。旧ダイヤモンドはその事業の3本目の柱として総合レジャー施設を目指し、「ダイヤモンドカントリークラブ」を、63室からなるホテルを併設して、中国地方の山の中の県境の町、兵庫県佐用町に建設しました。
ゆとりある敷地のゴルフ場であり、追ってクラブハウス兼ホテルの隣接地には、1993年にタワー型、13階建て72室の滞在向けリゾートマンションが造られます。当初は普通のゴルフ用リゾマンでしたが、後にダイヤモンドソサエティによって「ダイヤモンド作用ソサエティ 14」として運営されました(冒頭の写真)。
その後、経営交替の影響でゴルフ場とクラブハウス兼ホテルについて不安定な時期がありましたが、前述の通りに同社はダイヤモンド滋賀を投入して従来からのリゾートクラブを発展維持させます。
そして2010年に旧ダイヤモンドカントリークラブを「ダイヤモンド佐用カントリークラブ」及び「ダイヤモンド佐用ホテル」として正式復活させた後、佐用の施設群全体について2016年に「G-styleカントリー倶楽部」として経営変更となり(佐用カントリーホテルアンドリゾート)、ダイヤモンドの提携施設となりました。
瀬戸内マリンホテル
続いて、山の中から瀬戸内海の海の方に出てみましょう。次回、本連載は小豆島を訪ねます。そのため筆者は岡山県の南にハンドルを切りました。
到着したのが、岡山県玉野市がかつて第三セクターで開発した2つの巨大ホテルのうち 15、ダイヤモンドソサエティが復活させた1988年開業の旧 瀬戸内国際マリンホテル、現「ダイヤモンド瀬戸内マリンホテル 6 16」でした。
このホテルは、瀬戸内海に限らず、全国的に見ても最優秀のビーチである渋川海岸 17 を独り占めする豪華リゾートホテルであり、施設からは世界最長の鉄道道路併用橋である「瀬戸大橋」も臨めるという、筆者として高い評価をするバブル遺産です。
本稿でもすでに言及していますが、ダイヤモンドソサエティはこれに先立って、別の巨大バブル遺産を再生し「ダイヤモンド滋賀」としてクラブを増強しています。ダイヤモンド滋賀は筆者にとって非常に重要な施設でありますので、後日、別記事にて、単独で取り上げます。
その滋賀と同様に、ダイヤモンドはこのホテルを会員制としたかったのかもしれません。結果的には、2002年のダイヤモンド滋賀に遅れること2年、2004年にダイヤモンド瀬戸内マリンホテルは一般ホテルとしてリニューアルオープンすることとなり、現在に至ります。
本ホテルは、筆者も宿泊したことがありますが、その規模や施設充実ぶりと宿泊価格を比較して、優れたコスパであると思います。機会がありましたらば皆さまの瀬戸内観光に組み入れられることをお薦めします。
メルキュール鳥取大山リゾート&スパ【公式】|Mercure Tottori Daisen Resort & Spa ↩︎
岡山県美作市湯郷865-1に建物自体は現存する。 ↩︎
ダイヤモンドリゾート――ハワイに日本式の施設(マーケティングTODAY) | NIKKEI COMPASS - 日本経済新聞 ↩︎
・ダイヤモンド滋賀カントリークラブ【公式】
・ダイヤモンド滋賀【公式】
・ダイヤモンド滋賀メンバーズ | リゾート会員権のご案内 | ダイヤモンドソサエティ ↩︎現在はダイヤモンドの提携施設となっている。
・ホテル G-style – 佐用カントリーホテルアンドリゾート ↩︎もう1つのホテルは以下。
・王子アルカディアリゾートホテル - Wikipedia ↩︎・更生計画案を提出 4月にも再出発 | VISION OKAYAMA
・リニューアルへ準備着々 露天風呂を新たに設置 | VISION OKAYAMA
・再建のかなめは意識改革 全力で年商15億円目指す | VISION OKAYAMA ↩︎
マイナーな話題で申し訳ありませんが。
マウイのダイヤモンドリゾート、今思えばとても良いホテルでした。
見渡しの良いジャングルのような庭に点在するコテージ、大浴場、日本語OK、記憶定かではありませんがチップのみでしてくれた近場への送迎…
最近、また行きたいと思って探してみたら、とんでもないお値段になって、大浴場はジムになっていました。外資に買われたらしいので当然ですが。
シマエナガさん
お初のご登場でしょうか?ガラ権連載のご愛読、そして本記事から派生した、日本のガラ権史上最初で最後の、共有制海外施設のご記憶をコメント頂きありがとうございます。
いつか番外編で取り上げようかと思った施設ですが、せっかくコメント頂いたので、
ここで紹介してしまいます。(どこかに既出部分があるかもしれませんが、改めて)。
1990年3月に開業した「ダイヤモンドリゾートオブハワイ」は、マウイ島にありながら
日本の会員制ホテルであったため、仰る通り日本語OK(ハワイ州は基本的に英語です)
、約1万8,000坪に日本庭園、プール、植物園、果樹園を配し、2階建てホテル18棟、3階建て本館の72室、特筆すべきはレストランが日本食中心で、オーナーサロンや図書室、そして一番は、ハワイ初の本格的クアハウスがあったというものです。もちろん、客室はキッチン等も付いた100平米が基本で、長期滞在に向け、名門ワイレアゴルフクラブでのプレーが出来ました。ビーチフロントになく丘の上の高台にあったのも、眺望面で他の海辺のホテルと一線を画す落ち着きがありましたね。
シマエナガさんがここをご利用になっていたとは羨ましい限りで、私はダイヤモンドの会員になる少し前だったのと、マウイで他のタイムシェアを利用していたので、現地を訪問し、案内してもらっただけでした。ダイヤモンドの運営が交代になる中で、施設の廃止が決まりましたが、共有制であったこともあり、譲渡(権利関係の整理)に時間がかかり、私がダイヤモンドの会員となった2000年当たりくらいまでは、まだ提携施設として比較的安価に利用できましたね。
完全に権利処理が終わった?からか、リニューアルもされ、ハワイ州唯一のルレ&シャトーの一員として、ワイレアリゾートが誕生。施設内容はほぼ引き継がれているのですが、裸で入る大浴場は消えたとか?同時に、宿泊のお値段は、私には天文学的高値の花となりましたので、まだ行けた時に行ってればと後悔しています。
https://www.hotelwailea.com/