山口県の東は、北が島根県、南が広島県ですが、両県とも面積は広いのに、ガラ権施設が見当たりません。産業や観光の県であり、温泉も少なく、保養地やリゾート地ではないからなのでしょうね。
そんな風に思い込んでいた2年前のある日、筆者が広島に観光で滞在した後、帰路に広島空港に向かう途中、道沿いの看板で偶然に「建設中のガラ権」を見つけたのです。それが今回ご紹介するリソルグループの「ゴルフバケーションクラブ瀬戸内 1」でした。
現場に急行
ゴルフ事業はリソルの事業の核の1つであり、目新しくはないのですが、その看板は「瀬戸内ゴルフリゾート 1」というゴルフ場自体のものではなく、ゴルフ場併設のバケーションコテージが描かれたものでした。
これは大変(笑)。これを見ずして帰路にはつけないと、車を空港でなく、ゴルフ場に走らせます。幸いそこは空港から30分もかからない近くにあり、難なく到達できました。
というわけで今回は、旧ミサワリゾートから引き継がれたリソルグループが経営・運営するホテル、ゴルフ場、ガラ権施設、福利厚生事業のうち、この広島県と茨城県(将来的には静岡県を予定)に展開する「ゴルフ場隣接の会員制コテージ 2」について書いておきたいと思います。
リソルのガラ権としては、千葉県に、やはりゴルフ場に隣接する「リソルの森 3」という大型施設がありますが、それは後日、改めて取り上げることとします。今回は、複雑でわかりにくいリソルの沿革や事業について触れる、同社に関する序章としてお届けします。
ミサワリゾート
まず、沿革と資本関係です。
旧ミサワリゾートは、その名の由来である住宅メーカー、ミサワホームの関連会社でしたが、それはわずかの期間でした。そのミサワリゾートの前身は、1931年創業の石綿セメント管製造会社、日本エタニットパイプでしたが、1985年に事業内容をリゾートに完全変更し、1988年にミサワホーム傘下となりました 4。
その後、2005年に分離独立し、ミサワとは資本関係のない会社となっています。その原因はミサワホームの業績不振であり、リゾートの失敗というわけではありません。むしろ、後述の福利厚生事業 5 など、リゾートから展開した事業は順調に経緯していました。
90年代にすでにガラ権ファンであった皆さまは、旧ミサワリゾートが会員権開発 6 とそれらの中古仲介市場に存在感があったため、リソルという名前より、ミサワリゾートやその後の「リゾートソリューション 7」という名前になじみがあるかもしれません。
筆者もかつて、ミサワリゾートに依頼して購入した会員権があります。ガラ権の仲介業者は例外なく零細企業ですが、その当時、ミサワリゾートだけが大手資本の子会社だったので、信用は抜群でした。もちろんメインはゴルフ会員権の仲介でしたが、ガラ権も取り扱っていたのでした 8。
福利厚生事業とガラ権プロバイダー
次に、同社の企業向け福利厚生事業について触れます。筆者は、従業員に対する福利厚生の手間を業者に丸投げするというのも、日本的な文化によるものと考えています。
リソルのそれは「ライフサポート倶楽部 5」という名称です。同種のものとして最も会員が多いのがベネフィット・ワンの「ベネフィット・ステーション」で16,103団体・1,548万人、続いてリロクラブの「福利厚生倶楽部」で18,200団体・672万人で、これらが2強です。それに続いてイーウェルの「WELBOX」が1,135団体。370万人、リソルライフサポートのライフサポート倶楽部が2,000団体・200万人です。これらの数字はリロが2024年の段階で調査した数字です 9。
読者の皆さまもこの中にご自身が加入している福利厚生事業者があるかもしれません。一般開放されている新旧ガラ権施設が、お得に使える場合がありますので、覗いてみるのもよいかもしれません。例えば、東急不動産傘下のWELBOXには、ホテルハーヴェスト系が多数のプランを出しているのを筆者は何度も見ています。
さらに、リロがそうであるように、先細りの宿泊施設が経営変更する際、その受け皿となって福利厚生事業者がガラ権メーカーとなったり 10、ホテルコンドの運営者となるケースも見てきました 11。
もっと言えば、今からさかのぼること20年ほど前、企業の保養所が次々に閉鎖された際に、それらを一般に利用させる運営会社が複数立ち上がったことがありました。例えば、その草分けは今も健在の四季リゾーツの「四季倶楽部 12」であり、東急不動産にはWELBOX上で活動した「リフレッツ倶楽部」がありました。resortboyさんは当時、これらを「保養所プロバイダー」と呼び 13、うまいことを言うものだと筆者は感心した覚えがあります。
そして今、これらの福利厚生事業者が受け皿となって「ガラ権プロバイダー」が芽生える可能性があることを、筆者はここに予言しておきます。
瀬戸内ゴルフリゾート
話を「瀬戸内ゴルフリゾート」に戻します。その会員制ゴルフコテージとはどんなものだったでしょうか。残念ながら、2年前のそれは絶賛建築中だったのであり、詳細は分からなかったのですが、完成した際にリソルが公表した報道資料からその雄姿をご覧ください。
瀬戸内海を見渡す小高い丘の上に展開する爽快なゴルフ場です。筆者が訪問した際にコテージは建設中であったわけですが、既存のクラブハウスはこのような南欧風のものでありました。完成したゴルフコテージも、クラブハウスと統一感ある、南欧風の造りにしてあることがわかりました。
次は静岡県の「大熱海国際ゴルフクラブ 14」(宇佐美)に隣接して造る予定があるようです。
スパ&ゴルフリゾート久慈
今回は、日本のガラ権では珍しいゴルフコテージについて書きたかったわけですが、旅巡りの関係で「広島県唯一のガラ権」という文脈でのご紹介となりました。
残念ながら訪問時は建築中で記事が中途半端になりましたので、ここで場所は全く異なりますが、同じリソルの経営で、2013年から販売しているゴルフコテージについても本記事で書いておきます。
同様に基本的に欧米で良く見るフェアウェイフロントのタイプで、「ゴルフバケーションクラブ久慈 15」として現在も会員権を販売中です。
茨城県の山奥、日本三大名滝とも言われる「袋田の滝」がある奥久慈エリアの「スパ&ゴルフリゾート久慈 16」の中にあります。辺鄙な所で日帰りゴルフが難しいことから、宿泊施設が必要と見てつくられたのだと思います。
このゴルフ場には、元から小さいながらホテルが併設されており、そのホテルよりも快適に滞在するためにコテージが開発された、というのが流れです。写真の通り、派手さもない瀟洒な造りで好感が持てますし、奥久慈の緑とマッチした色合いです。
リソルのゴルフコテージは、この久慈が最初の施設で、次が瀬戸内となるのですが、地道に拡げていくのでしょうし、コテージ滞在型のゆったりまったりライフは、定着する可能性もあります 17。
最後に、現在のリソルの資本を確認しておきましょう。上場企業なので株主構成は誰でもわかります。三井不動産30%、コナミ20%などが安定株主です 18。この両社から、必要な別々のノウハウが乗り入れていると見ました。
運営的にも死角なしの安心会社。将来的にも安心なガラ権ではないでしょうか。
瀬戸内ゴルフリゾート | 広島県竹原市 瀬戸内海を望む絶景コース
このゴルフコースの中で、共有制別荘の会員制リゾートクラブ「ゴルフバケーションクラブ瀬戸内」が募集された。対象住戸を指定した共有制で、1戸あたり12口で販売。土地は50年の定期借地権。瀬戸内ゴルフリゾートのプレー料金がメンバーフィーとなる。
ゴルフバケーションクラブ | 瀬戸内ゴルフリゾート ↩︎ ↩︎フェアウェイの目の前に建てられた別荘を「フェアウェイフロントヴィラ」と同社は呼んでいる。一般利用も可能。
・フェアウェイフロントヴィラ | リソルグループ
・ヴィラ宿泊 | 瀬戸内ゴルフリゾート 広島県竹原市 瀬戸内海を望む絶景コース ↩︎代表例として与論島の「プリシア・オーナーズクラブ」や、「プリシアンクラブ」「ワンウイークリゾート」などがあった。
・ミサワリゾート、鹿児島・与論島リゾート――専用マリーナを設置。 | NIKKEI COMPASS - 日本経済新聞
・ミサワリゾート、リゾートクラブ、購入価格、設定自由に――金額に応じ利用券。 | NIKKEI COMPASS - 日本経済新聞
・ミサワリゾート、リゾート地・別荘など、自社開発に切り替え――タイムシェア型。 | NIKKEI COMPASS - 日本経済新聞 ↩︎2005年にミサワホームホールディングスなどがミサワリゾートの株式を三井不動産に売却し、親会社が変わったことで社名変更となった。
【戦略】リゾートソリューションに社名を変更、ミサワリゾート | 日経不動産マーケット情報 ↩︎ミサワリゾートはゴルフ会員権販売仲介の草分け、「日本ゴルフ会」を買収して仲介業に進出していた。日本ゴルフ会には、1980年代からリゾート会員権の仲介業を営む子会社「日本ゴルフ会リゾート」があった。
・日本ゴルフ会、リゾートも仲介――会員権の取引で新会社。 | NIKKEI COMPASS - 日本経済新聞 ↩︎福利厚生代行サービス、人気の4社を徹底比較!【リロクラブ、イーウェル、ベネフィット・ワン、リソルライフサポート】 | 株式会社リロクラブ ↩︎
BLISSTIA箱根仙石原 / 東急ハーヴェストクラブVIALA箱根湖悠 | 東急商法の現在地、ホテルコンドと最後のガラ権 | 会員制ホテル今昔物語 – resortboy's blog – リゾートホテルとホテル会員制度の研究 ↩︎
【公式】四季倶楽部 - 箱根、熱海、軽井沢、京都など全国に宿を展開。温泉や設備(会議室・宴会場など)も充実。シンプルなサービスで低価格を実現。どなたでもご利用可能です ↩︎
・1泊朝食付き5,250円の四季倶楽部 | 番外編 – resortboy's blog – リゾートホテルとホテル会員制度の研究
・Dグランデ蓼科 | 東急リゾートタウン蓼科 – resortboy's blog – リゾートホテルとホテル会員制度の研究 ↩︎