5年ほど前。通っていた個人塾のスパルタ方針がいやになって、夏休みの途中で退塾することになった自宅兄ちゃん。彼の受験対策の研究をはじめて、しばらくしてわかったことは、「これは『敗者のゲーム』だな」ということでした。
敗者のゲーム、とは、投資家にはスタンダードとなっているチャールズ・エリスの本のタイトルです。
この本のはじめの方に、こう書いてあります。少し長いですが引用します。
「プロは得点を勝ち取るのに対し、アマは得点をミスにより失う」
エキスパートたちのテニスでは、最終結果は勝者の行動によって決まる。プロのテニス・プレーヤーは、長くエキサイティングなラリーの間、強力で正確なショットを放ち、どちらかが敵の手の届かない所へボールを打ち込んで勝ちをつかむ。こうした優れたプレーヤーはめったにミスを犯さない。
アマチュアのテニスは、これとはまったく異なってくる。(中略)アマチュア・プレーヤーは敵をやっつけることなどめったにできず、いつも自ら墓穴を掘って終わることになる。この種のテニスの得点は、ほとんど相手のミスによるものである。
(中略)
二つのゲームは基本的性格において正反対なのである。プロのテニスは勝者の勝つべく起こした行動により結果が決まる「勝者のゲーム」であるのに対し、アマチュアのテニスは敗者がミスを重ねることによって決まる「敗者のゲーム」なのである。
実際のデータを見てみましょう。以下は、とある進学校(我が家では受験していませんが東大2桁を出している進学校です)の算数の正答率データです。この回の実質倍率は3.6倍となかなかの狭き門です。
| 正答率(%) | |||
| 受験者 | 合格者 | ||
| 【1】 | (1) | 86.4 | 93.3 |
| (2) | 93.8 | 95.5 | |
| (3) | 77.1 | 88.8 | |
| (4) | 90.1 | 95.5 | |
| (5) | 71.7 | 79.8 | |
| (6) | 78.4 | 95.5 | |
| 【2】 | (1) | 54.2 | 71.9 |
| (2) | 52.9 | 71.9 | |
| 【3】 | (1) | 81.3 | 87.6 |
| (2) | 75.3 | 89.9 | |
| 【4】 | (1) | 18.4 | 28.1 |
| (2) | 13.8 | 24.7 | |
| 【5】 | (1) | 61.6 | 81.7 |
| (2) | 20.1 | 24.9 | |
| 【6】 | (1) | 61.8 | 77.1 |
| (2) | 6.4 | 12.9 | |
このテストは全部で16問あって100点満点なので、最後の4問を7点、残りを6点と推定して計算します。
正答率が7割を超えるサービス問題をすべて取ったとしましょう。すると48点となり、これだけで受験者平均の49.5点に肉薄します。
正答率が5割を超える平凡な問題をすべて取るとどうなるでしょう。すると74点となり、合格者平均の65.4点を10点近くも凌駕します。
間を取って、正答率6割ではどうでしょう。これだと62点ですが十分に合格ラインです。
この学校は、2013年受験の日能研結果偏差値でR4が58ですから、中堅校というよりはむしろ上位校と言って差し支えないレベルの学校です。その学校ですら、難問を一つも解けなくてもラクラク合格できるということがわかります。
ごく一部のトップ校を除いては、上位校においてもこの傾向ははっきりと表れています。難問を解ける必要は、ほとんどの場合、まったくなく、勝敗は平凡な問題をきちんととれているかどうかで決まります。
こうした傾向が、中学受験において、ゲームを戦う最も基本的なルール、約束ごとになります。
ですが、このルールについて、ほとんどの場合、進学塾では教えてくれません。上位校対策という御旗のもと、難問に向かっての大いなる消耗戦が繰り広げられているのが大半でしょう。

おっしゃること、よくわかります。身にしみます。
名古屋地区の女子の最難関はN中学女子部ですが、娘の学年で算数の最も難しい問題を解いた生徒さんは、合格者の1割にも満たない数だったそうです。
難問を勉強する意味は、「捨て問」かどうかをなるべく早く判断するためにあるのではないでしょうか。
ルビーさん、コメントありがとうございます。こうした傾向が現れているのも、中学受験のカリキュラムが標準化された結果、ということかもしれませんね。
基本問題や標準問題は塾で何度もやっているので解けてあたりまえ。中学の先生が頭をひねって考えだした「見たこともない問題」は結局のところ合否に影響しない、と。
「捨て問」を捨てる練習は、6年生の後半の公開模試で実践的に取り組むと思うのですが、問題なのはもっと前の時期に、一部のできる子を飽きさせないためにテキストに入っている難問ですね。「思考力」の名のもとに算数嫌いを増やしているような気がしています。
本番で見たことのない問題は解けなくていいのですから、思考力なんてものは中学受験にあまり必要ないので…。
深いです・・・でも真実なのかも。
ちょうど、娘の通うNでは9月以降の志望校別対策クラスでどの学校を選択するのかのアンケートが配布されたところです。
志望校別の対策授業もいわゆる難問対策ばかり?と思うと悩んでしまいます。
resortboy 様、体調はいかがでしょうか。お返事ありがとうございます。
算数嫌いの子供さんが増えるのはもったいないですね。
親御さんが解いて「やるな〜、面白いな〜」と感じるような良い問題を解かせて、その気持ちを共有できると楽しいのですけど、そんな問題は少ないのでしょうか。
名古屋のT男子中学の算数問題はなかなか良い問題が多くて、私も主人も一緒になって楽しませてもらいました。ここの算数は簡単ではありませんが、入試で満点が出ます。合否に関係すると思います。
ちゅうりっぷ様のお嬢様の塾は、志望校別は難問対策ばかりなのですか?もしそうであれば、親御さんが問題を精査して、お子さんが混乱したり嫌になったりしないように見守らなければなりませんね。大変ですが、こんなに手をかけられるのも小学校のうちだけですし、それだけのことは(入試結果だけではなく親子の経験として)ありますので、やりがいがありますね。
> 親御さんが解いて「やるな〜、面白いな〜」と感じるような良い問題を解かせて、その気持ちを共有できると楽しいのですけど、そんな問題は少ないのでしょうか。
これ、大事なポイントだと思うので、コメントします。算数の話ですけれども、男子校においてはおおいに当てはまると思います。例えば、以下の本は、お父さんと息子がいっしょに算数の良問を勉強する、っていうテーマで対話形式で書かれた珍しい参考書です(内容は大変に面白いです=レジャーとしては)。
親と子の算数アドベンチャー―中学への算数


ですが、女子校の場合は、こうした難問対策はほとんど不要だと思います(実際に受かった人もできていません)。上記の本は、我が家に2冊ありますが、女の子には不要な感じですね。
ちょっと長くなってきたので、この算数難問問題については、別の記事を書こうかと思っています。
リゾート学院への書き込みは、初めて、かな?
ちょっと気になったことがあって、どこに書き込んだらよいかわからず、ここが一番関係するかなと思って書いています。
今日のヤフートップニュースにもなっていた 、コンサルの石井 至さんのコラム。
http://president.jp/articles/-/10358
(年号が2011年になっていますねw)
最初は「ふーん」といった感じで読んでいたのですが、後半は何かおかしな展開に。。。
自分は、地方の公立高校から東大に合格したけど、私立中高一貫から入ってきた人たちには伸びしろがなかったり、人格が欠落していたりした人がいたって、全く同意できません。
私は、東大じゃないけど、大学に入ってこんなことを思ったことは一度もない。
ご自身が受験で苦労されたんでしょうか?
何か違和感が、バリバリといった感じです。