英語の民間試験延期の背景 – 1

大学入学共通テストに導入される英語の民間試験が実施延期になったことで大騒ぎになっています。うちの子はまさにその第一世代になるはずだったので、親としての当事者として、ここ数年を過ごしてきました。

その前も、もう何年もこの分野の当事者(入試を控えた保護者)として過ごしているので、背景がよくわかるような気がします。気になっていることを、いくつかメモ書きとして残します。

まず、今回の民間試験導入のスタートは何だったのかを指摘します。それは、以下の新聞記事にある、自民党が大学入試にTOEFLを使う案を出したことにあると、学院長は見ています。2013年、6年前の春の話です。

大学受験にTOEFL「文科省も促進」 下村文科相: 日本経済新聞

この背景には、日本人の留学生が激減していて、このままでは世界での競争に勝てないという無垢な危機感が当初はあったはずです。

【変わる留学のカタチ】(上)一人負け状態、日本人の米国学位留学(2/2ページ) – 産経ニュース

そしてその危機感は、結果として、政治とカネの問題につながったように思います。それは、この当時の文部科学大臣が下村博文氏であったことで拍車がかかったのでしょう。

下村元文科相へ塾や予備校から献金:朝日新聞デジタル
塾・予備校業界との癒着…下村文科相がむさぼる「教育利権」|日刊ゲンダイDIGITAL

ここから議論が進んで、大学入試の新共通テストに対する核となる答申が出たのが翌2014年の秋ですが、やはりTOEFLが見出しに踊っています。

大学入試の新共通テスト、英語にTOEFL活用も:日本経済新聞

しかし、TOEFLの実施規模では入試人口をさばくのは無理ですから、大学入試にこうした民間テストを利用すると決めた当初から、ずっとTOEFLは隠れみのに使われてきたのだと思います。

この英語の議論と並行して、大学入試共通テストにおける国語と数学の記述式の「採点」というビジネスも議論されました。

国語記述式、5段階で評価 大学入学共通テスト  :日本経済新聞
大学入試新テスト 国語記述式にも課題 複雑な採点方法など批判高まる – 産経ニュース

さらに、高校時代の活動記録を大学入試に利用しようとする「eポートフォリオ」なるものも必要だということに、いつの間にか、なっていたのです。実際、以下でリンクを紹介する Classi(クラッシー)というシステムが、うちの子どもの学校では使われています。

JAPAN e-Portfolio|「JAPAN e-Portfolio」とは?
大学の新入試基準「e-ポートフォリオ」に物申す…後藤卓也 : マナビレンジャー 合格への道 : 中学受験サポート : 教育・受験・就活 : 読売新聞オンライン

この「入試改革、三種の神器」にすべて関わっている企業があります。ベネッセです。

(英語民間テスト)GTEC | スコア型英語4技能検定|ベネッセコーポレーション

(記述式テスト採点)共通テスト記述式の採点、ベネッセグループが落札  :日本経済新聞

(eポートフォリオ)会社概要・沿革 | Classi(クラッシー) – 新しい学びが広がる未来の教育プラットフォームを創る

こうしたなりふり構わない官民癒着の背景には、ベネッセ(旧福武書店)を支えてきた「進研ゼミ」の衰退があります。これらの議論が表面化した数年前当時の記事にはこのようなものが多く見られます。

ベネッセの危機 深刻な会員数減少止まらず赤字

ベネッセホールディングス社長をその期間、2014年から2016年に勤めていたのは原田泳幸氏でした。プロ経営者として会社の窮地を救うために就任したもののすぐに不祥事(大規模な情報漏えい事件)が起きてしまい、不遇な退任劇でした。

ベネッセ原田社長、改革挫折で涙の引責辞任:日経ビジネス電子版

そしてその原田氏の退任後、ベネッセは復活していくのです。

(たぶん続きます)

「英語の民間試験延期の背景 – 1」への3件のフィードバック

  1. 英語の民間試験はとりあえず延期になりましたが、数学や国語の記述式試験に関しても、問題が山積みのようですね。これもベネッセの子が今後5年間、約61億円で落札したようですが、採点方法の公平性が担保されるかなど問題が山積みのようです。採点にはアルバイト1万人程度が必要ということで、大学生でも資格があると認められれば、採用するそうです。

    政府は民間の活力を最大限生かすとか言っていますが、教育、特に入学受験の分野で、営利を追及する民間企業に丸投げするというのは、これも教育の機会均等が確保されるのか疑問です。

  2. 元高校教員としては「驚き、衝撃のドタバタ劇」を見ているようです。
    現場の高校では何とかいい大学に入ろうと日夜、先生・生徒(保護者も)が真剣に勉強に取り組んでいるのに、政権のご都合で一夜にして「入試が激変」するとは。
    真面目に民間試験対策をやってきた生徒達がバカをみますね。

    しかし、日本の英語教育がもうどうにもならないくらい遅れている、時代に合わない、革命的変化が必要、という気がします。しかし、あまりにも大きな変化で、そう簡単には変わりません。そこに政権の利権が入り込み、「昔の英語教育の素晴らしさ、凄さ」の破壊だけに終わって「極めて未熟なコミュニケーションの英語教育」しか実現できないような気がします。

    今まで保護者として英語教育に関わってきたresortboyさんの分析と今後の展望に期待します。

    追伸:今、アマゾン・電子書籍キンドル版の英語関係の新著を執筆中です。今年の12月までには出版する予定で準備してます。社会人のための海外(英語)留学関係です。

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