僕のアカデミアへの挑戦と近況報告

2019年の8月のことです。僕が主宰する勉強会、KASAの会(現在休止中)の開催の後に、出席者の方と食事をしていて、突然、こんなことを言われたのです。

「resortboyさんは大学の先生になりなよ」

それは唐突なご発言ではありましたが、自分の心の奥底にある願望みたいなものを、ずばりと言い当てられた、そんな気がしました。

そしてそれから2年後の2021年の夏、僕は大学教員への転職活動に勤しんでいました。

KASAの会での活動から生まれた「ホテル利用学」について、その年の春に、京都大学から僕の研究発表が掲載された報告書が刊行されました。その僕の論考に対してポジティブな評価が複数あったため、研究仲間である大学の先生から、ちょうど2年前の今ごろ、大学教員への転職を勧められたのです。

もちろん、その転職が実現する保証はありませんでしたが、第一線の学者さんの薦めであり、身元保証人にもなってくれるということでしたので、思い切ってトライしてみることにしたのでした。

ここではあまり自分の本業について明かしていませんが、僕は20代前半から30年来の会社経営者です。以前より複数の会社を経営していますが、教員に転職するとなれば、仕事を整理しなければなりません。

転職先の本命とした大学は地方にあり、採用には移住が条件でした。移住の最終期限は2023年の春。およそ2年の時間がありましたから、自分が経営を任せている会社の事業を絞り込む計画を立てて、採用に備えました。家庭の方は、離婚していますし、同居の娘ももう大学生になっていましたから、問題ありません。

そんなふうに2021年の夏、本命の大学を含めて合計6つの教員ポストに応募したのでした。

結果はその年の秋に出ましたが、すべてが不採用でした。

転職を勧めた先生は、手のひらを返したようにこのことについて口を閉ざすようになりましたが、最終的には僕の実力不足に起因することですから仕方ありません。応募の際には丁寧にすべての書類を添削指導していただいて、感謝しています。

転職に失敗して落ち込んでいましたが、ちょうどその時期、父が亡くなって実家の家じまいをすることになったため、悲しみはその中に埋もれることとなりました。

そして迎えた2023年の春です。

上記のように仕事を整理した関係で、会社を任せていた社長は自社の将来を悲観して、この春のタイミングで辞任することになりました。僕は自身が代表を務める会社だけでなく、任せていた会社の社長も兼任することになり、以前より計画していたこの春の事業所の撤収から、実務を引き継ぐこととなったのでした。

ゴールデンウィークに入っても混乱は収まらず、ブログの方も放置気味でしたが、ようやく少しずつ、新しい日常を取り戻しつつあります。この間、サイトにいらしていただいた方々には、期待に応える運営ができずに、申し訳なかったと思っています。

話を、僕の研究家としての側面に戻します。教員への転職が不調に終わったことから、僕はコツコツと実績を積むしかないと、2021年の後半は紹介していただいた別の研究会で発表をするなど、関係学会所属のための準備をしていました。しかし2022年度以降、僕の京都大学への提案は実現されることがなく、2023年度になってついにそのつながりも途絶えてしまいました。

残念ながら、僕のアカデミアへの挑戦は、もう行き止まりになってしまったようです。

転職活動で返送された応募書類の小包があったのですが、そのまま開けることができず、本棚の片隅にひっそりと眠ったままでした。自分ひとりでは封を切る勇気がありませんでしたが、この連休中、ある方がはげましてくれて、この挫折と向き合えるようになり、ようやく開封することができました。ヘッダーの写真は、書類を開けることができた愛宕のスタバです。

開けてみると、自分の業績資料のほかに、すっかり忘れていましたが大学での授業計画(シラバス)が出てきて、当時の想いがよみがえってきました。大学での指導歴もない僕が作った拙いものですが、ネットにさらしておけば、学生さんのレポートの参考くらいにはなるかもしれないな、そんなふうに思いました。

これから先、そんな僕が転職活動の中で作ったシラバスなどの教育関連資料を、可能な範囲で公開します。今日はひとまず、近況報告とその背景についてのお話でした。

だんだんと、コメントやいただいているメッセージにもお答えしていきます。僕にもう少し時間をください。

5 comments

  1. resortboyさん

    kasaの会に何度か参加させていただきresortboyさんと直接言葉を交わさせていただいた人間として、とても興味深く拝読させていただきました。

    今までの経験、知見、また情熱を持ちながらも謙虚に皆さんと一緒に学ぼうとされるresortboyさんの姿勢からしても若者を指導される教職者、研究者としての適性を十二分に具備されていると確信しています。
    いつの日にかそういう人材を求めている教育機関と巡り会われ、夢を実現する日を迎えられますよう応援しております。

  2. resortboyさん

    「ホテル利用学」という新しい世界の構築と、大学教員という不安定な身分への挑戦。
    形が無いものを独力で纏め上げようとする姿勢に、敬意を表します。

    私は研究者の方が書く文章が好きです。主題となる論点に関する深い考察はもちろんのこと、一般人が理解しやすいよう織り交ぜる事例やエピソードに、普遍的で応用しやすい(≒仕事上、話のネタになる)ものがある、と感じています。
    resortboyさんの意図に沿わない読み方かもしれませんが、そのようなファンもいる事をお伝えしたく、この機会に投稿させていただきます。普段からの感謝も込めて。

  3. resortboy様

    大変ご無沙汰をしております。こちらのサイトの10数年来の愛読者です。
    全く異なる分野ではありますが、私も長年勤めた仕事を退職して、近年アカデミックな世界に飛び込んだ一人です。

    私も不採用通知をたくさん受け取りました。採用は本当にご縁ですから、お気持ちがあればぜひ応募を続けられることもご検討くださいませ。
    resortboy様が大学教員になり、ホテル利用学を広める日が来ることを願っております。(もちろんこちらのサイト更新も引き続き楽しみにしております!)

  4. リゾートボーイさんのブログは、難しくて正確で、面白いです。
    読み応えがあり、とても新しいと思います♪
    国立大学の助教授を長く務める友人がいますが、なかなか大学も少子化に伴い経営も難しくなっているらしいです(特に私学はその傾向が顕著だそうです)。
    どこの大学も教授陣が飽和状態だそう。
    時代が時代なら、リゾートボーイさんは、すぐに有名大学の教授だとおもいますょ。
    だから、ご自身の研究を自信を持たれて、続けてください!

  5. resortboyさま

    アカデミアへの転職を検討しておられたことを初めて知りました。
    ホテル利用学の研究を重ね、ゆくゆくは、とお考えだろうと思っておりましたが、2021年に既に行動に移しておられたのですね。
    過去に観光系分野の学科やコースが持て囃された時期もありましたが、この後しばらくも、円安を追い風にインバウンドを招き入れ、歴史と風光明媚な自然とグルメとヲタク文化と…、観光立国を標榜する時代が続き、アカデミアの方が追いついていくのでは、と愚考いたします。
    是非、関連学術誌掲載論文の業績を積み重ね、関連学会の年次大会で大勢の方に履歴書と業績書をお配りください。その種が数年のうちに目を出し実を結ぶ可能性が充分あると思います。
    応援しております!

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