コレステロールの嘘

コレステロールの欺瞞(うそ)

最初の一撃は次の本でした。

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ワルター・ハルテンバッハ著「コレステロールの欺瞞(うそ)」中日出版社(2011年8月発行)

著者はミュンヘン大学医学部教授を歴任。医学博士。ウイスバーデン市立病院外科部長。研究分野:栄養、循環器系疾患。

彼は何千もの血管手術をした外科専門医で、栄養疾患、がん疾患および血管疾患の研究を通じて、コレステロールは動脈硬化と無関係であることを突き止めたといいます。そして、本書において「悪玉」コレステロールは作り話、と宣言して、怒りを込めて以下のように記しています。

  • コレステロールは生命に必須
  • 悪玉コレステロールなど存在しない
  • コレステロールを下げることは必要ではなく、害ですらあり得る
  • コレステロールは動脈硬化や心筋梗塞の発症に影響しない

そして、著者は薬剤によるコレステロール低下治療が、製薬企業、マーガリン産業、病院、医師たちの莫大なお金を稼ぐ商売になっていると指摘しています。

衝撃の第2弾は次の本でした。

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ウフェ・ダウンスコウ著「作られたコレステロール悪玉説―何が心臓疾患を本当に引き起こすのか」西海出版(2015年5月出版)

悪玉と烙印を押されていた「飽和脂肪酸」と「コレステロール」は、実は体に有益だと同書は主張しています。高齢者にとって、コレステロールが高い方が長寿につながる。そして、薬でコレステロールを低下させることが、どんなに危険なことかと。

本書の翻訳者、羽渕脩躬(はぶちおさみ)氏は、医師ではなく生化学の研究者(大学教授)です。翻訳者あとがき(P270~)に興味深い話が載っていました。私はそこにコレステロールの真実を見たので、以下、簡単に紹介します。

羽渕氏は大学を定年退職する時に受けた人間ドックで、高コレステロール血症を指摘され、内科を受診しました。診察の結果、高コレステロールは食事で改善する範囲を超えている、ということで薬物(スタチン)療法になりました。

彼は何も疑うことなく医師の指示に従いスタチンを飲みはじめました。なぜなら、彼は「高コレステロールは心臓疾患のリスクを高めるので下げなければならない」という従来の考えは「証明されたこと」だと思っていたからです。

ところが、この薬を飲み始めて2カ月くらい経った頃から、激しい倦怠感に襲われたのです。そこで彼はスタチンの副作用を調べはじめました。

彼は生化学の研究者だったので、論文を多数検索し、スタチンが「HMG-CoA還元酵素を阻害し、結果的に細胞のエネルギー供給を行っているミトコンドリアの酸化還元反応(電子伝達系)に悪影響を与えている」ことを突き止めました。

ミトコンドリアのエネルギー産生が妨害されれば、体はエネルギー不足になります。彼はスタチン服用による激しい倦怠感の因果関係が分かったので、即刻、スタチン服用をやめました。

そこから、彼はネット検索を進め、本書の著者ダウンスコウ博士に出合ったのです。博士の論文や著作から、コレステロールが高いことが心臓病の原因であることを証明した研究はなく、高齢者ではむしろコレステロールが高いことが長寿につながることも知りました。さらに、コレステロールを下げるという治療そのものに根拠がないという博士の主張に衝撃を受けました。

そして、羽渕氏は「コレステロールにまつわる間違いを正し、真実を世に知らせる必要がある」と思い、ダウンスコウ博士に本書の日本語への翻訳の申し出をしたのです。そして2015年、本書が出版されました。

上記の2冊の本を読んで、私の頭にあった「コレステロール悪者説」は崩れ去りました。

しかし、単に本に書いてある、ということだけで、従来のコレステロール悪者説を否定することはできません。何しろ、職場や自治体で健康診断をして「データが悪かったら、メタボ対策せよ、コレステロールを下げよ」という健康指導は、日本の国是みたいに国民に浸透しているわけですから。

ところが、調べていくと、次元の違った提言が出ていました。

7 comments

  1. コメントを失礼します。

    私は2020年まで中国で勤務していました。そこは広東料理の本場の広州で、脂っこいが美味しい食生活でした。更に、door to door の専属ドライバー付きで、あまり動かない毎日でした。その挙句、体重が70kgから80kgまで見事に成長しました。そして現地での健康診断の結果、血圧も高く、動脈硬化が進んだ模様でした。
    健康診断結果を基に医師との面談に臨みましたが、なんと、「大変良い状態、問題無し」とのコメントにビックリでした。
    日本の健康診断基準値は少々おかしいのでは?と思っていたので、動脈硬化学会と脂質栄養学会のバトル、長年の疑問があぶりだされた印象です。

    この体重が適切な訳が有りません。健康障害を引き起こす懸念が有る中、帰国して市の健診を受けたらボロボロ、即座に市から「ちょい痩せ道場」に通うように指示が有りました。その成果として、たった1年弱で79.9kgから68.5kgまで減量に成功し、現在に至ります。
    体が軽くなり、膝の痛みも解消、血圧や脂質も大幅に低減しました。体調も良くなり、好きな登山やスキーが楽になりました。痩せすぎも良くないのでしょうが、体調が良い状態で活動的に過ごすことができる状態が健康体と思えるこの頃です。現在の体重が増えないようにするつもりです。

  2. 池田さん、詳しい報告ありがとうございました。
    海外勤務ゼロの私は池田さんのように中国に招聘されて、高級レジデンスに住んで王侯貴族並みの生活をしてみたい、と思っていましたが、体重増と血液悪化?というおまけもしっかりもらってきたのですね。

    それにしても中国のお医者さんの「太っ腹の診断」には驚きです。日本と基準が違うのでしょうか?逆に日本のお医者さんは厳しすぎますよね。コレステロールにしても血圧にしても判定基準を下げて病人を無理に作っている気がします。

    でも、池田さんの「この体重が適切な訳が有りません」という直感は正しいですね。帰国して10㎏強の減量をして、今や「体調も良くなり、好きな登山やスキーが楽になりました。痩せすぎも良くないのでしょうが、体調が良い状態で活動的に過ごすことができる状態が健康体と思えるこの頃です。」

    まさに正解ですね。私は昔からデータ主義の傾向があり、血液検査等の結果にびくびくします。これは良くないので、あまりデータに振り回されず、自分の体調に耳を傾け元気に過ごせればそれでいいと思います。でも、データの基準範囲に医学的根拠がなかったら?もし、間違っていたら?大問題です。次回もコレステロールの闇に迫っていきます。

  3. resortboyです。「健診」「検診」に関連した記事を紹介します。とても驚いてしまって。今日(2023/08/17)公開されたばかりの記事です。

    人間ドック、医師が教える「ほぼ無意味な検査」2つ 多くの人は「通常の健康診断」で十分な場合も|健康|東洋経済オンライン

    記事から引用しますと、

    「高額な検査の中にはほぼ無意味な検査もあることを頭に入れておいてください。代表的なものは腫瘍マーカー検査とPET検査です。(中略)がんの早期発見に役立つというエビデンスはなく、現場ではがんがより疑わしい人に使われたり、治療の経過を確認するために使われる検査です。(中略)早期発見に役立つのであればよいのですが、確かなエビデンスはなく、がん以外の理由でも上昇する腫瘍マーカーや、本来の使用用途とは異なるPET検査については、最終的には個人の価値観によるものの、医療者としては大きくすすめられるような根拠はありません」

    マジですか(呆然)。何を信じればいいのかわからなくなりますよね。

    僕もこの連載を通じて、深く学ばさせていただいています。皆さんもともに学びましょう。

  4. コレステロールが高い方が心臓病、脳卒中、がんになりにくく長寿につながるとは意外でした。
    funasan日記を読んで、またまた目から鱗が落ちました。
    私は2年前の健康診断で腹囲85cm、血圧収縮期130mmHg、糖代謝HbA1c5.7%、γ-GT5.7%が基準値を超えていたので、呼び出されて若い小太りのお姉さまから健康指導を受けました。基準値を少し超えた位で呼び出されるとは不本意に思い、「自分なりに生活習慣のバランスは確立しているので、今後の健康指導は結構です」と言って帰って来ました。
    『空腹は最強の薬』を念頭にして、最低週1回以上はジョギングと水泳を貫徹し、間食を控えました。その結果、基準値を超えたのはLDLコレステロール122mg/dl(HDLコレステロールは57mg/dl)だけでした。お酒大好きで毎晩ビールかワインを飲んでいるのにγ-GTは基準値以内の46U/L、腹囲81cmでしてやったりでした。毎晩ビールかワインを飲む以外はfunasanの真似をした甲斐があったと思っています。

  5. Mr.Sさん、いつもコメントありがとうございます。
    それにしてもMr.Sさんのお医者さんへの対応は痛快ですね。別にお医者さんを敵にまわす必要はありませんが、現在、体調不調はなく普通に日常生活を送っている人にとって「職場健診」や「自治体健診」の結果は参考程度でいいでしょう。その結果をもとに生活改善すればいい訳ですから。

    ただ、体に何か不調があって血液検査をする場合は別ですね。基準オーバーから重大な病気が見つかる場合がありますので決して無視できません。医者や病院は敵ではありませんから、私も困った時(体調不良)には病院にかけつけ、色々検査してもらいます。

    でも、最近のfunasan日記で「コレストロールの闇」を調べていて、検査基準そのものの“いい加減さ”が見えてきました。基準値は本当に正しいのか?医学的エビデンスはあるのか?です。最近、私の心の中で基準値への信頼性が大きく崩れてきました。

    もし、しっかりしたエビデンスがなかったり、基準範囲が間違っていていたら?それにも関わらず、医者の処方に素直に従っていたら?どうもコレストロール治療には医者・病院・製薬会社・学会を巻き込んだ巨大な利権が渦巻いているようです。次回のfunasan日記はそこに切り込みます。

  6. 確かにコレステロールが高いからと言って治療する必要がない方もいますが、LDLコレステロールが絶えず
    200mg/dlを越え、体質的に明らかに
    リスクが高い方も多数おられます。
    また、心筋梗塞を発症された方には
    再発予防のためLDLコレステロールを
    厳格にコントロールする必要があります。
    何でもかんでも高コレステロールを放置して良いということではないと
    考えます。
    やはり重要なのは各自各々が良く勉強してできる限り真実を追及する姿勢が大事ですよね。

  7. 医療関係者さん、的確なコメントありがとうございました。
    実際のところ、私はまだよく分からないのですね。
    次回の日記で、別の視点からコレステロールの基準値に切り込みますが、コレステロールの闇が深まるばかりです。専門家のご意見を是非、うかがいたいと思っています。

    私は政治家でも活動家でもなく単なるリタイアシニアです。今、とても健康で旅から旅へ楽しい第二の人生を送っていますので、ただただ、この「健康寿命」をできるだけ長く伸ばしたい。そのための「アンチエイジング日記」です。

    医療関係者さんの最後の文章に全く同感です。
    「重要なのは各自各々が良く勉強してできる限り真実を追及する姿勢が大事です」

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