ゾーン・ダイエットに関しての補足です

8月末に行った東京での勉強会(オフ会)では、ゾーン・ダイエットというメソッドを取り上げて栄養学の話をしました。自分はこのメソッドの信奉者ではないんですが、そのメソッドを取り上げた理由としては、1)ホルモンバランスを主軸に構成されていること、2)さまざまな病気の原因を体内の炎症であると位置付けていること、この2点がユニークで本質を突いていると考えたからでした。

ですが、具体的な手法については1つ問題があると講演の中では説明しました。それはゾーン・ダイエットを考案したバリー・シアーズは、炎症を抑えるためにオメガ3の油、フィッシュオイルを摂取せよと主張していることです。ここに関しては真っ向から反対の立場を説明しましたが、時間がなくてあまり深い話をしていませんでした。

というわけで、以下にメモを残しておきますので、意欲のある方はさらに学習をしてみてください。
ちょうど所属している大学の秋の集中講義の期間で、勉強ムードが高まっているので、ついでにこの件も片付けてしまいます。オフ会でテキスト指定したのは以下の本です。そのうちによりよいコンテンツを公開するのであわてて買う必要はないですけど、買って損はありませんので、興味のある方はぜひどうぞ。

なにをしてもやせられなかった人のファイナルダイエット―ZONEで毒性脂肪に打ち勝つ方法

僕もちゃんと読んでいないので(爆)、この本を読んだ方でディスカッションの必要があればコメントをお願いします。自分の勉強にもなるので、お買いになった方はぜひ。

さて、まずはバリー・シアーズの主張から。シアーズは、細胞や臓器の働きをコントロールする局所ホルモンである「エイコサノイド」を善玉と悪玉に分類します。これは別に彼独自の主張ではなく、オメガ3系(EPA由来)のエイコサノイドを善玉、オメガ6系(アラキドン酸由来)のエイコサノイドを悪玉と呼んでいるということで、要するにこれらは相反する作用をもたらします。すなわち前者は抗炎症作用を持ち、後者は炎症を促進します。(オメガ3とか6とかの説明は省略します)

(画像出典:持田製薬)

シアーズはこの2つのバランスが崩れて悪玉エイコサノイドが体内で過剰になると「静かなる炎症」が体内で進むとしています。そしてそれが肥満をはじめとする万病のもとであると主張し、その素となるアラキドン酸を「毒性脂肪」という最高にキツい言葉で攻撃しています(アラキドン酸はオメガ6脂肪酸のリノール酸が代謝されてできます)。

さて、この善玉・悪玉というネーミングは、上記書籍の翻訳の問題なのかもしれませんが、コレステロールのそれと同様で、誤解を招く原因になります。例えば、アラキドン酸から作られるエイコサノイドの仲間には、血液の凝固作用促進と血管や気管支の収縮作用を持つものがあります(トロンボキサンA2)。これは生体の防御作用としては必要なものなので、悪玉と言ってしまうのには抵抗を感じます。

シアーズも言っているようにバランスが大事なわけですが、そのためにシアーズはフィッシュオイルでEPAを摂取することでバランスを取ろうと主張しています(以下の写真のように自分のビジネスになっているからかもしれません)。現代の食生活ではオメガ6系の脂肪酸(リノール酸)が過剰になるのが普通なので、この主張は真っ当なように見えますが、別の問題もあります。

オメガRX omegaRX 150粒 Dr.Sears ZONE

オメガ3系のエイコサノイドは大雑把に言って炎症をオフにする作用を持つとされています。多くのシーンで、これがオメガ3系サプリやエゴマ油や亜麻仁油などが健康食品として有効である理由(の1つ)とされているわけですが、必要な炎症を止めてしまうというデメリットもあります。言い換えれば、一般に「免疫」と呼ばれている活動がオフになります。

cf. Fish oil-fed mice have impaired resistance to influenza infection. – PubMed – NCBI

免疫抑制によって表面的な改善があっても(例えばアトピーの改善とか)、症状の原因が取り除かれたわけではないし、こうした状況が長期間に及ぶと慢性疾患につながるという主張も別のところにはあることは、知っておいた方がいいと思います。

オメガ3、オメガ6ともに、二重結合から来る自動酸化の問題(過酸化脂質、アルデヒドによる体内へのダメージ)がよく指摘されますが、シアーズの問題視する炎症という観点は、より影響があるように自分の個人的な体験からは思う次第です。

脱線しますが、ガンとリノール酸に関する論文がこの記事の話題と関連して興味深いので、意欲のある方は読んでみてください。

リノール酸摂りすぎによる炎症性疾患としての癌 – J-Stage

話を戻しますと、対策としては、オメガ3を追加摂取するのではなく、オメガ6(植物油のリノール酸)の摂取を減らせばバランスは改善されるはずです。組成として極めて不安定な油であるオメガ3だけ(オイル部分だけ)を取り出して摂取するのが真っ当だとは、まったく思えません。食べるなら、抗酸化物質を含んでいる状態のお魚まるごとで採るべきで、または短期的に医師の判断でEPA製剤(エパデール)を利用するくらいがせいぜいではないでしょうか。

自分は、スーパーで売っているようなものはかなり酸化(劣化)していて、食べられなくはないけど、くらいに思っているので、お魚はあまり買いません。ヒトは陸上で生きているので、陸上動物(の筋肉)を食べるほうが合理的に決まっていると思うですが、そういう「素朴なこと」を言うとばかにされる世の中のように思います。

真夏のタンカーとかトラックで運ばれて、どれだけ劣化しているかわからないオメガ3サプリを採るのは、ダメぜったい、だと思うけどな~。

というような話を勉強会でするべきでしたが、実際には以下のような画像を見せて、「ニスを食べるのはやめとき~」と話しただけでした。これはフィッシュオイルじゃないけど(亜麻仁油の主成分はα-リノレン酸で、これは代謝されてEPAになります)。

シマモト 亜麻仁油 400ML

そのうちまたオフ会で健康ネタもやりたいのですが、おかしなことは話せないという気概もあり、準備に膨大な手間がかかるので二の足を踏んでおります。

1件のコメント

  1. さな

     前回のオフ会で質問した、「ファイナル・ダイエット」の油について、詳しく書いて下さって有り難うございました。私は、「ファイナル・ダイエット」を読んで魚油DPAのサプリを飲み始めてしまったのですが……、オメガ6とオメガ3のバランスというご意見は、大変正当なものだと思います。ゾーンダイエットは、あまりお肉を食べられない者にとっては、道遠しですが、「ロングブレス」ならできるかもしれない、と次の記事を読んで思いました。前の本は、ご推薦があったので、購入しましたが、新しい本はまだ入荷しないようです。初めにリンクをクリックした時は、アマゾンのマーケットプレイスになったらしく、ひどく高い値段になっていました。アマゾンって、在庫が切れている本は定価販売しないの?と驚きましたが、今は入荷待ちですが、きちんと定価で表示されます。品切れの時は、マーケットプレイスから表示されるというのはありなのですかね。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。