コレステロール治療は闇だらけ – 2

ガイドライン2007年版が語るコレステロールの真実

話を先ほどの「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2007年」に戻し、同論文から引き続き引用します(太線筆者)。

エビデンスレベルと推奨レベル

 今回のガイドラインから,治療や診断を支えるエビデンスについて,論文の評価をして,そのエビデンスレベルを記載することとした。(略)この基準に従うと,各脂質(特にTCとHDL-C)と動脈硬化性疾患との関連については多くの大規模な研究が存在し,メタ解析しても事実の変化はないことからエビデンスレベルAとした。しかし,各脂質レベルと動脈硬化性疾患の関連は連続的であり,その基準値を決定づけるエビデンスはなく,基本的にはコンセンサスで決定せざるを得ないことになる。したがって,基準値そのものはエビデンスレベルCとなるのである。参考に脂質異常症の診断基準のステートメントに記載されているエビデンスレベルをTable 3に示した。

薬物療法について

薬物療法については,あくまでも動脈硬化予防のための薬物療法であることから,治療効果が認められたエビデンスに基づく治療が望まれる。LDL-C低下療法における重要なエビデンスとして欧米のメタ解析がある。ここで取り上げたメタ解析は,スタチンというLDL-Cを低下させる薬剤とプラセボで比較した14個の試験をまとめたものである。このメタ解析から,スタチンによるLDL-C低下療法は総死亡に対しては,統計学的に有意に抑制し,癌による死亡には影響を与えないことが明らかになった。また,心血管病に対しても全体として有意な抑制効果を示し,ほとんどの心血管病については有意に抑制しているが,脳出血については全く影響を与えないことが明らかになった

以下、私の解説です。

2007年のガイドラインからエビデンスレベルと推奨レベルを設定してよりコレステロールの真実に迫ろうとしています。Table 3を見ると、動脈硬化性疾患との関連については、LDL-C(悪玉コレステロール)とHDL-C(善玉コレステロール)はエビデンスレベルAにしていますが、TG(中性脂肪)については信頼性が一段低いエビデンスレベルBとなっています。

つまり、LDL-Cが高くなればなるほど、また、HDL-Cが低くなればなるほど動脈硬化性疾患のリスクは高まるが、TGの高値については、エビデンスはあるが、イマイチ信頼性に欠ける、という感じです。

そして、学会が設定した脂質異常症の診断基準にはエビデンスがなく専門家のコンセンサスで決めていることを公式に認めて、エビデンスレベルCに判定しています。同時にTable 3の最後に「the above diagnostic criteria do not indicate initiation of drug therapy.」という記述があります。和訳すれば「上記の診断基準は、薬物療法の開始を示すものではない」とわざわざ明記しています。

薬物療法についても驚くべきことが書かれています。

「スタチンでLDL-Cを下げてもがんと脳出血の治療効果なし!」です。高LDL-Cはがんと脳出血のリスクにならない。このことが既に2007年のガイドラインで明確なエビデンスに基づいて示されていました。

前回、私はこう書きました。「ひょっとすると、高コレステロールは、がんの発生や転移の予防に寄与するのでは?コレステロールは悪いという説は嘘だった?

部分的ではありますが、私の仮説はエビデンスレベルで正しかったのです。

現在の日本人の死因の第1位はがんです。そのがん予防にはLDL-C(悪玉コレステロール)は高い方がいい。さらに高LDL-Cは脳出血の予防にもなる。これがエビデンスに基づいたコレステロールの真実なのでしょう。

しかし、この議論はいまだに我々の目の前には浮上してきません。どこに行ったのでしょうか?

ひょっとして抹殺された?

2 comments

  1. funasanのコレステロール治療に関する追究は調子に乗ってきて、医学知識が乏しい私にはますます難解になってきました。
    コレステロールは性ホルモンの前駆物質であることは何となく理解していました。男性は加齢と共に男性ホルモンが少なくなり、女性ホルモンが増えてくる。対照的に女性は加齢と共に女性ホルモンが少なくなり、男性ホルモンが増えてくる。皮肉ですね。
    男性ホルモンはたくましい体をつくり、内臓脂肪がつくのを抑えるなどの働きがあり、女性ホルモンは骨を丈夫にし、悪玉コレステロールの増加を抑えるなどの働きあるらしいですが、男女ともに性ホルモンが若々しさと健康の基本であると認識しています。

  2. Mr.S さん、funasan日記がますます学術的になってきていますが、こんなこと全く予想外でした。

    私は自分の30年以上も放置していた(ぶっちぎり)高LDL-C(悪玉コレステロール)はこの先も放置して大丈夫か?突然、心筋梗塞が起きて死んでしまうのか?という単純な恐れと疑問でした。

    その答えを見つけようと色々調べていくと、驚きの事実が続々と出てきて、「今のコレステロール低下治療は間違っている」というところまで来ました。

    私は昔から疑問に思ったことは徹底的に調べる習性があり、今回もコレステロール治療の真実に迫るまで終われません。あと2回ほどお付き合いください。私なりの到達点を見つけました。

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