コレステロール治療は闇だらけ – 2

医療ガイドラインの責任とは?

コレステロールなどの血清脂質値の加齢に伴う変化は、男女で大きく異なります。また、ヒトは加齢によって代謝が悪くなり、それを補おうとしてLDL-Cが高くなることが予想されます。ですから、動脈硬化性疾患の発症リスクは、男女別、年齢区分別に、もっと細かくリスク評価すべきです(これは次回、取り上げます)。

第31回・コレステロールの嘘」で紹介した、大櫛陽一著「100歳まで長生きできるコレステロール革命」(永岡書店、2012年1月)には、「年齢別・男女別+健康診断の新しい基準値表」が載っています(P193~P198)。

一方で、日本動脈硬化学会は男女別・年齢別に分けず、全部ひっくるめて「本ガイドラインでは日本人のスクリーニング基準値をLDL-C 140mg/dl以上とし、さらに危険因子の重複の影響を慎重に判断すべき境界域としてLDL-C 120~139mg/dlを設定した」(P19より引用)としています。あまりにも雑で、医学系の専門的な学会の見解とは思えません。

2007年のガイドライン発行以来15年も経ち、多数の医学的エビデンスが出てきてコレステロール低下治療の問題点が見えてきました。それにもかかわらず、日本動脈硬化学会は従来の基準値を管理目標に置き、コレストロール低下治療を変えようとしていません。

日本動脈硬化学会・理事長・平田健一氏は、本ガイドラインの序文(P6)で次のように書いています。

(略)なお、本ガイドラインはわが国の過去のエビデンスや社会・医療の現場に基づいて、臨床医が診療上の判断のために情報提供するものであり、個々の患者の治療目標や治療手段の最終判断は患者の状況に応じて直接の担当医が担うべきものであることを明記いたします

さらに念を押すように、ガイドライン2022版「序章」の最後は次の文章で締めくくられています。

本ガイドラインは、動脈硬化のリスクを包括的に管理することで、心筋梗塞・狭心症等の冠動脈疾患や脳梗塞等の脳血管障害などの動脈硬化性疾患の発症予防および再発抑制を目指すために、動脈硬化リスクを管理する全ての医師、チーム医療関係者、保健行政担当者に活用いただくことを目的としている。ただし、個々の患者の診断や治療の判断はあくまでも現場の担当医が決定するのが原則であり、必ず遵守すべき規定ではないことに留意されたい

もう一度書きますが、私は医学系学会のガイドラインとは学問的根拠・エビデンスがあり、その時点で最も信頼すべき病気の判定基準を提供して、各担当医に適切な医療処置を示すものだと思っていました。

私の過大な思い込みでしたね。

担当医はそれに従うべきで、勝手にガイドラインと外れた処置をして何か問題が起こった時、責任が問われる。だから、担当医は素直にガイドラインに従う。

ところが、今回のガイドラインは「必ず遵守すべき規定ではない」と明言しています。守らなくてもいいのです。担当医はご自分の責任で勝手にやってください、となっています。

日本動脈硬化学会はガイドラインのさまざまな矛盾を認めた上で、自ら責任を放棄した。

私にはそんな風に映りました。

筆者よりメッセージ

現在、健康で動脈硬化性疾患の一次予防(将来の発症予防)としてスタチンを飲んでいる方(特に女性)は、一度、ご自分のコレステロール値や他の既往症を確認し、さらに、スタチンの副作用も十分調べて、本当にスタチンを飲む必要があるのかご検討ください。

そしてもし、「中止」という判断になりましたら、私のこの記事をコピーして、主治医に申し出て下さい。先生のご判断で中止しても何も問題ありません、と。

ただし、既に動脈硬化性疾患が発症して再発防止等の二次予防のためにスタチンを飲んでいる方は別です。スタチンのメリットとデメリットを、主治医とよくご相談ください。この連載は、あくまでも「普通に健康な人」が健康年齢を延ばすための学習と実践記録であることを、付記しておきます。

(続き)第34回・コレステロールの真実 -1
(前回)第32回・コレステロール治療は闇だらけ – 1

2 comments

  1. funasanのコレステロール治療に関する追究は調子に乗ってきて、医学知識が乏しい私にはますます難解になってきました。
    コレステロールは性ホルモンの前駆物質であることは何となく理解していました。男性は加齢と共に男性ホルモンが少なくなり、女性ホルモンが増えてくる。対照的に女性は加齢と共に女性ホルモンが少なくなり、男性ホルモンが増えてくる。皮肉ですね。
    男性ホルモンはたくましい体をつくり、内臓脂肪がつくのを抑えるなどの働きがあり、女性ホルモンは骨を丈夫にし、悪玉コレステロールの増加を抑えるなどの働きあるらしいですが、男女ともに性ホルモンが若々しさと健康の基本であると認識しています。

  2. Mr.S さん、funasan日記がますます学術的になってきていますが、こんなこと全く予想外でした。

    私は自分の30年以上も放置していた(ぶっちぎり)高LDL-C(悪玉コレステロール)はこの先も放置して大丈夫か?突然、心筋梗塞が起きて死んでしまうのか?という単純な恐れと疑問でした。

    その答えを見つけようと色々調べていくと、驚きの事実が続々と出てきて、「今のコレステロール低下治療は間違っている」というところまで来ました。

    私は昔から疑問に思ったことは徹底的に調べる習性があり、今回もコレステロール治療の真実に迫るまで終われません。あと2回ほどお付き合いください。私なりの到達点を見つけました。

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