私は小学校の時から扁桃腺がよく腫れて、高熱で学校を何日も休みました。これは大人になってからも続き、仕事に支障が出てきたので一大決心をして、左右の扁桃腺を手術で切除しました。30歳ごろのことです。
今、思い返すとぞっとするような手術体験でしたが、この時以来、私の体は熱が出なくなりました。熱が出ないので、仕事を休む必要はもうありません。これ幸いと、仕事も遊びも積極的にこなし、充実した社会人生活をしてきました。
このような経験から「熱が出るのはよくない」という考えが、私の頭には刷り込まれていました。
ギリシャ旅行から帰国し、がんセンターでの検査をキャンセルしてから、私の大型書店巡りは一層熱が入ってきました。何しろ、孤立無援のがん治療です。良さそうな本を次々に購入して読み、自分なりに実践していきました。
私は次の本を読んで体温の大切さに気が付きました。
- 「体を温める」と病気は必ず治る―クスリをいっさい使わない最善の内臓強化法(石原結實、三笠書房、2003年4月)
- 体温を上げると健康になる(齋藤真嗣、サンマーク出版、2009年3月)
低体温は万病の元
上記の著者達によると‥‥
- あらゆる病気は体温低下によって引き起こされる
- 低体温は免疫力を落とし体調不良の温床になる
- 体温が1度上がると免疫力は6倍アップする
改めて自分の体温を測ってみると、私の平熱は36℃ありませんでした。いつも35℃台後半で、健康な人の標準体温と言われる36.5℃などに到底届きません。私は明らかに低体温だったのです。
齋藤氏の前著、P7に次の記述があります。
低体温は体内を酸化させ、老化のスピードを促進させてしまいます。さらに健康な細胞は低体温だと新陳代謝が悪くなるのですが、ガン細胞は逆に35度台の低体温のとき最も活発に増殖することがわかっています。
これはまずい! 私の35度台の低体温は「正常細胞を苦しめ、がん細胞を助けていたのか…」これは知らなかった。私のがん体質の1つに低体温があったのかもしれません。
西洋医学では「冷え」という概念を軽視していますが、東洋医学では以前からこの「冷え」に注目し、体を温めることの大切さを説いています。
安保先生の「体温免疫力―安保徹の新理論!」(ナツメ社、2004年5月)では、東洋医学の「冷え」を西洋医学の手法で解き明かしています。病気と闘う免疫のしくみを説き、低体温・血流不足が万病をつくり、発熱させて病気を治すという同氏の考え方が書かれています。
上記の3冊の書籍から、私の体温アップ作戦が始動しました。
体温発生のメカニズムは…
食べたものが消化・吸収され肝臓に運ばれて熱エネルギーに変換されます。運動すると筋肉から熱エネルギーが発生します。これらの熱が血流によって全身の細胞に分配され体温アップになります。このように「代謝・筋肉・血流」が体温アップのキーワードです。
体温アップの第1弾は代謝の改善です。メタボを防ぎ、胃・腸・肝臓はじめ内臓器官を正常に保つには、代謝を良くする必要があります。
私は早速、石原結実氏の推奨する「生姜紅茶を飲み、体を冷やす食材は避け、体を温める食材」を食べはじめました。詳しくは石原氏による上記の参考資料(「体を温める」と病気は必ず治る)をご覧ください。
筋肉トレーニング
体温アップの第2弾は筋肉トレーニングです。歳をとってくると筋肉が減り、脂肪が多くなります。基礎代謝が減り、お腹が出てきて体形が崩れてきます。筋肉不足と運動不足が産熱量の低下をもたらし、低体温になります。老化が進み病気が出てきます。
この老化のスパイラルをストップさせるためには、筋肉アップと日常的な運動が必要です。私は自宅近くのスポーツクラブに通いはじめました。以下、私のジムでのルーティンワークです。
軽いストレッチ体操で全身をほぐしたあと、トレッドミルの上で速歩・ジョギングを20分、次に各種のマシンを使ってしっかり筋肉トレーニングを40分くらいします。最後にエアロバイク(自転車)に乗ってペダルを20分くらいこぎます。心地よい汗が額から流れてきて、気持ちがハイになります。
トレーニング終了後は、ロッカールームに併設されたお風呂に入ります。湯船でしっかり体を温め、最後は水風呂にどぼんと浸かって終了です。真冬でも水風呂に入ります。ものすごく冷たいですが、温冷水浴による自律神経の調整効果が期待できます。
私は1週間に5回くらいクラブに通い、もう10年以上続けています。今やスポーツクラブは完全に私の日課になりました。おかげで70歳のおじいちゃんにしては、適度に筋肉のついた「かっこいい体型」になっています。
深呼吸と自律神経
体温アップの第3弾は血流アップです。歳をとってくると動脈硬化が進み血の流れが悪くなります。動脈硬化の改善は一朝一夕には無理ですが、簡単に血流をよくする方法があります。それが深呼吸です。
皆さんもご存知のように、緊張して交感神経が優位になると血管が収縮し、血圧と心拍数が増加します。逆にリラックスすると、副交感神経が優位になり血管が拡張します。血管が広がれば血流もよくなり、血圧・心拍数が減ります。
実は、我々の呼吸は自律神経と関係しているのです。安保先生 1 によれば、吸う息は交換神経、吐く息は副交換神経に支配されているそうです。つまり、意識的に吐く息を長くすれば、副交換神経を意識的に刺激できます。
以下、安保理論に基づくfunasan流の深呼吸です。
ベッドやリクライニングのチェアに寝転び、目を閉じます。鼻から「1、2」のリズムで大きく息を吸い(基本は腹式呼吸)、一瞬呼吸を止めます。その後、できるだけゆっくり口から息を吐きます。「1、2、3、4、5、6、7、8、9、10」と、数を数えながら、時間をかけて息を吐き切ります。
頭を空っぽにしてこの深呼吸を10回くらい繰り返すと、心身ともにリラックスした状態になります。副交感神経が刺激され、血管拡張、血流アップにつながります。
これを風呂上がりに実行すると、リラックス効果が抜群ですね。温かい血が全身を駆けめぐっているイメージです。もちろん、その中に私の少数精鋭のリンパ球部隊が入っています。夜、寝る前に行えば、自然に眠りに入ります。
この深呼吸を通じて、私はますます「自律神経のコントロール」に興味がわきました。そして、次の本が私の愛読書になりました。
なぜ、「これ」は健康にいいのか?(小林弘幸、サンマーク出版、2011年4月、2016年1月文庫化)
「自律神経のコントロールができれば、誰もが自分の人生をコントロールすることができる」と著者は説いています。この本から自律神経の大切さを学び、その後の私の生活改善につながりました。
さらに、自律神経を整えるCDも販売されていたので、それらを購入して実践してみました。寝転がって、これらの音楽を聞きながら深呼吸すると、抜群のリラックス効果がありました。ある時期、私はかなり熱心にやりました。今でも時々、気分転換にこのCDを聞きます。
- 自律神経にやさしい音楽(広橋真紀子、株式会社デラ、2007年7月)
- 自律神経を整える。心と体のためのメンタル・トリートメント(広橋真紀子、株式会社デラ、2012年7月)
その後の私の体温
新型コロナが流行り出した2年ほど前の夕方、何だか熱っぽく感じたので体温を測ったところ、37℃ありました。これはまずい、コロナに感染したか?と、心臓がドキドキしてきました。
がんになる前の私なら、37℃も熱が出れば完全に風邪です。平熱が35℃台だったので、1度以上も上がれば体がしんどくなり、寝込まなければならない状態です。
ところがこの時は、喉の痛みはなく、咳も出ません。体はだるくなく、食欲もあります。おまけに普通にパソコンで仕事もできました。これって本当に風邪?と、何だか不思議な感じでした。体調不良はなく、翌日の朝は36.5℃くらいに下がりました。
実は私の体温はがんの手術の後、10年間くらいの間に、平熱が35℃台から36.5℃くらいにアップしたようです。体温はちょっと運動したり食事をするだけで簡単に上昇しますので、37℃は私にとって平熱のうちだったのでしょう。だから何ともない。
このようにして私の体温アップ作戦は成功しました。
参考文献
- 「体を温める」と病気は必ず治る―クスリをいっさい使わない最善の内臓強化法(石原結實、三笠書房、2003年4月)
- 体温を上げると健康になる(齋藤真嗣、サンマーク出版、2009年3月)
- 体温免疫力―安保徹の新理論!(安保徹、ナツメ社、2004年5月)
- 安保徹の病気にならない三大免疫力(安保徹、実業之日本社、2007年10月)
- なぜ、「これ」は健康にいいのか?(小林弘幸、サンマーク出版、2011年4月、2016年1月文庫化)
- 自律神経にやさしい音楽(広橋真紀子、株式会社デラ、2007年7月)
- 自律神経を整える。心と体のためのメンタル・トリートメント(広橋真紀子、株式会社デラ、2012年7月)
(続き)第15回・私説「がん勝利の方程式」をご紹介します
(前回)第13回・ギリシャで決意した がんセンターとの別れ
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安保徹の病気にならない三大免疫力(安保徹、実業之日本社、2007年10月)P48「鼻呼吸と爪もみ療法」参照 ↩︎
funasanの影響で筋トレ熱が再燃している編集担当のresortboyです。ここでは本稿に関連して、中高年が筋トレをする際に参考になる書籍をご紹介します。
50歳からの科学的「筋肉トレーニング」 若いときとは違う体をどう鍛えるか (ブルーバックス)
筆者はテストステロン(男性ホルモン)の研究者で、日本におけるメンズヘルス分野の第一人者である堀江重郎氏(順天堂大学医学部教授)の弟子です。今年の7月20日に出たばかりの新刊で、学術的な視点から中高年以降の男性の筋トレに特化して書かれている貴重な書籍だと思い、ご紹介する次第です(本連載の読者にうってつけ!)。
なぜ貴重かというと、加齢とともに筋肥大の促進を促すテストステロンは減少してしまうため、中高年以降の男性は「一般的(若者向け)トレーニングとは別の、テストステロン低下を考慮したトレーニングを行う必要」(本書P7)があるからです。こういった視点でガチ目の解説本は珍しいと思います。
詳しい内容は本書をお読みいただくとして、この本は2部構成になっています。第1部は生理学的なお勉強、第2部が実践的なトレーニングマニュアルです。第2部は初級・中級・上級の各レベルに対して、6週間を1サイクルとした具体的なメニューが掲載されています。
まぁ何というか、この本があれば、パーソナルトレーナーとかいらないじゃん、と、かつてパーソナルトレーナーについてもらった経験のある僕は思いました。
超おススメです。