エクシブを安さでアピールしないでほしい

今日、リゾートトラストのメルマガで、4月からの新しいプラン、「Smile Plan Ocean/Smile Plan Forest」の案内が来ました。プランの内容について今日、書きたいことがあるわけではありません。それなのにこの話題を取り上げたのは、その案内ページに書かれていたキャッチコピーが、あまりにもひどいものであったからです。

Smile Plan 2025

案内ページは以下にありますので、どうぞご覧ください。

会員制リゾートホテルだから実現できる、この料金<Web予約限定>Smile Plan Ocean/Smile Plan Forest |おすすめ情報|ホテル|リゾートトラストグループ サービスサイト

具体的には、以下のようなビジュアルで表現されていました。

Smile Planは、いわゆる保養所システムとしてのエクシブを表現する宿泊プランであり、4月からの料金は、6月からの料金で記載すると、下は9,900円(1室2~3人利用で1人利用不可)から、上は12,300円までの、いわゆる「ローエンドプラン」です。

これを実現するために、下のプランでは夕食が「丼(どんぶり)」になります。またルームサービスも併用されます。乱暴に言えば、エクシブの中でウーバーを取るような感じのプランです。

1泊1万円の世界線

上記のキャッチコピー「会員制リゾートホテルだから実現できる、この料金」で語られる内容は、主にこの価格帯を示しているのでしょう。その言い草がひどいというのは後で話すとして、表面的に意図しているのは、以下のような「ライバル」の存在なのだと思います。

こちらは大江戸温泉ホテルズのX投稿のキャプチャです。こちらでは、下位ホテルが9,980円で、上位ホテルが11,980円となっており、Smile Planと同等です。

しかしこちらは、ライブキッチンや地域名物料理をフィーチャーした相当に豪華なバイキングであって、もちろん食べ放題なので、内容的にはかなり違います。

大江戸はかつて品川プリンスで腕をふるった高階孝晴氏を前面に出し、その品質をアピールしています。リゾートトラストの「うちやま物語」的に勲章を下げたりして、やっていることが同じなので笑いました(好印象です)。

最高料理顧問が行く! | 【公式】大江戸温泉物語グループ|癒しの温泉宿・ホテル

また、伊東園ホテルズも意識されているかもしれません。こちらは大江戸に比べれば落ちますが、価格はべらぼうに安く、かつアルコールまで飲み放題ですから、競争力があります。

安いのは当然のこと

こうしたものとまったく同じ世界線でエクシブのプランを売らなければならないのは悲しいですが、もっと悲しいのはそのコピーを書いた担当が、会員制とは何かという一丁目一番地を、まったく理解していないということです。

「会員制リゾートホテルだから実現できる、この料金」というのは、パラフレーズすれば、「会員制だからお安いですよ」と言いたいのだと思います。日本語として着地が「料金」であり、言いたいのは「安さ」でした。

しかし、会員制ホテルが安いのは当たり前なんですよ。ホテルの客室の全部は会員が所有していて、その建設コストだけでなく、保有コストもリゾートトラストは支払っていません。会員は固定資産税を支払い、管理を同社に委託して管理費(年会費)も支払っている。

こちらは同社が投資家向けに配布している資料です。

これは会社全体の話となりますが、会社の売上の4分の1は緑色の「固定収入」になっています。それに覆い被せるように、「変動部分の8割は会員に紐づく収入だ」と延べ、同社のビジネスは全体が「ストック型に近い」と説明されています。

ストック型とは、同社は多くの会員を抱えていて、そこからちゃりんちゃりんとお金が落ちてくる、そういうタイプのビジネスモデルなんですよ、とでも言いたいのでしょう。

全部が利益の自動的な収入

もう少し解像度を上げましょう。こちらは2023年3月期と少し古い資料ですが、ホテレス部門の売上比率を円グラフにしたものです。出典は決算発表資料です。

これを見ると、保証金の償却と年会費で、およそ15%となっています。それはベイコートのすべての売上よりもはるかに多い水準です。

また、考えてみてください。ベイコートの売上には何から何まで莫大なコストがかかっていますが、保証金の償却と年会費はコストゼロであって、ほぼ全てが利益になっているわけです。

会社がこういう構造だから「実現できる、この料金」になるわけですが、それを支えているのは会員であって、その当たり前のことをわざわざ、一般ホテルと同じ世界線で堂々と言われても、アタマのネジが外れているのではないかと思うばかりなわけです。

契約上は「実費」

レストランはともかく、客室料金は契約書では「利用実費」と表現されていて(管理規約第14条「利用実費」)、あくまで実費であるというスタンスで同社と会員は契約をしてホテルチェーンが運営されています。実費という言葉に、利益という意味合いは普通、含みません。

もともとのシステムの本質は「占有日の交換」であって、占有日において、その日のその部屋のすべては、仮想的にその会員の持ち物として扱われます。だから契約書にあるように、専有部分の水道光熱費、清掃・リネン、消耗品の修繕・買い替えなどの対価として、きわめて低額な(と期待される)費用を負担するというのが、同社と会員との契約内容です。だからわざわざ「実費」と書いてあるわけです。

今日の最後に、同社の旧社名である宝塚エンタープライズが50年以上前に出した広告をご覧に入れます。

最初は無料からスタートしたのです。今見ると奇異なものに映るでしょうか?

しかし、これこそが会員にホテルを、「建ててもらって」「管理費も払ってもらっている」会社のやることとして素直な解釈とも思えるし、現実に、タイムシェアリゾートとはそういうものとして世界中で今も市場を伸ばしているわけです。

そんなことを考えると、Smile Planの広告コピーは、本当に情けないものだなと思います。

大江戸や伊東園と同じ世界線で自らのビジネスを見ないでほしいです。ホテルを持っているのは会員だし、年会費も払っている。そこが忘れ去られているとしか思えません。

会員にいろいろ負担してもらっている会員制だからこそ、品質がよくて、同じ金額なら満足度が高いのでしょう? 結果的に(金額的に)安いのであれば、それは主に会員のおかげであって、売り文句で言うのなら、先に会員にお礼を言うのが筋でしょう。

4 comments

  1. 正論すぎて、ぐうの音も出ません。

    会員にホテルを建てさせて固定資産税を支払わせ、修繕費も年会費として徴収+預り金から償却しているのであれば、利用料は「実費」程度で済むはずですよね。
    この場合の「実費」って、いくらなんでしょうか。

    現在の高級化路線が破綻し新規ホテルの開発が出来なくなって
    ・会員権営業部門は廃止。営業社員は全員解雇
    ・ホテル運営は限界までコストダウン。荷物は自分で部屋まで運び、朝夕食ともバイキングに
    ・大規模修繕はオーナー負担とする
    とした場合において、リーズナブルな価格で宿泊出来る様であれば、細々と会社を存続させる事は可能です。「実費」はそんな金額なのでしょうか。

    これ(新規開発停止、既存ホテル運営会社になる)がワーストシナリオであり、会社が倒産して廃墟ホテル群が残って固定資産税の負担だけが続くことは無いのであれば、オーナーとしては安心なのですが、果たして。

  2. サンメンバーズひるがの初代の写真が興味深いです。コテージ8室を含む60室もあったのか。今は36室ですから建て替えで客室が減ったのですね。初代ひるがのの様子がわかる旅行記とか写真はネット上にはないのでしょうか。

  3. belairさん、ノラさん、コメントありがとうございます。

    belairさんの問題提起は、ここで話すには大きすぎるイシューなので、この場はスルーとさせてください。新しいホテルも出ましたし。

    その新しいホテルについては、別の場所でお話することにしましょう。

    それにしても、開業まで4年もかけて販売するというのは、かなり長いですよね。リゾートトラストは開業ゴール方式で営業していますので、発売から開業までが長いのが特徴です。過去の事例ですと、芦屋ベイで2年8カ月、サンク高山で2年9カ月、サンク八ヶ岳が2年7カ月という感じですので、今回はきわめて異例です。

    ところで、サンメンひるがののオリジナルの写真は、僕もリゾートトラストの広告など(50周年サイトとか)でしか見たことがありません。なかなかよいデザインですよね。

  4. 親の代からの40年以上会員で固定資産税を納めてますが…会員のメリットが少なく、外国人の団体とかの迷惑利用もあり、会社の方針が…ちょっとどうかなと思われます。ハァ〜〜〜〜残念。

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