明るい未来と厳しい現実
介護のデータからは、意外と「明るい未来」が見えてきます。先の表をグラフにするとイメージがわきます。下記の棒グラフをご覧ください。
介護が必要になる割合は、70代前半で4.1%、70代後半で8.5%です。70代の我々の世代にとって介護はまだまだ遠い存在で、あまり心配する必要はなさそうです。
80代前半になってようやく5人に1人程度が介護のお世話になります。本格的に介護時代になるのは80代後半(37.1%)からでしょうか? 現在の日本の元気な高齢者たちの姿が、データから浮かび上がってきます。明るい未来です。これなら、当分元気に遊べそうです。
ところが、これを自分の将来のシミュレーションとして見直すと、厳しい現実が待っています。
70代前半の934万人が10年後の80代前半には574万人に減っています。360万人が死亡しているのです。死亡率は39%!
一般的に女性より短命な男性のみのデータでは…
衝撃的な数字です。70代前半の男性440万人のうち、201万人が死亡しています。死亡率は実に46%! 大雑把に言えば、私の世代の男性の半数は、これから10年間であの世に行くということになります。
「ゲゲゲ」の鬼太郎ではありませんが、同世代の親しいあの友だちか私のどちらかが死ぬということでは? まるでロシアンルーレットです。これはショックでしたね。
もう言葉がありません。現実は厳しい!
それでも、幸運にもサバイバルした人たちはまだ元気で、5人に4人は介護を受けていません。私の友人・知人に80代に入った人が数名いますが、元気に人生を楽しんでいます。立派ですね。尊敬します。私もぜひ、このお仲間に入りたいものです。
もう10年のばして90代前半まで見ると、男性の状況はさらに深刻になります。生存者は56万人、生存率13%、そのうち介護が必要でない男性は30万人しかいません。70代前半の男性440万人に対する割合は7%です。
私が90代前半まで元気に生きられる確率は7%の超難関でした。これは、14人に1人という驚くべき狭き門です。
さらに付け加えると、上のデータの中には病院に長期入院している人数(医療給付対象者)は入っていません。その人たちを引くと、本当に元気で生き残る確率は、もっと低くなるでしょう。
人生100年時代なんて真っ赤な嘘だ!
さらに、もう5年加えて95歳以上を見てみると、絶望的になります。男女合わせた生存者は65万人、そのうち85%の人達に介護が必要になり、介護不要のご老人はたったの10万人しかいません。
これを日本の総人口12,495万人で割ると、95歳以上の生存者は65万人で生存率は0.5%、介護が必要でないご老人は10万人で、その割合は0.08%です。これは1万人に8人という、とんでもない超難関、絶望的な割合です。
ただし、介護不要の10万人の中には、介護給付の対象ではなく、医療給付対象者、つまり病院に長期入院している高齢者も多いと思われます。実際には、元気にサバイバルできる確率はもっと少なくなります。
この事実を知ると、なんとか具体的な希望を見出したくなります。
私の通っている街のスポーツクラブに、見るからにご高齢な男性が来ていました。ある時、彼が懸垂を何回もしているので、私はびっくりして声をかけました。
失礼ですが、おいくつですか?と。彼はニコニコとして答えてくれました。「91歳ですよ」と。
その時以来、私はジムでお会いするたびにお話させていただいています。驚いたことに、彼は60代の時、がんの手術を3度もしたそうです。
今は毎朝、自宅の周囲を1時間散歩し、毎日スポーツクラブに来て筋トレをしています。彼は私の生きる希望の星です。
それにしても、誰が言い出したのでしょうか?「人生100年時代」なんて。このスローガンを聞くと、何となく100歳まで元気に生きられる時代になったのかな~、という気になります。さらに、「老化は治療できる!」「老いなき世界」「不老長寿メソッド」といったタイトルの書籍が出版され、それを読んだ私には、その感がさらに強くなっていました。
今のところ元気な私は、このまま20年、30年、元気に生きて、最後はピンピンコロリといけるかな? そんな根拠のない希望が湧いてきました。だからこそ、昨年、勢い込んでfunasan日記をはじめたわけです。
でも、今回の私の分析で「人生100年時代」なんて真っ赤な嘘であることが分かりました。私の甘い希望的観測は吹っ飛びました。
結論:統計的に見れば、人生100年時代なんて真っ赤な嘘だ!
これは大変なことになってきたぞ、真剣にアンチエイジングに取り組まなければ到底実現できない。ファイト!
(続き)第23回・私の余命と将来が「生命表」から見えてきた
(前回)第21回・リタイア後はライフワークを! 私のKindle出版格闘記
ありがとうございます!
さすがは数学者の舟橋さん!
私も長らく実験部門で勤務していましたので、統計的なデータが雄弁に事実を語る事を痛感していました。仰せの厳しい事実がひしひしと伝わってきますね。
funasanさん
今回の話はびっくりしました。
計算なさったのですね…さすがでございます。
健康的にお過ごしの師匠でも…と思うと私は気を引き締めないといけません。
長寿になった事も要因でしょうが…90歳代に至るずーっと前までに既にMAX閾値に入ってますね。
あー😮💨びっくりです。現実をしっかり受け止めないと。
元気で長寿はなかなか難しい問題となりました。
funasanさんと同じ歳ですが、90代前半まで元気に生きられる確率は7%の超難関であることを知り、ショックでした。
色々な本を読んだ上で資料を作成され、表やグラフから分析されたとは恐れ入ります。さすが元 数学の先生ですね。今回の記事は説得力があり、まさに渾身作だと思いました。
60代の時、がんの手術を3度もしたにもかかわらず、現在は元気に過ごされている91歳の方のお話は励みになりました。
出生数の過去最高値は約270万人で現在74歳の方の代です。現在84歳の方の代は約190万人です。また、80歳代の方は先の大戦期の生まれで、幼少期に亡くなった方も少なくないでしょう。総務省の人口データからだと、どれだけ長生きできるかを推測するのは難しいかもしれません。
厚労省の令和3年簡易生命表からだと、現在funasanと同じ71歳の方が85歳まで生きられる確率は約58%、90歳だと約33%、95歳だと約12%と読み取ることができます。これは71歳で既に病床についている方や事故に遭われてしまう方も含めての数字です。
現在、健康で、かつ探究心、実行力等の活力に溢れfunasanなら、最低でも30%プレミアム位はつくのでは?
まさひろさん、とても大事なポイントのご指摘、ありがとうございました。
確かに出生数も考慮に入れないと年代区分別の生存数の比較(生存率)は意味がありませんね。そこで、厚生省の出生数のデータをもとに、A(70~74歳)、B(80~84歳)、C(90~94歳)の年代区分別出生数の合計をしてみました。すると、A(1105万人)、B(1078万人)、C(1057万人)でした。Aに対するB、Cの割合は98%、96%で、それほど違いはありませんでした。
ところが、生まれた年度がまるで違いますね。A(1949~1953年)、B(1939~1943年)、C(1929~1933年)なので、BもCも先の大戦の影響をまともに受けています。当然ながら幼児から大人まで死亡率は多いです。一方で、私の世代Aは社会が安定した後に生まれ育っています。
社会的環境がまるで違います。その差を無視して年代区分別の生存率を出して意味あるのか?という疑問がわきます。まさひろさんご指摘の「人口データからだと、どれだけ長生きできるかを推測するのは難しい」は正しいですね。
そこで、私も厚労省の令和3年簡易生命表(男性)を見てみました。これを解読するのはやっかいですが、とりあえず、年代別の生存数の合計を出してみました。A(406103)、B(290047)、C(100095)でした。Aに対するB、Cの割合は71%、25%でした。
70代前半の男性の10年後の生存率は54%(人口統計)ではなく71%(簡易生命表)もあり、「ゲゲゲ、私の世代の男性の半数は、これから10年間であの世に行く」というほど厳しいものではありません。20年後でも生存率13%ではなく25%に倍増し、4人に1は生き残っています。少し明るさがもどってきました。
恥ずかしながら、私は「簡易生命表」を初めて見ました。これをしっかり理解するには時間がかかります。今日の早朝から速攻で分析しましたので、上記の分析の正しさに自信はありません。後日、もう一度、見直して、必要であれば、今回のfunasan日記を部分的に修正したいと思います。
ともあれ、データが正しくても、それを分析する時、社会的影響も考慮しないと真実に迫れない、ということを学びました。まさひろさん、ありがとうございました。
funasanこと舟橋栄二より
池田さん、Kさん、Mr.Sさん、応援コメントありがとうございました。
池田さん、ご存じのように私は「数学者」ではなく単なる高校の「数学教師」でした。もう数学と完全に縁を切って遊びほうけていますが、今も昔もデータ分析は好きです。見えないものが見えてきます。その面白さがありますね。特に「自分の寿命予測」は真剣です。もっと元気に長生きした~い。
Kさん、難しい言葉「閾値」をお使いですね。閾値(いきち)とは…
「ある作用によって生体に反応がおこる場合、反応をおこすのに必要なその作用の最小の強度をいう。反応が死である場合その致死作用の限界を致死閾という。」(コトバンクより)
地震でも、株価でも、病気(心筋梗塞・脳梗塞)でも、知らない内に変化の原因が蓄積され、閾値に達します。そして、ささいな現象(最後の一撃)を引き金にして、突然、大地震、大暴落、突然死が起こります。怖いですね。
Kさん、MAX閾値になっても、最後の一撃の前にもとに引きかえしましょう!
Mr.Sさん、今、funasan日記の先々の原稿を作成していますが、健康長寿への道が少しずつ見えてきました。ここで書くと面白くいないので伏せておきますが、日頃からMr.Sさんや私がやっていることです。期待してお待ち下さい。
funasanより