コレステロール治療は闇だらけ – 1

2004年、EU臨床試験指令の衝撃

一方、EU(欧州連合)でも薬害問題が多発し、製薬会社や一部の研究者、及び医薬行政に対する批判が高まりました。そこで、2004年にEUでは、利益相反禁止の新法(EU臨床試験指令)が制定されました。

(参考論文)栗原千絵子「EU臨床試験指令とイギリス臨床試験規則」臨床評価刊行会『臨床評価』Vol.31, No.2, 2004年.

ここで「利益相反」という言葉の意味を確認しておきます。

利益相反とは、信任を得て職務を行う地位にある人物(政治家、企業経営者、弁護士、医療関係者、研究者など)が立場上追求すべき利益・目的(利害関心)と、その人物が他にも有している立場や個人としての利益(利害関心)とが、競合ないしは相反している状態をいう。略語として、COI(英語: conflict of interest)が用いられることもある。

(引用元記事)利益相反 - Wikipedia

例えば、医薬系の研究者が製薬会社から巨額のお金をもらってその製薬会社の新薬のための治験をする場合などです。研究者としての義務(真理の探究)と製薬会社の利益(薬の有効性)が時には相反して、その責務を正しく果たすのが難しくなります。これを利益相反の状態と呼びます。

この利益相反を禁止したEU新法では、研究結果が製薬会社の治験薬にとって好ましくないものであっても、臨床試験の結果は全て申告すること、また、薬剤を販売する会社と利害関係のある研究者の論文は採用しないこと、などの規制が設けられました。

驚くべきことに、この厳しい規制がかけられるようになって以降、スタチン剤に対する評価は180度変わってしまいました。

以下、「コレステロールは高いほうが心臓病、脳卒中、がんになりにくい―この逆説こそ新常識」(奥山治美、主婦の友社、2012年)P117~P118より引用します(太線筆者)。

新法制定以降、企業と直接利害関係のない研究者たちによって、新法に沿って行われた臨床実験で出てくるのは、次のような報告(筆者注:以下の参考資料を参照)ばかりだったのです。スタチン類はLDLコレステロールを下げたが、心疾患ハイリスク群、家族性高コレステロール血症、狭心症、腎不全、心不全、糖尿病などの対象者について、心疾患の予防効果は認められなかった。

(参考資料)EU新法制定以降のスタチン剤の心疾患予防臨床試験結果(奥山治美ら、2007年)より「表5 EU新法制定以降のスタチン類の心疾患予防臨床試験結果」

2 comments

  1. 健康診断で各項目の基準値を超えていると直ぐに薬を処方する現状にかねてより疑問視していました。

    会社員時代は営業職をしていましたが、既存客だけでは月日が経過すると共に取扱高はジリ貧になるので、新規顧客の推進が最も重要なテーマでした。
    医療分野でも経営上の観点からも病院や薬局の売上アップを図るには新規患者が大事になってくる訳で、健康診断で基準値を超えて病院に受診に来る人は絶好の新規患者の見込み客だと思います。

    健康診断の基準値が超えた項目があったとしても異常値でなければ、先ずは規則正しい生活、暴飲暴食や間食は控える、有酸素運動を心がけて薬漬けにならないよう生活改善を図っていきたいと思います。

  2. Mr.Sさん、経営上の観点からのコメントありがとうございました。
    確かに健康診断の基準値を厳しくすれば新規患者は増え病院は繁盛しますね。
    でも、医者・病院・学会等が営利企業みたいに、利益追求で「基準値下げ→新規患者の獲得」をしているとは思えません。しかし、結果的にそうなっていますね。
    どこに問題があるのか?真実は何か?コレステロール治療の闇は深まるばかりです。

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