コレステロール治療は闇だらけ – 1

「funasanのアンチエイジング日記」は、トラベルライターの舟橋栄二さんによる連載企画です。舟橋さんが取り組まれている健康にまつわる学習と実践について、同時進行でご報告いただきます。2022年の連載第一部(1~19回)に続いて、2023年の連載第二部(20回~)がスタートしました。この連載では、読者の皆さんとともに「旅と健康」について考えていきます。どうぞコメント欄にてご参加ください。(編集担当:resortboy)

真実は、歴史をひも解くと、その姿が少しずつ見えてくるものですね。私はコレステロールの「深い闇」をさまよい歩いているうちに、アメリカの医薬業界で起こった前代未聞の薬害と、その後の医薬研究を規制する新法制定の歴史を知りました。その後の世界のコレステロール治療に、不可逆的変化をもたらした大事件です。アンチエイジングの実践という観点からは少し遠回りになりますが、今回はその経緯を紹介します。

バイオックス・スキャンダル

アメリカの巨大製薬企業メルク(Merck)は、胃炎などが起きにくい新型の消炎鎮痛剤「バイオックス」を開発しました。そして1999年の発売以来、米国内で約2000万人、世界80数カ国で約200万人に販売し、バイオックスは同社の「ドル箱」に成長しました。

(参考記事)ロフェコキシブ - Wikipedia

しかし、バイオックスを18カ月以上服用すると、心臓病などの発生リスクが高まる副作用が認められたため、同社は2004年9月末に自主回収を発表しました。バイオックスの服用により、多数の死者が出たようです。幸い、日本では未承認だったため、この薬は販売されませんでした。

2004年11月5日付の英医学誌、ランセット電子版に、スイスのベルン大学チームが「同薬の危険性は4年前(2000年時点)から明らかだった」とする分析結果を発表しました。同社の幹部が心臓への副作用を認識していた社内メールを4年前に同僚に送っていたこともわかり、メルク社が意図的な副作用隠しをしていた事実が判明しました。

(参考記事)米メルク・関節炎薬「危険性は4年前から明白」 スイスが指摘 - SWI swissinfo.ch

ここから、医薬業界や医薬行政を揺るがす大事件「バイオックス・スキャンダル」に発展しました。この薬害の被害者は、15万人~20万人に及ぶそうです。

その後、メルク社はバイオックス・スキャンダルにより2万7000件以上の訴訟を抱えてしまいました。当初は全面的に争うつもりでしたが、メルク社は2007年11月、和解金48億5000万ドルを支払うことで原告側の大半と和解しました。

しかしメルク社は和解について、責任を認めるものではないとの見解も同時に示したそうです。責任を認めたら殺人罪に問われるのでしょうか? 誰も責任を取りませんでした。薬害訴訟の責任追及の難しさを示しています。

アメリカでは、ユーザーフィー法(PDUFA:Prescription Drug User Fee Act)に基づく新薬の早期承認などが原因で、このバイオックス薬害などの問題が多発。「FDAは国民よりも製薬会社の方を向いて仕事をしている」という批判が高まった結果、2007年にFDA再生法(FDARA:FDA Revitalization Act)が成立しました(FDA=アメリカ食品医薬品局:Food and Drug Administration)。

このFDA再生法は、医薬品が開発され製品となり、やがては使われなくなるまでの全期間の安全性をFDAが監視し、必要な施策を企業に求める権限をFDAに与えたものです。

(参考記事)「FDA再生法2007」成立で医薬品安全性監視はどのように強化されたか? | 薬害オンブズパースン会議 Medwatcher Japan

2 comments

  1. 健康診断で各項目の基準値を超えていると直ぐに薬を処方する現状にかねてより疑問視していました。

    会社員時代は営業職をしていましたが、既存客だけでは月日が経過すると共に取扱高はジリ貧になるので、新規顧客の推進が最も重要なテーマでした。
    医療分野でも経営上の観点からも病院や薬局の売上アップを図るには新規患者が大事になってくる訳で、健康診断で基準値を超えて病院に受診に来る人は絶好の新規患者の見込み客だと思います。

    健康診断の基準値が超えた項目があったとしても異常値でなければ、先ずは規則正しい生活、暴飲暴食や間食は控える、有酸素運動を心がけて薬漬けにならないよう生活改善を図っていきたいと思います。

  2. Mr.Sさん、経営上の観点からのコメントありがとうございました。
    確かに健康診断の基準値を厳しくすれば新規患者は増え病院は繁盛しますね。
    でも、医者・病院・学会等が営利企業みたいに、利益追求で「基準値下げ→新規患者の獲得」をしているとは思えません。しかし、結果的にそうなっていますね。
    どこに問題があるのか?真実は何か?コレステロール治療の闇は深まるばかりです。

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