コレステロール治療は闇だらけ – 1

日本動脈硬化学会の反応

米国ACC/AHAガイドラインを認めたら、今までやってきた日本のコレステロール治療は崩壊します。最も影響が大きい日本動脈硬化学会は、早速、次のような見解を出しました(太線筆者)。

今回のACC/AHA ガイドラインの特徴の一つは、脂質管理目標値を設定しないことである。LDL-Cの管理目標値を決定するに足るエビデンスは現状では十分ではないことに関しては我々も異論はなく、すでに動脈硬化性疾患予防ガイドライン2012年版でも20-30%のLDL-C低下を目標とすることも考慮すると記載されている。しかし日本の実臨床の場では管理目標値があったほうが治療しやすく、多くの実地臨床家がガイドラインを遵守し、またその目安を求めている

(公式見解)ACC/AHAガイドラインに対する日本動脈硬化学会の見解(2014年2月1日)

驚きです。日本動脈硬化学会自ら「LDL-Cの管理目標値を決定するエビデンスはない」ことを認めています。

LDL-Cの上限を140mg/dlに設定して、それを超えたら「高コレステロール血症」として治療の対象にする医学的根拠はなかった。それにもかかわらず、「管理目標値があったほうが治療しやすいのでやっているだけ」である、と。

これを見て、私の日本動脈硬化学会への信頼は一気に崩壊しました。ガイドラインが、その程度の医学的認識で作られていたのかと。

上記の「ACC/AHAガイドラインに対する日本動脈硬化学会の見解」の最後は、次のように結ばれています。

本学会では、動脈硬化性疾患予防ガイドライン2012年版において推奨している診断・治療指針の修正・変更が必要との認識には至らなかった。今後も動脈硬化性疾患予防ガイドライン2012年版が臨床現場の指針となることを期待する。

日本動脈硬化学会はアメリカ発の新ガイドラインを否定していました。

当然ながら、各方面より批判があったようです。日本は明治維新以来、外圧(外国勢力)には弱い歴史を持っていますが、関係医学団体はコレステロール基準と治療については頑なに「何か」を守っているようです。

私は、医学系のガイドラインとは、「長年の研究と臨床で積み上げられた医学的エビデンスに基づき、現場の医療関係者が順守すべき規範や目標などを明文化し、医療行為に具体的な方向性を与えるもの」であると思っていました。

ところが、このコレステロール値の診断と治療については、ガイドラインに医学的エビデンスが存在していませんでした。それにも関わらず、昔から、そして現在でも、日本全国の医療現場で平然とこのガイドラインに従ったコレステロールの診断と治療が行われています。

これは理論物理学を学んだ私には許せないことです。私の正義感は、ムクムクと目覚めます。そこで現状を正しく知ろうと、日本動脈硬化学会が出版した「動脈硬化性疾患予防ガイドライン(2022年版)」を取り寄せて、じっくり読んでみることにしました。

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動脈硬化性疾患予防ガイドライン (2022年版)

そこには、とんでもないことが書かれていました。

彼らが作ったガイドラインには、LDL-Cの管理目標値を決定する明確なエビデンスがないだけではなく、日本人対象の大規模コホート研究がありながら、それを部分的に無視したり、自分の都合のいいようにデータを捏造さえしていました

(続き)第33回・コレステロール治療は闇だらけ – 2
(前回)第31回・コレステロールの嘘

2 comments

  1. 健康診断で各項目の基準値を超えていると直ぐに薬を処方する現状にかねてより疑問視していました。

    会社員時代は営業職をしていましたが、既存客だけでは月日が経過すると共に取扱高はジリ貧になるので、新規顧客の推進が最も重要なテーマでした。
    医療分野でも経営上の観点からも病院や薬局の売上アップを図るには新規患者が大事になってくる訳で、健康診断で基準値を超えて病院に受診に来る人は絶好の新規患者の見込み客だと思います。

    健康診断の基準値が超えた項目があったとしても異常値でなければ、先ずは規則正しい生活、暴飲暴食や間食は控える、有酸素運動を心がけて薬漬けにならないよう生活改善を図っていきたいと思います。

  2. Mr.Sさん、経営上の観点からのコメントありがとうございました。
    確かに健康診断の基準値を厳しくすれば新規患者は増え病院は繁盛しますね。
    でも、医者・病院・学会等が営利企業みたいに、利益追求で「基準値下げ→新規患者の獲得」をしているとは思えません。しかし、結果的にそうなっていますね。
    どこに問題があるのか?真実は何か?コレステロール治療の闇は深まるばかりです。

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